2021年9月30日木曜日

おしあなと富士の初雪

秋の宙旨みとならん不純物
人工の水の不味さよ秋の声
父と子よ膝で石榴が割れるのか?
流れ星虐めを好きな人のをり
白き菊シャネルに今も寄り添わん

一分季語ウンチク 「おしあな」
これは「風」を意味する季語
主に日本、長崎県で使われている
古い呼び方になるそうです。
この「おし」には「反対」とか「押し返す」
というような意味がありまして
もともと「あなじ」という季語があります。
これ、冬の北西の風になるんですけども
それを反対から押し返す風ということで
「おしあな」は南東から吹く風となっています。
海難事故などもおこすような強い風のようです。

一分季語ウンチク 「富士の初雪」
日本一の山、富士山の雪をあつかった
秋の季語になります。
富士山は夏でも雪が降るのですが
では「初雪」ってどういう意味なの?と考えた時に
2つ実はこの季語には解釈があります。
1つは富士の測候所 気象観測所から見上げて
富士の山頂に雪が積もっている
冠雪しているなぁ、というのが1つ目。
そして2つ目はやや流動的な「初雪」です。
その日が富士の中で一番平均気温が高かった日だなぁ
というのを過ぎてから、ああ雪が降りました
暑さを過ぎた、これが富士の初雪ですって思った
それが富士の初雪なのだそうです。
ですが、その後さらにまた暑い日がきたりすると
先日のあれは富士の初雪ではありませんでしたね
そこの暑い日を超えてさらにこの次が
富士の初雪ですと気温によっては条件が
移り変わってゆくものだそうです。
分かりにくいですね。

2021年9月29日水曜日

題「車(タクシーなど)」

百二十歳長き道のり菊日和
北斎の繊細な筆致紅き菊
色褪せず歌い継がれて草の花
終わり支度始めませんか秋声
螻蛄(けら)鳴くやポニーテールに嫁ぐ姫

NHK短歌 題「車(タクシーなど)」
選者 佐伯裕子 司会 小沢敬一 ゲスト 井戸田潤

冒頭の短歌
疲れやすき心は走る246号線ふるさとの街を縦に切りつつ
佐伯裕子

今週のお気に入り
ワイパーを止めれば世界は滝になりただ瀑声を聞く駐車場
和歌山県和歌山市 千代田環
こだわりのカレーとナンを出す店を車に載せて郊外を行く
岐阜県本巣市 イトウカンタ

短歌の基礎
今日のテーマは「擬人化」
(人間以外のものを人間に見立てて表す。)
「木々が揺れる」→「木々がささやく」
「雨が降る」→「空が泣いている」
「ペンを転がす」→「ペンが目を回す」「寝転がるペン」「ペンが逃げる」
「イスが軋む」→「イスが年老う」「イスが嫌がる」など。
(意思を持たせると良い。)

高速路さらに加速し走るべく路面をつかめフロントタイヤ
春日井建

トレーニング
赤とんぼかかしの肩にひと休み夕陽で染まる照れてるほっぺ
小島よしお
(一首の中でありきたりな2つの擬人化は失敗する場合が多い。)

春休み所在なさげに朝礼台が出番はまだかと四月を待ってる
小沢敬一
添削(過剰な表現。ありきたりな表現や多用は避ける。)
春休み所在なさげに錆びついた朝礼台が四月を待ってる

帰り道渋滞続くアクアラインブレーキランプは真っ赤に怒る
井戸田潤
添削(語順)
帰り道アクアラインの渋滞にブレーキランプは真っ赤に怒る

歯ぎしりがうるさい今日のウィンカー仲直りしたい夜のドライブ
小沢一敬
(擬人化が上手くいっている)

夕立を走り抜けてく軽トラはものすごい汗をワイパーが拭く
小沢一敬
添削(語順)
夕立を走り抜けてく軽トラのワイパーが拭くものすごい汗

5秒前震える指でレを押さえギザギザハートをアルトで歌う
井戸田潤
添削(サックスと言わないと勘違いされる。
「の」で繋げることで擬人化が巧くいく。)
5秒前震える指でレを押さえギザギザハートのサックスを吹く

扇風機前で伸びする我が子猫夏に疲れたあの日の父だ
小沢一敬
添削(「あの日の父」は比喩で擬人化ではない。
扇風機があるので夏は不要。)
扇風機の前で伸びする我が子猫疲れたなあとあの日の父だ

巧く使えば擬人化は温かみや滑稽さがでる。

2021年9月28日火曜日

兼題「瓢(ふくべ・ひさご・瓢箪)」

秋の夜エースを持ったいかさまし
秋の声老いてなお花となる
自分のことができない人と空高し
秋彼岸誰を護らん星となり
秋半ば余分なものは取り除き

NHK俳句 兼題「瓢」
選者は櫂未知子 司会は塚地武雅 

瓢(ふくべ・ひさご・瓢箪)
青い瓢箪のこと。成熟した実の中身を腐らせて
中を空にして酒などを入れる器にする。)

宿題のお気に入り
鮮やかな服仕舞ひたり冬隣   塚地武雅
実石榴やとぼとぼ向かふ習ひごと   伊藤まい子
夜食とるそこはかとなき同志感   田中要次
奥祖谷は人より案山子多きけり   田中要次

今週のお気に入り
何か棲む瓢の中に小さきこゑ   板井すみ江
瓢箪のするりと風をかはしをり   南タミ子
青瓢神の遊びのかたちして   寺川育世

俳句、二歩目へ
めでたい季語、めでたくない季語
瓢は昔から子孫繁栄、末広がりと
人から言われめでたい季語とされてきた。
対照的な季語の紹介…。
うすき闇あれば必ず曼殊沙華   櫂未知子
曼殊沙華という季語は彼岸に咲くので彼岸花、死人花、
幽霊花、捨て子花など縁起の悪い呼び名がついています。
季語は満遍なく使った方が俳句に奥行きが出る。

俳句ドリル
□ □や 秋の暮
古本を捲(めく)る匂ひや秋の暮   櫻井紗季
(本と秋の関係が近い)

前脚のぐらつく椅子や秋の暮   塚地武雅
添削(椅子に脚はないと、櫂未知子先生。
脚はあります。専門用語でもありません。) 
脚少しぐらつく椅子や秋の暮

裏木戸にそぼ降る雨や秋の暮   いとうまい子
(裏木戸と秋の暮では寂し過ぎる。)

助手席に母の遺影や秋の暮   田中要次◎
添削(動詞が全くないのが良い。)

兄よりも先行く吾子や秋の暮   マネージャー
添削(作者の兄と吾子では?櫂未知子先生の誤読では?)
兄よりも弟先や秋の暮

2021年9月27日月曜日

俳句甲子園二〇二一

山粧ふや静けさの独り占め
なにげない幸せ持ちて秋の朝
見捨てられる無名の人々秋気
星月夜真実こそが美しい
覗き穴から見た世界秋旱

それでも詠む、青春の17音
俳句甲子園二〇二一 より

冒頭句
後朝(きぬぎぬ)のごとく空蝉剥がしをり 
信楽や一縷の春満月を練る

予選の兼題 片陰(かたかげ) 清水 空蝉(うつせみ) 茄子
松山東高等学校
清水いま古城の堀に流れ着く   山根大知
丸那須(なすび)句点の抜けたやうな日々   山根大知
特選句
清水いま清水を接ぎて久遠なる   野村隆志
後朝(きぬぎぬ)のごとく空蝉剥がしをり   野村隆志
夕清水いつかの雨とすれ違ふ   山根大知

長野清泉女学院高等学校
なんとなく泣きたい夜や麦茶煮る   小林蓮(れん)
好きだよと言えず飲み込む清水かな   大日向愛良
彗星の落ちて地上の茄子の花   大日向愛良
空蝉の蝉になる夢持っており   小林蓮

これだけ詠った松山東高等学校、
長野清泉高等学校は決勝には残れませんでした…。
レベル高し!

海城高等学校
太陽に近き嘴(くちばし)蚯蚓を垂れ   田村龍太郎(最優秀賞受賞)

決勝に進出したのは海城高等学校、開成高等学校A、
開成高等学校B、洛南高等学校 でした。

準決勝、決勝の兼題は菊、夜食、鰯雲

大菊や語る言葉も惜しければ   田村龍太郎
鰯雲一匹忘れられてゆく   田村龍太郎
艶めくや籬(まがき)の菊に雨しきり   田村龍太郎

洛南高等学校
土曜日は父の手づくりなる夜食   伊藤栞奈

開成高等学校
空蝉に傷一閃やアンタレス   垂水文弥
この街は汽水の匂ひ夜食とる
いわしぐもかかねば紙は光なり
徹底的に片陰をゆく女優
星空を歩いて茄子の無尽蔵

決勝は洛南高等学校と開成高等学校B
兼題は夜食
数本の花の明るき夜食かな   開成高等学校B
段ボール卓傾いてゐる夜食   洛南高等学校

優勝は開成高等学校B
2位は洛南高等学校
3位は開成高等学校Aとなりました。

個人的にディペートは超苦手なので
決勝・準決勝はやはり辟易しました。
俳句甲子園は主催者が
ディペートを競わせているのですね。
建設的な討論にするため、
提案形式にしてはいかがでしょうか?
例えば季語がおかしいと思えば
自分ならこの季語にするといった提案です。
悪い点を指摘するだけではなく、改案を示すべきでは…?
野党の国会議員を彷彿としてしまいました。
あのような人間を育てたいのでしょうか?

2021年9月26日日曜日

凡人ワードを使って凡人パーツへ

秋晴る川の流れに寝転がり
砂浜に立ったサウナや秋の晴
岩本寺サウナの外を秋の風
白秋やありふれた日常を生く
犬の背や秋夕映えに浮かびたる

夏井いつき俳句チャンネル より
【大人あるある】シリーズ
みなさんの「無人駅」の句を紹介します。

無人駅、秘密基地、観覧車、水琴窟は凡人パーツ

五音の季語+中七+無人駅 募集!
大人の凡人あるある「無人駅」編発表会
「ダム湖に沈む」も凡人パーツ
凡人の落とし穴とか沼をどうやってよけていくか?
「孫」「廃屋」「墓前や仏前に何かを備える」も危険。
一句の中の凡人ワードが悪いのではなく
凡人になりがちの凡人ワードを使って
凡人パーツを作ってしまう!
こうなったら手の施しにくいものになる。
凡人パーツにしないように
凡人ワードを活かさなくてはならない。

2021年9月25日土曜日

秋の夕日で一句

葡萄狩り谷より移住する獣(きつね)
過疎の町へと獣の移住秋麗
身に入むやコロナ長期化支援拡充
秋霖や時の流れは氾濫へ
澄む秋や緑の陽射しと水の音

プレバト纏め 2021年9月23日
秋の夕日で一句

永世名人東国原のお手本
東国原英夫
ラフレシアも秋夕焼も人を食うか
(ラフレシアとは世界最大の花で死肉に似た色彩や質感、
汲み取り便所の臭いに喩えられる腐臭を発する花。)

特待生昇格試験
千原ジュニア
公園の漫才師黙(もだ)秋夕焼
添削(語順が違う)
漫才師の黙公園の秋夕焼

河合郁人
初MCのエゴサ車窓は秋夕焼
添削(「MC」は、マスター・オブ・セレモニーの略称。
   「エゴサ」は、エゴサーチ(egosearching)の略。
   自分の名前などをインターネットで
   検索してその評価などを確認すること。)
初MC終えて車窓は秋夕焼
エゴサーチやさし車窓は秋夕焼
エゴサーチ苦し車窓は秋夕焼

1位 堀未央奈
独立の夜やゴッホの星月夜

2位 武尊(たけたける)
切れかけのグローブ眺めし秋夕焼
添削(過去にを現在にする。季語の充足感、悲壮感も受け止めてくれる。)
切れかけのグローブ眺む秋夕焼

3位 浅野ゆう子
選局はルーティン今日は土瓶蒸し
添削
選局はニュース今宵は土瓶蒸し

4位 水川かたまり
109夕日にうつされ0になり
添削
秋夕日に熔けゆく渋谷109

来週は3時間スペシャル 秋のタイトル戦金秋戦
バッテリー切れ間近で一句

2021年9月24日金曜日

ホーランドとジイドの言葉

秋の声吾の物差しの不確かさ
欲張らず水のごと生く秋麗
身の丈に合った人生風爽か(さやか)
秋雲へ向かいてがなる烏かな
秋渇き訳あり果実たらふくに

J.G.ホーランド 曰く
「『自分こそ正しい』という考えが、
 あらゆる進歩の過程で最も頑強な障害となる。
 これほどばかげていて根拠のない考えはない。」

ジイド 曰く
「幸福になる秘訣は、快楽を得ようと
 ひたすらに努力することではなく
 努力そのもののうちに
 快楽を見出すことである。」

2021年9月23日木曜日

中村健也と阿川佐和子の言葉

殊の外不運の小鳥ずぶぬれに
土砂崩れ浸水に遭う秋彼岸
参道に雨水溢れ秋遍路
一つ家仏壇二つ秋彼岸
まめやかに生きてきました雨月かな

中村健也 曰く
「開発は先の見えない夜行列車。
 度胸を持って走り続けなさい。」

阿川佐和子女史 曰く
「例えば、官僚や政治家を
 批判するのは簡単です。
 でも、いざ会ってみると
 みんなすごい。
 世論にコテンパンにされている
 あの人やあの人にも、
 人を惚れさせるオーラがある。」

2021年9月22日水曜日

令和相聞歌と静夜思

真夜中の月わたしへのおもてなし?
仏掌薯(つくねいも)箸を舐めてもまた明日
秋高し金なき世界相互互助
銀色の波打つ芒悠然と
青き空穂波かきわけ田に立ちて

■日曜美術館 アートシーン より
静夜思 とは
李白が月の光を詠んだ詩からつけられたそうです。

牀前(しょうぜん)月光を看る
疑ふらくは是れ
地上の霜かも
頭を挙げ山月を望み
頭を垂れて故郷を思ふ

■夏井いつき俳句チャンネル
【投句案内】令和相聞歌のご案内
テーマは「恋」

たとえば愛は白桃におく指の痕   夏井いつき
黄落やなぜわたしではないのです   夏井いつき

応募の規則は80文字以内の短文作品!
俳句、短歌、詩でも良い。

第2回最優秀賞
始まりは初雪の日の滑り台   GONZA

令和相聞歌
締め切り 11月11日
自作の未発表の作品で一人3作まで

第2回優秀賞
友達にもどる春夜の
口紅をこんなきれいに
ぬってしまって   夜行

毒りんごのような君の指に
触れじわじわ恋を
腐らせていく   鈴屋

令和相聞歌 https://www.reiwasoumonka.com/

第1回最優秀賞
君の名を 試し書きした 文具店   ピコタン
第12回最優秀賞
しゅわしゅわと 弾けるラムネ 盗み見る ビー玉ごしの 澄んだ横顔
そらたま
第11回最優秀賞
片恋のピアス海色春疾風   クラウド坂上
第10回最優秀賞
地下鉄の 出口で恋と ぶつかった   石関恵子

2021年9月21日火曜日

題「友」

締めきって秋陽遠ざけ灯をともし
秋冷やケアの甲斐なく日々シミが
白秋やシミが増殖手に腕に
高野山月を楽しむための家
薬王寺湯へ身を沈め秋遍路 

NHK短歌 題「友」
選者 大森静佳 ゲスト 佐藤文香
冒頭句
友のノートにマグダラのマリア〈M・M〉と略され夜はしずもりてゆく
大森静佳
木犀やくづれてぜんぶ君の本   佐藤文香

全身できみを抱き寄せ夜だったきみが木ならばわたしだって木だ
大森静佳
俳句化
抱きて夜の君は新樹かならば我も   佐藤文香

お気に入りの短歌
百杯は飲みたいと笑う友は明日画数多い名字に戻る
千葉県いすみ市 上野博子

君の住む海辺の町の地図見れば自転車を漕ぐ影の走れる
東京都あきる野市 みよ

ごめんねを言わず言われず赦しあうニホンオオカミだったね僕ら
神奈川県相模原市 髙田祥聖
狼の俳句を佐藤文香さんが紹介
絶滅のかの狼を連れ歩く   三橋敏雄

釣り友は一足先に還りたり撒き餌のような中のあの星
長崎県時津町 馬場実

今読みたい愛の歌
悪友がくれたオレンジ色のガム一生分噛みホームで捨てる
榊原紘

大森静佳のポイントで改作!
テーマ 気持ちを言わずに表現しよう

元歌
動物園につきあひくるる友のある幸せ思ふ秋の一日

改作ポイント①幸せを「気持ちよさ」で描こう
動物園につきあひくるる友のゐて秋の一日を光があらふ

改作ポイント②幸せな気分で見た情景を持ち描こう
この友が我にあること柵越しのボス陽だまりへのそりと移動
有森也実
この友が我にあること柵越しのラマの鼻息かかる秋の日
佐藤文香
この友がわれにあること柵越しのキリンの瞼あかるき秋を
大森静佳

俳句化
秋風やラマを一緒に見てくれて   佐藤文香

元歌を俳句化
友連れて動物園や初紅葉   佐藤文香

大森静佳先生の今日のメッセージ
気持を言わずに表現するには情景をスクリーンにしよう

この試みは最高でした!
また、違う選者でもやって欲しいと思いました。
NHKさま!ご検討宜しくお願い致します。

2021年9月20日月曜日

兼題「秋」と「名月」

カシオペア個でできぬこと屯(たむろ)して
テレワーク家族を密に小鳥来る
リーダーの腕に挟まれ秋の薔薇
おしあなが吹きて自粛の体をなす
白秋や機微の通じぬ夫(つま)となり

NHK俳句 兼題「秋」
選者 岸本尚毅 ゲスト 春風亭昇吉 司会 中田喜子

冒頭句
音もなく歩くお方や城の秋   岸本尚毅

目黒の秋刀魚の落語の説明を聞いて…。
岸本尚毅先生がご紹介くださった句!
まひるまの秋刀魚の長く焼かれあり   波多野爽波

今週のお気に入り
粛々と記憶の消ゆる老の秋 茨城県 中原如伽
空映す暗き廊下や秋の寺 栃木県高根沢町 大塚好雄
九十の身を白帝に委ねけり 千葉県成田市 神郡一成
波止の秋もつれしチェーン錆ぶるまま 兵庫県加古川市 渡辺しま子

岸本教官の俳句道場
母の香も譲りうけたる秋袷   中田喜子
添削
母の香や譲りうけたる秋袷

チアガール翔べ秋天を高く抱き   春風亭昇吉
添削
高く翔んで秋天を抱けチアガール

手拍子の施設の母や窓の秋   投稿句
手拍子す施設の母の窓に秋   春風亭昇吉の添削
添削
手拍子の母を施設に窓の秋

今回の岸本直樹先生の添削はおかしい…。
作者に全く寄り添っていない気がしました。
春風亭昇吉さんの添削の方がよっぽど良いと思いました。
今回選ばれていた句は類想類句が多かったのでは?残念です。

春風亭昇吉さんは多作多捨だそうです。
俳句は多読多億が上達の道と岸本直樹先生。
作句は人生のアルバムになっていると昇吉さん。
大ファンです。益々楽しませてくださいね。

◆一分季語ウンチク 名月
「月」は三秋の間使えますが「名月」は
仲秋だけに使われる季語として
歳時記に収録されています。
陰暦8月15日の月を指しています。
名月の「名」は1年で一番美しい月を
愛でる心と言うのがこの季語の肝となってきます。
わざわざ使うのでしたら賛美の心が
入った一句を作りたいものです。

2021年9月19日日曜日

助動詞「けり」

台風の直撃受ける午前二時
許せないこともあるのよ秋湿り
人を傷つけあっけらかんと秋の虹
昨夜(よべ)の雨心の中の水たまり
仲秋やルールは破る為のもの?

◆夏井いつき俳句チャンネル より
九月の子規 助動詞「けり」
過去の助動詞が切れ字になった歴史!
「けり」は「三大切れ字」と言われているものとして
「や」「かな」「けり」と言われています。

大仏に二百十日もなかりけり   正岡子規
二百十日とは立春(2月4日頃)から数えて
210日目の日で毎年9月1日頃にあたり厄日ともいう。
台風の特異日でもある。
農家にとっては警戒すべき厄日である。
「けり」の元々の意味は前からずっと
そこにあったのだけれど、ある日
自分がふと気づくというニュアンスである。
元々は過去の助動詞でした。
詠嘆として使われ出して
切れ字の働きをするようになった。
共感して貰いたいと言う気持ちが込められている。

秋の蝶動物園をたどりけり   正岡子規

淋しさの三羽減りけり鴫(しぎ)の秋   正岡子規

▪子規の弟子の長塚節(たかし)から
「鴫三羽小包ニテ」
百舌(もず)も鳴き出し候 
椋どりもわたり申候
蕎麦の花もそろそろ咲入れ候 
田の出来は申し分なく
秋蚕も珍しき当たりに候

▪そのお返しの子規の言葉
田舎の趣見ルガ如シ
一寸往テ見タイ。

松に身をすつて鳴けり雨の鹿   正岡子規
(完了の助動詞「り」が接続した形。
「なきけりと」読まそうとしている。)

2021年9月18日土曜日

金秋戦予選

しきたえの枕の涙長夜かな
潤んだ目挙動不審の赤蜻蛉
鶏頭や子規の句真似て数数え
観音寺道間違えた秋遍路
(2021年)競技会相次ぐ中止秋さびし

プレバト纏め 2021年9月16日
秋のタイトル戦「金秋戦」予選
Cブロック 読書の秋で一句

1位 北山宏光
秋声や台詞をなぞる蛍光ペン

2位 ミッツ・マングローブ
爽籟(そうらい)を追う老眼鏡の上目
添削(爽籟【秋の季語】秋風の爽やかに吹く響きのこと
  「籟」は笛と言う意味。)
老眼鏡上目遣いに追う爽籟

3位 松岡充
流星や馴染みの書肆(しょし)も‟閉店す„
添削(もが散文的。‟„は要らない。
書物を出版したり、また、売ったりする店。)
馴染みなる書肆の閉店星流る

4位 千賀健永
白鯨の引き波はこの台風や
添削(小説(ハーマン・メルヴィルの『白鯨』)の
悪魔の意思を持つ巨大白鯨を詠いたかったようです。)
台風のこの引き波は白鯨か

5位 馬場典子
虚栗書架の威を借るウェブ会議
添削(「虚栗」みなしくりとは中身のない栗。
   小林一茶の門下生が作った俳階集の名称でもある。)
書架を背に虚栗めくWEB会議

決勝進出は森口瑤子さんと立川志らくさんに決定!
ミッツ・マングローブさんの句は
連想類句が多いからという理由で落とされました。

Aブロック
座り込むアンカーの目に秋夕焼   森口瑤子
Bブロック
《首吊りの家》には林檎は無いのか   立川志らく
Cブロック
爽籟を追う老眼鏡の上目   ミッツ・マングローブ

来週はいよいよ「金秋戦」決勝です。
題は「バッテリー切れ間近」。

2021年9月17日金曜日

千住博と紅白俳句合戦

盆の家座り続ける無垢の人
秋気澄む好みの茶碗の二服点て
丸石をごろり転がせ秋高し
秋ともし他人を不快にさせる人
期せずして運の極みよ白秋よ

■夏井いつき俳句チャンネル
【紅白俳句合戦】皆さんの投票で決まります!

紅 あやまって林檎落としぬ海の上   正岡子規
白 川を見るバナナの皮は手より落ち   高浜虚子

コメント欄に理由を記し投票!
https://www.youtube.com/watch?v=MrOY7UlI6Ak

私は白!

■新美の巨人たち より

千住博 曰く
「画面に向かった時にはもう勝負がついていて
 日頃の生き方、日頃の見識、日頃の態度の固め方、
 日頃の腹の括り方というのか全部絵に出ている。
 絵を描くプロセス自体が僕の人生の縮図。」

2021年9月16日木曜日

題「負ける」

淡々と仕事は暮らし秋を生く
盆の家居の真ん中に横座据え
朝焼けに向かいて鳴かん秋の鳥
秋の空振り子時計の鳴り響く
作者など価値に非ず秋麗

NHK短歌 題「負ける」
冒頭句
止まらない鼻血と涙、震える手、リングライトに照らされている
佐佐木頼綱
選者 佐佐木頼綱 ゲスト 大林素子

今週のお気に入り
負け知らずだった僕らの夏空を切り裂くように飛ぶホームラン
木村民人
出ることが勝つことだったベンチにて二つの負けを受け止めた夏
堂本明代
負けるのが怖くてサーブが打てなくてあの日あなたを失っていた
だいだい
負けた子の目から我らは落ちてゆく汚れた袖に吸い込まれてゆく
友常甘酢

スポーツの日常
次こそと覚悟を決める暗闇に異国の歌だけ鳴る表彰台
河井純一

頼綱さんの!短歌かかって来なさい!
膝の傷コートに軋ませ国ひとつ背負いゆく見よモトコスペシャル
佐佐木頼綱
「ボールはね落としたら死ぬ」ニッポンのエース色無きコートを背に
星野真里&カン・ハンナ

2021年9月15日水曜日

兼題「石榴」

(2021年秋)投票率6割で株価上昇(無季句)
台風は制御ができるものとなる
用の美へ足踏みいれし葉月かな
普段使いの河井邸(旧河井寛次郎邸)へ秋風
午前五時耳を澄ませて秋の虫

NHK俳句 兼題「石榴(ざくろ)」
冒頭句
つきしろに聞え今のがこゑなのか   鴇田智哉
選者 鴇田智哉 ゲスト 毛利衛

この番組が放送された9月12日は毛利衛氏が
始めて宇宙に行った日だったそうです。

「句のひとみ」になって読む 宇宙に行った「句のひとみ」
火星の画像を見て
目や灼けて惑星の名をそらんじる   鴇田智哉

今週のお気に入り
太陽の寿命石榴の割れ具合   ハードエッジ
実石榴や心はやはり胸のこと   北入はるか
魅入られて石榴は紅くなりにけり   野添まゆ子

鴇田智哉氏の俳句は難し過ぎて理解できなかったのですが
やっと、先週あたりから好きになりはじめたら 今回が最終回でした…。
無念でなりません…。

2021年9月14日火曜日

兼題「栗」

吊り床やひらめき降りて小鳥来る
玄鳥帰るデフォルトモード進行中
黍嵐(きびあらし)拘り持ちて諦めず
南京やカメムシ被害多発せり
信頼と努力結実稲穂かな

ギュッと!四国 夏井いつきの俳句道場
兼題「栗」
さまざまな傍題があるのが季語「栗」の特徴。
毬(いが)に入っている状態の「毬栗(いがぐり)」、
中身がからっぽの「虚栗(みなしぐり)」
熟して毬が開いている栗を意味する「笑栗(えみぐり)」、
産地の名を冠した「丹波栗」「中山栗」など。
さらに地理情報を含む「栗山」「栗林」、
調理して「焼栗」「茹栗」「栗飯」、
菓子として「栗羊羹(くりようかん)」
「栗饅頭(くりまんじゅう)」「栗鹿の子」
「栗きんとん」「マロングラッセ」など、
産地から加工されたものまで幅広い季語をもつ。

▼選句ポイント
季語「栗」が動かない
俳句の世界では「季語が動く」という評言がある。
他の季語に替えても一句が成立してしまう時に使う言葉だ。
特に「栗」のような季語は、
「梨」でも「柿」でもいいじゃないかという具合になりがち。
今回は、季語「栗」でなければ成立しない句を選んだ。

ギュッと!特選
原始よりをんなは栗を拾ひけり   伊奈川富真乃

秀作
栗むくやナイフの跡は多角形   じょいふるとしちゃん
摑(つか)み取る栗一キロの手の形   友健
柴栗の弾(はじ)ける墓や父母の墓   こぼれ花
毬(いが)栗や昨日幹太は父になり   南側
栗の毬触らぬように触れる嘘   あたなごっち
縄文は熾火(おきび)の栗の爆(は)ぜ合(お)うて   亀山酔田
栗の皮剥指先に黒き香(かざ)   水晶文旦
栗茹でる悲しきことのありし宵   西村小市
怠惰なる兄悶々と栗を剥く   染井つぐみ
栗落ちて昔話の終りけり   聞岳
結願の寺へ道々ひろう栗   夏草はむ

佳作
栗という大きな種を茹(ゆ)でて食う   れんげ畑
お仏飯(ぶっぱん)の栗小さめに切ったよ   織部なつめ

解説
似たような発想を「類想」、似たような句を「類句」という。
俳句でよく使ってしまいがちな「~の味」
「思い出」「想う」は、要注意の「凡人ワード」。
「凡人ワード」に頼ると、類想類句の句になりやすい。

NHK松山放送局さま 今回も纏めてくださり感謝!感謝です!
ありがとうございました。
https://www.nhk.or.jp/matsuyama-blog/gyutto/haiku/

2021年9月13日月曜日

音便シリーズ イ音便

秋の月老いたあなたを見たかった
穴惑ひ厚労省かミズホかな
秋霖や畑の蕾落しけり
澄む秋やグリア細胞起きんかい
天高し処方すべきかDセリン

夏井いつきの俳句チャンネル
【音便シリーズ】難しくない!イ音便について学びましょう
音便というのは動詞、形容詞、形容動詞の音が
他の言葉と合わさると変化すること。
困るのは動詞の音便。今回はこの音便について解説。
音便は4種類ある。

蟇(ひき)ないて唐招提寺春いづこ   水原秋桜子
    上が音便 特に「い」
鳴くと言う動詞が変化している。
基本の形  鳴く
語幹 単語のうち活用しない部分 「鳴く」の「な」が語幹にあたる
未然 未然形は「ず」口語だと「ない」鳴かない 鳴かず 「か」
連用 「たり」とか「て」鳴きたり 鳴きて 「き」
終止 。「く」
連帯 「こと」とか「とき」にくっつく。鳴くこと 鳴くとき 「く」
巳然 「ども」「ば」鳴けども 鳴けば 「け」
命令 ! 鳴け!「け」

かきくくけけ 文語で言うと四段活用

「て」が連用形に入っている。
「なきて」これが活用表通りの音になる。
言いやすいように言い換えている。
これがイ音便。カ行キ ガ行ギ⇨イ
イ音便はカ行の活用の中の「キ」の音が「イ」になる。
これがイ音便。

「書く」は「書いて」になる。
「研ぐ」は「研いで」となる。
イ音便によっては下の濁り 濁音がくることもある。

2021年9月12日日曜日

金秋戦予選

海亀も自粛でしょうか?すでに秋
センセイがさんと呼ばれて吾亦紅
レプチンが働いたのね馬肥ゆる
17%の体脂肪つく菊日和
歳重ね増える青あざ散る柳

プレバト纏め 2021年9月9日
秋の俳句タイトル戦「金秋戦」予選
Aブロック スポーツの秋で一句
1位 中田喜子
しぶき上げ復活の秋ひとりじめ

2位 森口瑤子
座り込むアンカーの目に秋夕焼
添削 座り込むアンカー秋夕焼くずる
添削 くずおれるアンカー秋夕焼赫(あか)し

3位 岩永徹也
軸足のギプスの寄せ書き山笑ふ
添削 軸足のギプスに金秋の寄せ書き

4位 春風亭昇吉
負けても勝っても母秋刀魚焼く
添削 試合如何に子の好物の秋刀魚焼く

5位 パックン
天高しアーチ描くホットドック
添削 天高し売り子の放るホットドック

Bブロック 食欲の秋で一句
1位 藤本敏史
魚群探知機朝寒のがなり声

2位 立川志らく
《首つりの家》には林檎は無いのか
(素晴らしい一行詩。
 セザンヌを知っていても知らなくても作品として成功している。)

3位 三遊亭円楽
病院の脂の抜けた蒸し秋刀魚
添削 病院や脂の抜けた蒸し秋刀魚

4位 筒井真理子
中心に記憶の螺旋黒葡萄
添削 黒葡萄に種吾に記憶の螺旋

5位 向井慧
秋刀魚の目勧める母の目に力
添削 秋刀魚の目勧める母の目の静か

期待していた人たちが不発に終わりがっかり…。
今回は立川志らくさんの句に魅了されました。

2021年9月11日土曜日

兼題「秋彼岸」

錦鶏菊(きんけいぎく)よ自生地を見つけたり
海陽町の錦鶏菊よ脈々と
錦鶏菊こっそり子孫育まん
錦鶏菊仲間と競い陽に向かい
風と呼応錦鶏菊のダンスかな

NHK俳句 兼題「秋彼岸」
選者 片山由美子 ゲスト 齋藤孝 司会 武井壮

冒頭句
飛ぶ鳥の影くつきりと秋彼岸   片山由美子

齋藤孝さんの思い出の俳句
秋刀魚焼く匂の底へ日は落ちぬ   加藤楸邨

見直し俳句の常識
切れのない句
昼寝するつもりがケーキ焼くことに   稲畑汀子

この切れのない句〇or×
×一本のたうもろこしを分け合いひて
(緩急がない 一本のたうもろこしを分け合ひぬ)

〇ひと雨のあとの残暑のことのほか   
(片山由美子さんの句、残暑の不快感を「ことのほか」で表現。)

×新涼の床をかがやくまで磨き
(新涼や床をかがやくまで磨き)

新涼図書館の灯は影生まず   片山由美子

良い句そうでない句の見分け方は…。
体に定型五七五が染みついてなくてはいけない。
すると瞬時に考えなくても判断ができる。

今回のお気に入り
蕎麦すすり波郷の墓へ秋彼岸   七木田清助
(石田波郷の墓は調布市の蕎麦で有名な深大寺にあるので…。)
人影の濃くなりにけり秋彼岸   松久茂嘉
潮先のぐんと寄せくる秋彼岸   清水道彌
妻に問ふ亡母の好み秋彼岸   岡田安弘

切れのない俳句に挑戦
×汁も実も香も色すらも甘き桃   武井壮
(切れていない。桃を最後にしない方がよい。)

2021年9月10日金曜日

廃校に立ちて二宮秋高し
おうちカフェ腕あがりけり秋の香
秋霖や小さき裏庭滝と化す
秋雨やみ虹色の街浮き上がる
(パラリンピック競泳)暗闇をタッパー頼りに泳ぐ秋

一分季語ウンチク 「月」

雪月花という日本の三大美とも称されますが
そのうちの一つ「月」
俳句でただ「月」といった場合は
秋の季語になります。
「春の月」「夏の月」「冬の月」と
他の季節にも「月」はあるのですが
最も月が美しいのは秋であるということで
秋の季語のなっています。
この「月」は大変様々な傍題
他の題も含んでいる季節でして
「月」の項だけで月本題に加えて
更に56もの傍題が収録されています。
更にそれとは別の項として「名月」など
様々な月の季語は存在しています。

2021年9月9日木曜日

シルバー川柳

飛蝗(ばった)との一期一会よ奇跡なり
赤蜻蛉目を潤ませて直視され
羽ばたけど深山茜や羽ばたけず
負の連鎖報復続く盆の月
大量のごみが漂着夕月夜

第21回シルバー川柳の入選作発表
https://user.yurokyo.or.jp/news_detail.php?c=&sc=&id=319

「『密です』と言われてみたい頭頂部」(62歳)
「薄味にしたらコロナとわめく祖父」(56歳)
「食卓に俺の席だけアクリル板」(66歳)
「全集中しても開かない瓶の蓋」(66歳)
「リード持ち散歩に出たが犬忘れ」(69歳)
「目の検査「丸」と答えるお爺ちゃん」(44歳)
「じいちゃんが暗証番号暗唱し」(74歳)
「名を呼ばれ誰も立たなきゃたぶんオレ」(58歳)
「YouTube履歴は演歌と百恵ちゃん」(19歳)
「さり気なく背後に賞状オンライン」(54歳)
「午後八時酒提供を止める妻」(58歳)
「お互いに返事はするが動かない」(60歳)
「お見舞いにぞろぞろきたらそろそろか」(52歳)
「どなたですそういうあなたはどなたです」(59歳)
「伸びすれば足が攣る攣る寝起き前」(66歳)
「ワクチンのネット予約でひ孫借り」(81歳)
「BTSテレビ局だと思ってた」(40歳)
「ペイペイで払うと後ろ行列に」(65歳)
「へそくりは一度仕舞うと出てこない」(58歳)
「おはようのラインがくるのは朝の五時」(17歳)

面白過ぎ!久し振りに大笑いさせて貰いました。
私もこんな五七五が詠みたい…。
まだまだ修業を積まなくては…。

2021年9月8日水曜日

孔子とゴッホと風生の言葉

亡き人の歌声響く運動会
秋の虹持たぬ怨嗟がコンプレックス
秋麗唯一無二の人であれ
桃吹くやユーノー?ライト?と黒き人
秋の夜最期の一曲ハンニバル

孔子 曰く
「過ちては則ち
 改むるに憚ることなかれ。」

フィンセント・ファン・ゴッホ  曰く
「確信があるように振る舞え。
 そうすれば本物の確信が生まれてくる。」

夏井いつき俳句チャンネル
【人生相談】3年ぐらいの浪人なら、人生の取り返しはつきますか?

とうすみはとぶよりとまること多き   富安風生
(「とうすみ」とは糸蜻蛉のこと 夏の季語)
人それぞれ自分の心身にとってちょうどいい動き方とか
ちょうどいい止まり方とか絶対にあるんです。
肯定的に自分を見ているけれど、社会の通念として違うのかな?
等と、小さな不安を抱えている。それだけのことだと思います。
自分をとうすみトンボ「糸蜻蛉なんだ俺は」と
ギンヤンマでもオニヤンマでもないんだ。
糸蜻蛉である自分を肯定し心慰めて頑張ってください。
今日から君はとうすみトンボ、糸蜻蛉です。

2021年9月7日火曜日

河井寛次郎の言葉

虫集(すだ)く昼から庭でライブかな
月上る(のぼる)灯り背に受け硯箱
とぼとぼときつい陽射しの秋遍路
秋遍路鈍い歩みや踏みしめて
同行二人タオルを首に秋の空

大野裕 曰く
「不安はこころの警戒警報。
 不安を感じたときは
 心が何か危険を感知している。
 心の動きを素直に感じ取って
 一歩一歩、丁寧に
 進んでいってみてください。」

クリスティーヌ・ルウイッキー 曰く
「被害者意識を持つと
 問題を解決する手段が見えなくなります。」

新美の巨人たち 旧河井寛次郎邸 より

暮しが仕事 仕事が暮し
切ってはいけないものを
切ったので出た血
人は今此の血を出して居る
然しこれは自分達が
切らなくてもよいのに
切ったので出た
といふ事がわかると
此の出血はとまる

美しい仕事は美し仕事と共にあります
身の丈に合った道具をこしらえ
身の丈に合った家具を設えた人です
「旧河井寛次郎邸」稀代の陶工の家には
今も用の美が静かに暮らしています。

2021年9月6日月曜日

題「道」

秋の月隣の屋根の向こう側
唐辛子辛みを好む虫のをり
県境の秋乳神さんとして生くる
(2021年)秋の夜灯りの消えた飲み屋街
諦めと日々闘わん秋暑し

NHK短歌 題「道」
選者 田村元 ゲスト 川村エミコ 司会 星野真里

冒頭の短歌
うつむきて市道を行けばあめ、をすい、あめ、あめ、をすい地に蓋をして 
田村元

今週のお気に入り
みぎひだり横断歩道を渡る時小学生の尾っぽはゆれる
神奈川県鎌倉市 吉川美月
道端に交通違反の猫を止めボディチェックをする人がおり
和歌山県和歌山市 増田匡裕
十キロを歩いて帰ると子は言いき中三の夏の試合を終えて
香川県高松市 二宮史佳

熱血!短歌ノック!
しきたえの枕に埋もれゆく部屋で蜘蛛は蜘蛛のみ知る道をゆく 
星野真里
添削
しきたえの枕に埋もれゆく夜に蜘蛛は蜘蛛のみ知る道をゆく 

帰り道が新しくなる本日の特売ネギを片手に提げて 
カン・ハンナ
添削
帰り道が新しくなるまっしろな特売ネギを片手に提げて 

川村エミコさんの出した題「こけし」
私には右も左もありすぎて七十体のこけしと暮らす 
星野真里
添削
私にはあれやこれやがありすぎて七十体のこけしと暮らす 

恋なんかなかったように生きようと右も左も向かないこけし 
カン・ハンナ

選者のおはなし 
歌人、この一軒
ジェノヴァ潮の香のただよへる裏町に啜る火の香のエスプレッソ 
塚本邦雄

短歌 あなたならどうする?
ゆっくりとエスプレッソを飲み干して□□

ゆっくりとエスプレッソを飲み干してまだまだ苦い人生を生きる
カン・ハンナ

ゆっくりとエスプレッソを飲み干して口元ゆるみイタリアの中
川村エミコ

ゆっくりとエスプレッソを飲み干して我の甘みを中和していく
星野真里

ゆっくりとエスプレッソを飲み干してカップの底の砂糖を掬ふ
塚本邦雄

2021年9月5日日曜日

おしゃべり俳句第4回

熱中症か腎臓病か秋の声
神山のスダチ収穫アラブ人
電線に停まりきれない渡り鳥
色鳥の相談事の纏まらず
リーダーを見失うなと渡り鳥

おしゃべり俳句第4回 可愛い俳句にメロメロ

赤ちゃんに戻る時使う夏衣   カヅラ梅
まゆと呼ぶ「ちゃん」はそつぎょう兄貴顔   8の月
行く春やパパ汁できた捨てとくね   ノアノア
今日は魔法記念日?五月三日   齋藤淑子
たんぽぽは吹くのがおすすめ   ベーグルさんのいとこの子どもゆいと(4さい)
遊びたいんじゃないの気になるの   ykさんの知り合いのお子さん8歳
南風「俺が名前をつけていい?」   さやもちさん12歳の長男の言葉
しーなまだ蛹(さなぎ)なんです春の朝   井原ちまた大輔さんの娘しずく8歳

特選3句 夏井いつき選
うんちのねお歌うたうの春の園   とほたかお近所の公園のトイレの男の子
いい人だ犬もかわいい夏の雲   無花果ジャム5歳くらいの男の子
「お母さんはちゃんとやってる」初蛍   猫宮イチ

「卵から姫が生まれる夢みた」春 猫宮イチさんの次女の作品

2021年9月4日土曜日

実家の柱で一句

秋草や開かぬままに項垂れん
きりぎりすインフラ投資追加かな
しけ寒や見上げればまた傘忘れ
鳥威し(とりおどし)写楽を誹謗する歌麿
渭水苑若き名人初防衛

プレバト纏め 2021年9月2日
実家の柱で一句

永世名人東国原のお手本
東国原英夫
秋暑し柱は饐えた父の匂い
(時候の季語「秋暑し」を主役に立てている。
 生々しい実感。断定して詩を発生させた。)

永世名人への道
村上建志
車庫入れの誘導は父秋日和
(季語が印象に残らない。秋夕焼だったら?)

特待生昇格試験
横尾渉
父からの返球身に入む黄昏
添削(「身に入む」秋の冷気や物寂しさが
   身に深く滲みるように感じること。
   助詞「から」は不要。)
返球の身に入む黄昏の父

1位 貴島明日香
秋の日に母の枕香(まくらが)薄れゆく
添削(薄れゆくは時間経過。「には」散文的。)
秋の日母の枕香うすれゆく

2位 濱家隆一
明日急かし日めくり揺らす秋の初風
添削(「秋の初風」は秋の到来を思わせる風。
   「明日急かし」は詠む人へ残すべき感想。)
日めくりを揺らして秋の初風

3位 和田アキ子
今年酒我が膝さする小さき母
添削(「今年酒」とは今秋に取れた米で醸造した酒のこと。
   クローズアップする手法。)
吾の膝をさする母の手今年酒

4位 山内健司
盆休み久々の足の指の敵
添削(ぼろかすに言われていましたが、
   目の付け所は良かったのではないでしょうか?)
また指をぶつける柱盆の家

5位 村上佳菜子
疲れたなあ追い込む季節冬隣
添削(冬隣は間近に迫った晩秋の気配。
   具体性を盛り込んでいないのは致命的。最悪句。)
練習終えスケートシーズンは間近

次回は秋のタイトル戦「金秋戦」予選 お題
Aブロック スポーツの秋
Bブロック 食欲の秋
Cブロック 読書の秋

岩永徹也さん・春風亭昇吉さん・三遊亭円楽さん・
向井慧さん・森口瑤子さん 期待しています!

2021年9月3日金曜日

鉄舟と菜根譚と「入内雀」

あなたへの消えぬ思いや荻の風
建前と本気の乖離扇置く
恋心虫に例えて酔芙蓉
抗うことを好む人をり夜長月
論点をずらせ応戦秋曇

山岡鉄舟 曰く
「晴れてよし
 曇りてもよし富士の山
 もとの姿は
 変わらざりけり。」

菜根譚 より
「自分の心情の動きというものは、
 平穏な状態もあり、乱れる状態もある。
 なのにどうして、他人にだけいつも
 平穏な状態でいることを望めようか。」

一分季語ウンチク 「入内雀(にゅうないすずめ)」
雀と一体何が違うのか?
この「入内雀」雀の仲間で分布としては
北海道や東北あと信越地方などに現れている鳥です。
雀に似ているけれど頬の部分に黒い斑点がない
ということが雀との違いです。
「入内」というのが何かというと
日本の伝説に基づいていて、左遷されて
奥州で死んだ平安貴族そして歌人の藤原実方の
怨念を背負った雀たちが内裏に侵入してきて
食べ物を食い荒らすという伝説に基づいて
この「入内」という名が
ついたという由来があります。
この実方の絵というのは鳥山石燕の
妖怪図録みたいなものにも描かれています。

2021年9月2日木曜日

ニーチェとジグジグラーの言葉

中庭に色を添えたる桔梗かな
秋遍路泥にまみれてまた一歩
秋の雷固まる画面ただ見つめ
桃洗ふ産毛が指につきまとい
亡き母の着物姿や葛の花

ニーチェ 曰く
「高く登ろうと思うなら、
 自分の脚を使うことだ。
 高い所へは、
 他人によって運ばれてはならない。
 人の背中や頭に
 乗ってはならない。」

ジグジグラー 曰く
「心では感謝しているのに、
 それを態度で示そうとしないのは
 プレゼントを包んだのに
 渡さないのと同じこと。」

2021年9月1日水曜日

セネカとマルク・シャガールの言葉

黒猫を抱いた美人よ夢二忌よ
秋の雨洗濯物を舞い上げて
秋蛍孤独を共に楽しまん
秋の虫声を限りのコンサート
東祖谷ぼちぼち咲きて蕎麦の花

セネカ 曰く
「憤怒より自分を抑えるには、
 他人の怒れるときに、
 静かにそれを観察することである。」

マルク・シャガール 曰く
「心を込めて創り出した時は、
 たいてい何でもうまく行く。
 頭を捻ってひねって作り出しても、
 おおよそ無駄である。」