2025年4月29日火曜日

兼題「燕」&テーマ「私だけの発見」

春の店先煙草くゆらせたむろせり
わらび餅所狭しと並ぶ棚
車停め隣の店へ姥桜
群れなさん特売品へ春の宵
買物済ませサザンと帰宅遅日

■NHK俳句 兼題「燕」
年間のテーマ「語ろう!俳句」
選者:高野ムツオ 司会:柴田英嗣
ゲスト:能町みね子・かわにしなつき・鈴木牛後・斉藤志歩

兼題「燕」南からやってきて春が来たことを知らせてくれる
春が来たという思いと人間と燕の営み
この響き合いが俳句に出てくるといい
① ぶらんこの浮かびごこちを初つばめ   鈴木牛後
 「ぶらんこ」「初燕」どちらも春の季語 
 「を」(助詞ひとつ)「浮かびごこち」巧い
 ぶらんこののんびり感と初燕の素早さがうまく溶けあっている
② 雨だよと上目遣いの燕たち   かわにしなつき
 先入観を無くすとなかなか良い句に思えて来たと高野先生
③ 燕来る電柱傾ぎ川奏で   高野ムツオ
 川は楽器で奏でている 
 電柱は指揮棒を持って揺れているイメージで作った
④ 散髪の帰りは雨の燕かな   斉藤志歩
 「の」の使い方はテクニックが凄い「は」は曲者
⑤ つばくらめ描線は牛小屋を裂く   能町みね子
 燕の軌跡の鋭さの比喩としてダイナミックな燕の生命感を感じさせる
 俳句は景を写すと同時に言葉で景を構築するという魅力がある
 つばくらめの飛び方と牛小屋という重くて暗いもの 組み合わせが面白い
 描線という硬い言葉を使いながらつばくらめの飛ぶ姿を見せている
 挨拶句 能町さんは挨拶のできるしっかりとした俳人と高野先生

俳句は簡潔にわかりやすく作るのが基本
しかし中身は解かりにくくいろんな解釈ができる
さまざまな方向から考え鑑賞すると中身が深くなる
そこにも俳句の魅力がある

・特選三席発表 兼題「燕」
一席 下ばかり向くなと燕旋回す   小林孝恵
二席 人類は塔を創るやつばくらめ   池田宏陸(ひろむ)
三席 空を切るフルスイングや初燕   猪岡義弘

・特選六句発表
鎮魂の海低く低く燕飛ぶ   平野恵子
燕来る通勤快速が遅い   佐藤志祐
臨月の妻と見上げる燕かな   佐々木昭夫
本開けば翼のかたち燕飛ぶ   松A子
表札は七(なな)人のまま燕来る   三村文利
燕来る胎(はら)の子ぐうと伸びをせむ   立花紅

俳句は人に対する挨拶 自然そのものに対する挨拶でもある
世の中全てに対する挨拶でもある これが五七五なんですと高野先生

■NHK短歌 テーマ「私だけの発見」
年間のテーマ「“伝える”短歌 “伝わる”短歌」
選者:木下龍也 ゲスト:道尾秀介 司会:尾崎世界観

自分が内側に持っている風景 感情 アイデアを
どのように(短歌の中に)詳細を保持するか 

木下さんの歌集を読む前には二度と戻れない
不可逆的な変化が自分の中に起きた

「私だけの」と付けることで個人的な体験であったり
自分だけが持ていたもの 
自分だけが感じていたであろう感情を書いてくれる

・入選九首 テーマ「私だけの発見」
引っ越しの最後の残る洗濯がto be continuedみたいで
髙山准
(詩の神に眠そうに答えるAll around you 木下龍也)
ネパールのコリコリのやつご飯に合う名前も知らないコリコリのやつ
野口み里(大根のアチャール)
髪の毛を何度も触るここだけが生きてるときと同じ手触り
澁戸なずむ
一席 死の上に立たせる命があるから死の一画目はこんなに平
浅寝むい
自転車は漕げば必ず耳元に風音を呼ぶ金管楽器
掛口弘
泣いていいコーヒーを飲むたび浮かぶ月がきれいに満ちる夜には
十条坂
手のひらに大きなラの字があると知りそれからずっと手のひらに歌
琴里(ことり)梨央(無価値な発見ではあるけれど自分だけの発見 
行動をコントロールさせる歌)
二席 チョコレート一粒そっとくださる日あなたも何か苦しんでいる
板倉亜澄(あすみ)(距離感に品がある 思いを寄せるだけ…。)
三席 五円玉稲穂に付きし籾(もみ)の数二十七粒それでも垂れる
畑啓之(ひろゆき)(余白の使い方がシャープ)

・“伝える”短歌 “伝わる”短歌
木下流短歌の育て方
道尾さんの“私だけの発見”
ビーカーを割らせた僕へまっすぐに破片のような視線が刺さる
⇩推敲
ビーカーの破片のような一瞥(いちべつ)がまぶたの裏でときおり痛む
⇩推敲(痛みは目に残らない肌に記憶が残る)
ビーカーの破片のような一瞥がおまえを嵌めた手から抜けない
(目と手の話「おまえを嵌めた手から抜けない」ってふうにして
抜けない状態がある 手のひらにあるから
たまに見るという距離感の歌にしてみた)

作品を作るうえでそれを広く届けようにするのか
深く届けようとするのかというところで いつも自分が
短歌を作りときにバランスに悩む 

法の女神テミスは右手に天秤(公平の象徴)、左手に剣(力の象徴)を
持っている 顔は目隠しをしているという像 
左手に持っている剣が自分のやりたいこと
右手に持っている秤が小説・作品としてのバランス
どっちも持っていないといけない 
どちらも100%で受け入れられるようなものを作るイメージ
道尾

出来ないことをやるというのを大事にしている 表現者として
これ完成しているのかな❓大丈夫かな❓って不安になるような
ものを作り続けるというのはすごく大事
尾崎

・ことばのバトン
爽やかに次の畑へお引越し
増田明美(スポーツジャーナリスト)

あみだで辿る言の葉の脈
保科潤(出版社 営業)
自分の中で培ってきたコミュニケーションの木があるとして
生い茂る葉っぱの一つ一つに葉脈が通っている
葉脈をあみだくじでたどるような運任せ気楽に素敵な出会い
あればいいかな 出会いは言葉と共に

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