2021年7月12日月曜日

川嶋一美と遠藤由樹子の句集より

幾重にも色蓄えて牡丹落つ
夏の空色の移ろい心をも
淡々と文読む女夏の月
息ひそめ眉を描かん炎暑かな
浜木綿の花確かな存在感

川嶋一美 第2句集「円卓」
地中出づ梅のはなびら押しあげて
かたつむり渦をきれいに眠りゐる
ゆらゆらと来たるは力士水温む
土よりもすこしあかるい雉(きじ)あゆむ
イルカ見しどの瞳も澄めり夏の雲
すれ違ふ人に雨意あり桜狩
滝そこに山椒魚の水しづか
渦ふかく泉は春となりにけり
目高の水つつけばつんと窪みけり
白日傘らふばいの葉に触れながら
榛の木としばらく処暑の雨にゐたり
豆ごはん俤(おもかげ)に声なかりけり

遠藤由樹子 第2句集「寝息と梟(ふくろう)」
冬の薔薇牛乳よりも静かなる
桜より淡く絵具を溶かしけり
翳ること好きな兎の眼を覗く
熊と熊抱き合へばよく眠れさう
血を分けし者の寝息と梟と
遠からずこの樹下に咲くクロッカス
月面のかたさ思へり桜の夜
荒涼と雪降りしきる馬の耳

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