秋うらら金は最後の安全資産
秋の声逃げ場となった金相場
秋興や心の棘が留まりて
虚と実は皮膜の間霧時雨(しぐれ)
残された言葉集める秋夜かな
■NHK俳句 兼題「水」
選者:岸本尚毅 レギュラー:紅甘(ぐあま) 司会:柴田英嗣
年間テーマは「描写の工夫」
今秋のテーマ水を描写する
・俳句のタネを育てましょう
川の中の顔は苔や石の肌 柴田英嗣
添削
川に映る顔は苔や石の肌
顔映る水よく澄んで石や苔
水の描写のポイント
水は表面に物を映し出す
水の中に見えるものを描写することで澄んでいる様子を表現できる
物漬けて即(すなわ)ち水尾(みお)や秋の川 高浜虚子
(水面の水に集中して欲しい)
・今週の特選句 兼題「水」
出水跡母はひとりの虚を構え 早瀬孝弘
(出水:夏の季語)
肺に水抱える母の聞く花火 松本かおり
(腹水の水攻めに会ふ二月かな 野見山朱鳥(あすか)
ユーモアを詠んでいるところが凄い)
空高く静かに速き疎水かな 三井正夫
(流れ行く大根の葉の早さかな 高浜虚子)
水脈(みお)太き水上バスや鯊(はぜ)日和 花瀬玲
死者送る川に西瓜のにおいあり 青山椒魚(しょうぎょ)
(川施餓鬼(かわせがき)川辺で死者の魂を供養する仏事)
目の前にキリッと四角水羊羹 西本恵美
(一物仕立て ひとつの季語を中心として詠む手法
たたみ込んだ表現が巧い)
特選三席
三席 各校のボートや堅田(かたた)水の秋 鈴木朗(あきら)
(堅田は浮御堂(満月寺)で有名な地名 滋賀県立膳所(ぜぜ)高校)
二席 水澄むや木の根しづかにくぐる魚 栗田修次
(表現が優れている)
一席 ごうごうと水の流れや蛭(ひる)を剥(は)ぐ 緒方明博
(「高野聖」泉鏡花作 不思議な体験談を主人公に聞かせる物語
迫力のある作品)
・はみだせ!教室俳句
静岡県富士宮市立黒田小学校 奈良部芙由子先生
抽象的なこと・気持ちを具体的な事例で当てはめて
安心感を作るというか…。
俳句のテーマ ウキウキワクワク⇨具体的な思い出に当て嵌める
えんてんの力をかりて石みつけ 五年生 渡邉徠翔
自分の知らない自分に気付く
・「見どことあり!」の一句
末期水(まつごみず)に応えぬ老描夏の果て 山口樺風(かふう)
添削
末期の水に応えぬ老描夏の果て
推こう
末期の水に応えぬ描や夏の果
(字面がすっきりしていた方がいいので「て」は消す)
・紅甘のつぶやき
飲むもよし 聞くもよし 浸(つか)るもよし
■NHK短歌 テーマ「旅」
選者:荻原裕幸 ゲスト:池上規公子 司会:ヒコロヒー
年間テーマは「短歌は時代の波に乗って」
三十三間堂あらたまのああこれは市川春子の線だとおもふ
荻原裕幸(市川春子:漫画家 代表作「宝石の国」)
・入選九首 テーマ「旅」
二席 さあ今日はどこへ行こうかご近所のONO工房のどこでもドアで
三浦三希
「旅先で会ったやさしい日本人」役を演じる浅草寺前
安原健一郎
一席 男女入り乱れる班と寝る班と枕投げでもしておくか班
横浜J子
どしゃぶりが「修学旅行だったのにーーーーーー!」を車窓に描く
澄田修一
おばあちゃんそちらの旅はどうですかおにぎりの具は良い塩ですか
中村杏
私 阪急に乗れば行けるわどこへでも外(と)つ国、宇宙、百年前へも
城谷望月(宝塚歌劇団を詠んだ歌では❓)
三席 きょうとまで「オサカナモンチ」さがすたび二歳児のめざすはお子様ランチ
中山茂樹
家出しないことは旅先でもしない育ちがいいとはわたしのことだ
犬山裕之
私 パスポート更新用の撮影にしわ消し加工のオプションがある
金城ひろ子
・荻原流 読み方指南
今月の読み方指南 地名を入れて詠んでみよう
短歌では作品の中で出てくる地名のことを【枕詞】という
地名を入れると読者と作者の間で情報の共有ができる
面白い作品を描きやすくなる
妻ぢやないひとと来てゐる雰囲気で妻と来て熱海の夏を聴く
荻原裕幸
通俗的なイメージのままで書いてしまうと
月並みなものになりやすい
短歌づくりのコツ
地名を使う時はありきたりな表現にならないよう
自分のイメージを膨らませて詠む
湯の石を踏んで露天のさきに湖(うみ)ひゃあと鳴くのはカモメか母か
池上規公子
・ことばのバトン
快速の流れる景色街灯り
岩手県立盛岡第三高校・文芸部 本間史子・田中陽菜・窪田明
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最期の思い出母の元へと
坂野悠己(ゆうき)総合ケアセンター施設長
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