2026年9月16日水曜日

あの本、読みました? 新井素子 高梨通夫

青き空ゴミ堆積の吉野川

干潟では小さき青蟹吉野川

強き陽よ先祖見守る百日紅

鹿威し(ししおどし)余白持たせた構図かな(北斎)

秋の夕下駄弄ぶ花魁よ(北斎)

 

■あの本、読みました?

生誕百周年【星新一】ショートショートの神様の魅力大解剖

新井素子 高梨通夫 鈴木保奈美 山本倖千恵

 

作家 星新一の魅力に迫る

 

平明な文章をお書きになるし難しい言葉も使わないので

誰でも書けると思って描き始めると 難しい言葉を使わないで

お話を作るのは難しい言葉を使ってお話を作るよりも何倍も難しい 新井

 

少し前に小学生の女の子から「星さんの作品面白く読ませていただきました」

「頑張って執筆活動を続けてくださいね」 高梨

 

時代を超えて愛される理由にはある強い拘りが

 

作家 星新一(19261997)

1957SF作品「セキストラ」で作家デビュー

「ショートショート」数ページの短い文章のSF作品

ダブルミリオンセラー(200万部以上)

「ボッコちゃん」277万部 「気まぐれロボット」255万部

ミリオンセラー(100万部以上)

悪魔のいる天国 ノックの音が エヌ氏の遊園地 マイ国家

未来いそっぷ ようこそ地球さん 妄想銀行 ブランコのむこうで

宇宙のあいさつ 午後の恐竜 妖精配給会社 おせっかいな神々

声の網 地球から来た男 ちぐはぐな部品 盗賊会社

おのぞみの結末 ご依頼の件 ねらわれた星 ひとにぎりの未来

 

高身長の紳士 星新一の趣味(松田聖子・山口百恵 および芸能界好き)

 

「ボッコちゃん」の一文 星新一著/新潮文庫

「名前は」「ボッコちゃん」「としは」「まだ若いのよ」

「いくつなんだい」「まだ若いのよ」「だからさ…」「まだ若いのよ」

この店のお客は上品なのが多いので、だれも、これ以上は聞かなかった。

「きれいな服だね」「きれいな服でしょう」「なにが好きなんだい」

「なにが好きかしら」「ジンフィーズ飲むかい」「ジンフィーズ飲むわ」

酒はいくらでも飲んだ。そのうえ、酔わなかった。美人で若くて、

つんとしていて、答えがそっけない。お客は聞き伝えてこの店に集った。

 

鈴木保奈美 思い出の作品「椅子」

「ボンボンと悪夢」収録 「椅子」星新一著/新潮文庫

彼のかけている椅子。その古びた大きな椅子は、やわらかな曲線と

ふっくらした感じを持ち、あたりのみすぼらしさと奇妙な対照を

示していた。「いい椅子じゃないか」聞かずには、いられなかった。

彼はうなずき、ひじをのせる部分を目を細めてなでながら答えた。

「これはドイツに行っていた時、田舎町の古道具屋でみつけて

買ったものだけど、じつに、すわり心地がいいんだ」「ドイツというと、

きみはそこを最後に、会社をやめたのだったな。なぜ、やめたんだ。

まだ働き盛りなのに」「なぜなのか、なんだか働く気が、しなくなってね」

と答えながらも、彼は椅子にかけ満足そうだった。

 

古さを感じない理由 言葉をアップデート 流行語は一切使わない

固有名詞を使わない 

ロケット⇨宇宙船 空飛ぶ円盤⇨飛行物体 高層アパート⇨高層マンション

タバコに火をつけた⇨自分に言いきかせた

 

新井素子のオススメ「包囲」

「ボッコちゃん」収録 「包囲」星新一著/新潮文庫

「さあ言え、おれになんのうらみがあるん」私は万年筆をポケットにおさめ、

こんどは両手で相手の服のえりをつかんだ。「あなたに、

うらみなんかありません。第一、あなたと会ったこともないじゃありませんか」

「それなら、なぜ、背中を押した」まだ男が答えたがらないので、

力を加えて彼をゆすった。「たのまれたのですよ」そうか、たのまれたのか。

それなら私がこの男を知らなくても、ふしぎはなかった。

 

ショートショートを書くのが難しい

 

高梨通夫のオススメ「鏡」

「ボッコちゃん」収録 「鏡」の一文 星新一著/新潮文庫

「さあ、時間だ」彼ののぞきこんだ腕時計の長針と短針は、十二時のところで

重なりはじめた。「やっぱり本当だった」彼の低いつぶやきの通り、鏡の奥に、

小さく遠く、黒い影がにじむように浮かんだ。「やってくるぞ」

その黒い影は、一秒にひと足ずつ、並んでいる鏡を超えて、近づいてきた。

彼は聖書を開き、身がまえして待った。「あと、五つ、四つ、三つ…」

小さな悪魔は、なおも歩きつづけた。「それっ、つかまえたぞ」

 

新井素子のオススメ「声の網」の一文 星新一著/角川文庫

電話の普及はすばらしいものだった。フロリダだろうがどこだろうが、

世界中どことも一瞬のうちに連絡し、空間なるものを消してしまう。

距離がまるで無になるのだ。そしてコンピューター。

これは時間というものを消してしまう。三年前だろうが一時間前だろうが、

その記録の正確さにはなんの差もないのだ。

こんな時代になるとは、むかしの人は想像もしなかったろうな。

いや、いまだって完全に、それになれているといえるかどうか。

空間と時間とを消し、人びとは自由にそれを利用している形ではある。

しかし、ここにいる津田の目には、逆のようにも見えるのだ。

人間たちがコンピューターのために働いているかのように。

 

高梨通夫のオススメ「ボッコちゃん」収録

「おーい でてこーい」 星新一著/新潮文庫

穴は都会の住民たちに、安心感を与えた。つぎつぎと生産することばかりに

熱心で、あとしまつに頭を使うのは、だれもがいやがっていたのだ。

この問題も、穴によって、少しずつ解決していくだろうと思われた。

 

新井素子のオススメ「殿様の日」

「殿様の日」収録 「殿様の日」の一文 星新一著/新潮文庫

八時。殿さまは食事のための座敷へ移る。だが、料理がさっと

運ばれてくるわけではない。いちおう、つぎの間に控えている。

毒見役の前に運ばれ、そこで点検をうける。その係はきちんとすわり、

ひととおり箸をつけ、しかつめらしく自分の口に入れている。

たしかに口に入れたかどうか、それをみとどける小姓もそばにいる。

殿さまはそれを見ながら思う。毒見役はどんな気分であの仕事を

やっているのだろう。なにも考えず事務的にやっているのだろうな。

そのたびごとに、万一の場合を心に浮かべたりしていたら、

気が疲れてどうにもなるまい。戦場で死ぬのならはなばなしさがあるが、

毒見で倒れるのはぱっとしないな。任務をまっとうして点では同じなのに。

 

高梨通夫のオススメ「午後の恐竜」

「午後の恐竜」収録 「午後の恐竜」の一文 星新一著/新潮文庫

午後の陽ざしが傾くにつれ、恐竜の数もへり、植物のようすも変化していった。

「もう、これでおしまいなのかしら」妻に聞かれ、男は言った。

「いや、そうじゃないだろう。気温の変化のため、恐竜の時代が

終わったということなのだろうさ。ほら変な形だが、羽毛らしきものを

つけた鳥が飛んでいる。ぶかっこうで大型のリスというか、

小さな小さな鼻の短いゾウといった感じの動物が歩いている。

ホニュウ類の先祖だ。寒さにたえられる種類だよ」「あら、べつに

あたし寒くないわよ」「いや、この幻の進化のドラマ。

それが氷河期に入りかけたということさ」

 

新井素子女史にとって星新一氏は「恩人」「人生を決めてくださった方」

高梨通夫氏にとって星新一氏は「人生の友 

人生ずっと星新一氏を読み続けるんだろうな」

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