2021年7月22日木曜日

題「まだ・もう」

跋扈するステルス値上げ汗みずく
夏に遭う米のシュリンクフレーション
湯に浸かり老鶯の声目を閉じん
夏に立つ一木造り柔らかく
くらがりの一木造り涼気過ぐ

NHK短歌 題「まだ・もう」
選者 大森静佳先生 ゲストは村上純さん

君の死後、われの死後にも青々とねこじゃらし見ゆまだ揺れている
大森静佳

6月の夕刻過ぎし上空にまだ貼り付いている滲む色
村上純

今週のお気に入り

「まだ」「まだ」が初夏の空を埋めいくひたすら電話かけるわれらの
越湖早苗

まだ見えぬ脚を伸ばしてもう一度伸ばしてぬん、と蝌蚪(かと)の生まるる
脇本文子(蝌蚪は晩春の蛙の子季語)

石ころの多き流れの時は過ぎただ大らかにもうすぐ海だ
坂本ひろ子

もうそれが終の一度と教えてよ樹に触れること海を聴くこと
北入はるか

愛の歌コーナー
世界まだ昏れゆかぬころ膝の上にのせたる顎を涙走りき
岡井隆
代表作
耳は眼を覆わむばかり 雨少女ザムザザムザムわれに蹤きくる 
桜なんか勝手に咲けよまだすこし怨念がある昨日の夢に
海こえてかなしき婚をあせりたる権力のやわらかき部分見ゆ
蒼穹は蜜かたむけてゐたりけり時こそはわがしづけき伴侶
くッと言ふ急停車音広辞苑第三版を試し引き居れば
スラリ一すぢ白色灯を差しかへて脚立を下りる時の眩暈

「大森静佳のポイントで改作」。
今日のテーマは「展開をかんがえよう」。

改作ポイント①
場面をつないでみよう
元歌
蟬の羽化まだかと見詰む子の眠しもうすぐ夢で這い出してくる
選者の改作
蟬の羽化待ちくたびれて眠る子の夢にもうすぐ這い出すいのち
ポイント解説
現実と夢をつなげる
主語(羽化した蟬)をそろえる

改作ポイント
後半から展開してみよう
元歌
蟬の羽化まだかと見詰む子の眠しもうすぐ夢で這い出してくる
選者の改作
やわらかな翅はのびゆく蟬の羽化ながく待ちいし子の夢のなか

蟬の羽化まだかと見詰む子の眠し母が重ねし子の刹那(せつな)かな
村上純
蟬の羽化まだかと見詰む子の眠し「もう」をあずかる鬼の大木
有森也実

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