幾重にも色蓄えて牡丹落つ
夏の空色の移ろい心をも
淡々と文読む女夏の月
息ひそめ眉を描かん炎暑かな
浜木綿の花確かな存在感
川嶋一美 第2句集「円卓」
地中出づ梅のはなびら押しあげて
かたつむり渦をきれいに眠りゐる
ゆらゆらと来たるは力士水温む
土よりもすこしあかるい雉(きじ)あゆむ
イルカ見しどの瞳も澄めり夏の雲
すれ違ふ人に雨意あり桜狩
滝そこに山椒魚の水しづか
渦ふかく泉は春となりにけり
目高の水つつけばつんと窪みけり
白日傘らふばいの葉に触れながら
榛の木としばらく処暑の雨にゐたり
豆ごはん俤(おもかげ)に声なかりけり
遠藤由樹子 第2句集「寝息と梟(ふくろう)」
冬の薔薇牛乳よりも静かなる
桜より淡く絵具を溶かしけり
翳ること好きな兎の眼を覗く
熊と熊抱き合へばよく眠れさう
血を分けし者の寝息と梟と
遠からずこの樹下に咲くクロッカス
月面のかたさ思へり桜の夜
荒涼と雪降りしきる馬の耳
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