秋の声附和雷同(ふわらいどう)の輩ども
放蕩無頼(ほうとうぶらい)秋の陽を背に受けて
秋の空盛者必衰あらわす理
台風の予報当たらず秋日和
秋渇き空気を読まぬ無敵をり
■NHK俳句 兼題「夜寒」
選者:小川軽舟 ゲスト:野口絵子 司会:柴田英嗣
年間テーマ「暮らしを思い出す」
野口絵子さんは登山家・野口健さんのお嬢さま
15歳でアフリカ大陸最高峰 キリマンジャロ(5895m)登頂
一方、今年2026ミスグランプリ&ミス日本「海の日」W受賞
昨年はヒマラヤ メラ・ピーク(6476m)登頂
俳句も先入観を破る発想が大事 小川
日本語は主語や助詞を省略しても成り立つ 余白を読者が考えて想像する 野口
余白は何もないことではない 読者の想像力を呼び込む 小川
兼題「夜寒」秋の季語 秋が深まった頃に感じる夜の寒さ
心細さもある寒さ 小川
山に行くと夜は冷え込むのが早いので 気温の違いは体で感じる 野口
名句鑑賞
母と二人いもうとを待つ夜寒かな 正岡子規
「夜寒」がすごく効いている 心配でしーんとした静けさ
女将われ客に夜寒の靴揃へ 鈴木真砂女
小料理屋を後にする客との会話が聞こえるような夜寒の句
「夜寒」が入っていることで女将と客の心の通い合いが出ている
経木(きょうぎ)より焼餅はがす夜寒かな 小川軽舟
高野山の宿坊に泊まった時に詠んだ句 経木:薄い木の板
人恋しい気分になった 「夜寒」は人恋しさにつながる 小川
6000mを超えると氷河の世界 寝ていると聞こえてくる音は
風と自分の呼吸しかない 土が無い場所なので匂いがない
「人間だ」と感じる匂いが温まる 野口
人恋しさは突き詰めると自分が愛おしい 小川
暮しの中に俳句のネタを見つけよう!
苔は森のなかに広がる小さな森 野口
読者もそこに居る臨場感を持てるか 小川
森の中に苔の森あり秋の朝 小川軽舟
朝の太陽は爽快で明るい色 1日が始まる嬉しさもあって好き 野口
いろんな事を読者が連想してくれる 小川
・特選三席 兼題「夜寒」
一席 散らかりし絵本かさねる夜寒かな 高原晴子
二席 夜勤へと渡る夜寒の跨線橋(こせんきょう) 端(はた)あつ子
(跨線橋:線路をまたぐ橋)
三席 逝く父の耳にものいふ夜寒かな 伊藤映雪
・特選六句 兼題「夜寒」
観客は五人夜寒の映画館 山田由美子
ページ繰る夜寒の指のもどかしく 紗羅ささら
味噌汁の卵の煮立つ夜寒かな 道脇長二郎(ちょうじろう)
夜寒さの誰か蹴りたる缶の音 大和田博道(はくどう)
我を見る夜寒の監視カメラかな 慈雨
球切れに脚立を運ぶ夜寒かな 神谷(かみや)優
・はみだせ!教室俳句
埼玉県 鴻巣市立 鴻巣北小学校 深谷健先生
句会に挑戦 入賞句
①
くものみねなんだかくもがグミみたい
②
自分しかしらないきもち夏の雲
③
夏の昼やねうらべやでおままごと
④
👑ようちえんいくすぐあそぶ夏の朝
⑤
ぬいぐるみ三十八こ夏休み
⑥
サッカーの試合の合図炎天下
登山家/ミス日本 野口絵子の一句
夜寒かな岩に腰かけ日を送る 野口絵子
山で経験する日が落ちた後の寒さを夜寒と捉えたところが新鮮
五七五の言葉だけだと山の上だと分からない
言葉だけで山だと分かると良い
添削
岩稜(がんりょう)に日を送りたる夜寒かな
(岩稜:岩が連なってできた細い尾根
日を送った後の夜寒 後ろの方が夜寒がどっしり感じられる
「かな」という切れ字を使って 余韻が残る)
来週は兼題「飛ぶ・跳ぶ」選者:高野ムツオ 司会:柴田英嗣
出演者 今橋眞理子 曾根毅 古坂大魔王 関取花
■NHK短歌 題「置」
選者:大辻隆弘 ゲスト:一龍齋貞友 司会:尾崎世界観
年間テーマ「伝統的なことばを生かして」
ついちょっと置いたつもりが今いづこうちにはあるのブラックホール
一龍齋貞友
(弾むようなリズムがある歌で良い 大辻隆弘)
今月のポイント「助詞~「の」の力~」
私の本 所有格 君の行く道 主語
同格の「の」:「の」の上の部分と下の部分がイコールであることを表す
小さき鳥の白き 小さい鳥で かつ 白い鳥
今とちょっと違う使い方の「の」が 凄く魅力的に感じられる時がある
ただひとつ惜(お)しみて置きし白桃のゆたけきを吾は食ひをはりけり
斎藤茂吉「白桃」
(たった1つの追熟を待って置いておいた白桃がいよいよ食べごろのなった
斎藤茂吉は今日こそ食べごろだと思って その桃をたっぷりとした汁を
感じながらうっとりとして食べ終わったという歌
「の」が同格の「の」「やたけき」という形容詞が下に来るので
たっぷりとした豊かさそのものみたいなものが胸の中に響いてくる感じがする)
改作
ただひとつ惜しみて置きし豊かなる白桃を吾は食ひをはりけり
斎藤茂吉の原作はゆたけきというところがすごく胸に響いてくる
改作は白桃がポツンと机の上に置いてあるだけの感じがする
・入選九首 題「置」
歯ブラシもそのまま置いて旅にでもフラっと出るように結婚していった息子
瓦井(かわらい)美智子
二席 傷ついたことを誇っている君の延命装置のような長雨
小松百合華
「さくぶんがへたでごめん」の置手紙ありてお母さんがへたでごめん
白波はるよ
艦艇用推進装置の実験をしてゐる時の夢を今朝見ぬ
長谷川文彦
白鷺の白を際立たせる秋の左岸の夜に匙を投げ置く
相内あみ
一席 牛の糞丸めてあまた干して置くバングラデッシュの野の道涼し
山上(がみ)ふみ子
三席 天元にまず石を置き呉清源(ごせいげん)真中をひろく制して勝てり
緑川智
(呉清源:独創的な新布石を生み出し 昭和の囲碁界に君臨した天才棋士)
誰ひとり置き去りにしないスローガン置いてけぼりの安堵もありて
塩田陽子
学ランのホックを留めて初めての岩波文庫レジに置きたり
吉行直人
・短歌魔改造ラボ
愛用の文鎮を置き集中し「馬」とふ字をば一気に書きぬ
坂東紘子
魔改造
愛用の文鎮を置きみなぎらふ「馬」といふ字を一気に書きぬ
文鎮を置く 集中する 字を書く 動作が3つ出てくる
時間のスパンを短く切って一瞬を立ち上げたい
第3句の集中しを切ってみた
文語のみなぎらふという言葉を入れてみた
「みなぎらふ」は「ちからがみなぎっている」こと
筆の動きも力がみなぎっている
・伝統的な言葉の魅力とは?
講談は時代物が多いので言葉の表現もクラシカルな言い方が多い
聞いてくださる方は難しいと感じる 気にしないで わからない
表現があったらスルーしてください それにこだわっていると
話の流れが途切れてしまう 前後の流れから判断してください 貞友
文語は意味を考え出すと難しい 歌の持っている言葉の響きや
詩の精神の一番大事なところが意味に遮られて全部飛んでしまう 大辻
子供の頃大人が読むような小説で意味がわからない言葉があって
3つぐらい言葉の意味の候補が出てくる 難しそうだった物語が
柔らかくなって 意味ははっきりくみ取れていないかもしれないが
読みやすくなった わからないことがあっても自分のものになっていく 尾崎
解釈も折々変わっていって良い 貞友
言葉とリズムの関係をどう考えている? 尾崎
講談師は最初に修羅場という武将が戦う話を必ずやる
特に「三方ヶ原軍記」はどの流派も必ずやらなければいけない登竜門 貞友
後ろに引っ張っていくようなリズムの取り方 尾崎
リズムの高揚感が気持ちの一体感を作り出す
感情が言葉のリズムによって醸し出されて
読者も作者も情緒の共同体に入っていった
・いちご摘み 一語つむ
駅前であなたを探す星を待つ占星術者たちの視線で
眞鍋せいら(好きな歌人 笠木拓)
⇩
昨日食べたカルボナーラがもう恋しい星月夜 そんな日記をつける
長谷川麟(好きな歌人 石川啄木)
摘んだのは星 ほの明るい夜空 美味しい黄色
短歌の捉え方が全然変わるタイミングだったと思いますね
第10回現代短歌社賞 受賞
3年前 第一歌集を出版「延長戦」
笹船だ 川の流れははやくって悲しいと言えばなんだってそう
「延長戦」現代短歌社より
一首一首で見ると良くなかったなってことも全体でまとまってみると
すごいいい思い出だったなとか すごく貴重な経験だったなとか
立ちあがってくるものが変わってきて 300首と言う連作・歌集に
取り組んだことが良かったのかなという…。
ゴッホ「星月夜」の黄色が好きだとか…。
アメリカへ行って太ったのだとか…。下半身が…。
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