2025年4月27日日曜日

歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」岩下尚史

春の朝寝ても寝ても寝足りない
握った手をも離すのね花の雨
むなしさを道連れに鳥雲にいる
瞬間を懸命に生く花の冷え
目を閉じて心開いて春の月

■芸能きわみ堂 吉原にうごめく殺意!?歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」
遊郭吉原 廓社会の闇
享保年間(1716~1736)吉原百人斬り事件
この事件をもとに作られたのが
歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」
容姿にコンプレックスを持った男が入り込んだのは魅惑の世界
悲劇の裏 

ゲスト 岩下尚史(作家・國學院大學客員教授)
新橋演舞場に勤めていた
子どもの頃 NHKの番組で中村歌右衛門に魅了される
大学の時 後援会に入る 最年少会員となる

刀は鞘を離れると人に危害を及ぼす 妖刀(ようとう)
江戸で髄一の歓楽街 錦の裏を見せる芝居

明治21年 三世河竹新七作 歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」
明治時代の名作に勘九郎 七之助が挑む!
商人 佐野次郎座衛門 中村勘九郎 
(大好きな演目 いつか演じてみたい)
遊女 八ツ橋 中村七之助 
(嬉しくて嬉しくてしょうがない この空気に一生いたい)
次郎左衛門がどういう思いで(八ツ橋に)ほれているのか
父の解釈 祖父の解釈 (台本に)書いていない部分が大切
その部分を腹に落として演じるということが大切
見る方によって捉え方が違ってくる

あらすじ
次郎左衛門が初めて吉原を訪ねる
江戸の吉原という所は話には聞いておりましたが
こんな立派な所とは今まで知らずにおりました
性格はいたって誠実で素朴 そんな次郎左衛門がが会ったのは
絶世の美女兵庫屋 八ツ橋 に一瞬にして心を奪われてしまったのです
それから 何度も吉原に通うように
八ツ橋を見受けしようとする ところが問題が
繁山栄之丞「これ八ツ橋 よくもわしを振り捨てて 
見受けをされて出る気になったな
栄之丞と別れたくない八ツ橋は
「どうぞこの後わちきのところへ遊びに来てくださんすな」
つれない仕打ちに次郎左衛門は絶望するのでした

次郎左衛門は八ツ橋にほれたが はじめから かなわぬ恋だった
(吉原は)お金を介在して成立する場所 次郎左衛門は八ツ橋の手管
あくまで遊び 本気でほれては遊びではない
本当の恋は別にしなさい きれいな嘘の社会 
遊女は客を騙すもの いい気分にさせて帰すのが遊女 

幕府公認の遊郭 吉原 囲われていたから廓
大門 かご・刀は禁止 アナザーワールド 異世界
そこに君臨するのは最上級遊女 花魁
花魁と仲良くなるには❓
Step① 引手茶屋の女将に花魁を紹介してもらう
Step② 初会 遊女屋にて花魁と初対面
    はじめは冷たい態度の花魁
Step③ 冷たい態度に負けず2度目の訪問
    おあがんなんし いい飲みっぷりざんす よそよそしい
Step④ 花魁専用の本部屋へ招かれる
    お待ちしていんした 馴染み 名前入りの箸袋のプレゼント
    3度目にして花魁の馴染みとして認められる

段階があるのでお客も嬉しい そこに行き着くまでの過程を楽しむ
あの人だったらいいわと言われないとだめ
それが男の喜びだった 初めて会った時の花魁の態度
花魁の取り巻きの人件費も含んだ費用が必要となる
5~600万円から 使おうと思えば数千万円
見返りと期待するような男は遊びに行く資格はない
遊びは見返りを求めちゃいけない
「したんだから」「したのに」そういう言葉が入ってはだめ
そう思う人は行っちゃいけない

廓世界の虜となった次郎左衛門
廓に通い始めて半年 商売仲間を連れてきた
「このうきうきしたところが どうにも言えぬ心持ちでございましょう!
おだててくださるな 汗が出ます」 
半年後 次郎左衛門の衣装がいいものに変わっている
「ちょうど向こうから八ツ橋花魁がお出でになりましたよ」
「この具合が 実に無類でございますね」
そこへ八ツ橋がやってくる
商売仲間が八ツ橋のあまりの美しさに驚き褒めたたえる
「お二人さん 察して下さい」
「こりゃあ次郎左衛門どのが自慢するのはもっともだ」
「これ(八ツ橋)は売り物買い物(商品)だから私の来ぬ時お買いなさい」
「まあ あの口の憎らしい」
次郎左衛門は遊び慣れていない これだけ「馴染み」になったのを
見せびらかせる 地元の仲間を小馬鹿にしている

八ツ橋の心持ちははっきりしない 本人も何となく決めかねていた
事実は八ツ橋には間夫(まぶ)がいた 
その存在があったのに次郎左衛門は気づいていない
気づかずに身請けをしようと思っている

次郎左衛門のいない所では 
「佐野の客を断ってきれいに愛想をつかしたらそれで疑い晴らしてやるわ」 
「そんならこれまでお世話になったお客へみすみす愛想づかしを」

予想外の次郎左衛門は
「そりゃああんまり そでなかろうぜ(冷たいぜ) 田舎者のその上に
ふた目と見られぬ(醜い)わしゆえに 断られても仕方がない
が なぜ初手から 言うてくださらぬ
4か月後…八ツ橋を訪れた次郎左衛門 恨み爆発
八ツ橋はじめ大勢を斬り殺すのでした

現代ではこの廓の世界は少々冷たく感じてしまうかも
そういう世界があったということ
あれほどの花魁に間夫(まぶ)がいないはずがない
「好きな間夫がありゃ添わせてやろう」
という人じゃないと本当の旦那じゃない
ここで次郎左衛門に同情する
「縁切り物」作品の多く⇨男のためにうそで愛想をつかす
この芝居は本気で言っている 本当にこの男に
身請けさせるのは嫌と言っている芝居は珍しい
江戸時代だったら こういう作りにはならなかった
明治だから 明治にできていたら理想だけではお客は満足しない
すごく厳しいよね吉原もというところを見せる
同じような境涯の「ああわかる」という女性の見物もあったと思う
どの役も自分の立場ではこう言うだろうなというセリフ

八ツ橋が身請けを断る場面
八ツ橋を説得する芸者たち⇨立場に見合ったセリフで書かれている

よくできているのはこのタイトル「籠釣瓶花街酔醒」
さとのえいざめ 
紳士たちの社交場が(吉原から)新橋や赤坂と言った芸者屋町に移る
吉原がだんだん寂しくなっていく 徳川泰平の夢も醒めて
懐かしくて美しかったけど決していいことばかりでもない
遊女のつとめもつらかった という反省もあった

刀 怪刀「籠釣瓶」作ったのは「村正」
刀が動いている 刀に引っ張られている 刀に意思があるかのようです

籠釣瓶の由来
井戸水をくむ釣瓶が籠だと 水が漏れる
水がたまらない⇨「水もたまらぬ」 諸説あり

徳川家康まつわる話
松平清康(祖父) 村正の刀で斬殺
松平広忠(父) 村正の脇差しで暗殺
徳川家康 村正を手にしたとき怪我
松平信康(息子) 村正の刀で介錯

村正は妖刀であるとなった
魂がこもってる ただ武器というだけではなかった
妖刀村正というものをドラマの中にいれたのも見事

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