夏の空背徳感に支配され
手は腰にグリーンコーラ夏を飲む
蒼空よ樫の新芽の染める山
新緑や若き命のそこかしこ
目を閉じん酢橘の花の甘き香
■NHK俳句 兼題「更衣(ころもがえ)」
選者:小川軽舟 ゲスト:吉岡更紗 司会:柴田英嗣
年間テーマは「暮らしを思い出す」
紫草:むらさきと読む 表面から出ている時は紫の色はない
この時期に咲くのですが 花は白 根は紫っぽい色をしている
そこから色を出して染める 記録上は奈良時代ぐらいから
「日本の色」吉岡幸雄著/紫紅社
「あさぎいろの空」という言い方をする
「あさぎ色」って浅い葱の色と書く 綺麗な水色
浅葱色 水浅葱 水色 甕覗
基本的には藍染め 蓼藍という葉から青い色素を取り出す
いろいろ濃淡を染め分ける 30色ぐらい藍系の色はある
昔の方は位によって切る色が決まっていた
「浅葱色」は低い目の位の方がお召しになる色
位の中では一から九の一番低い方 一の位は紫
・兼題「更衣(ころもがえ)」
「更衣(こうい)」ということばが中国から漢詩の世界で入ってきて
意味は「ころもがえ」ということで
そのまま「更衣」を読むのが伝わってきた
生活の中の一つの区切り目 暮らしの中で実感のある季語
更衣を済ませて身軽になった状態の気分の良さも「更衣」として詠める
使い勝手の良い季語
名句鑑賞
「越後屋に衣(きぬ)さく音や更衣(ころもがえ) 其角」
其角は松尾芭蕉の一番弟子
越後屋は日本橋にあった呉服屋 今の三越百貨店の前身
越後屋は呉服商として商いの仕方を革新した店
それまでは武家を対象にお得意様にサービスする商売の仕方
値札をつけて店で買えるシステムに変えた
呉服屋の敷居を下げて大繁盛した
「衣をさく」のは裁断している音? 吉岡
鋏で切るのではなく衣を裂く
音から更衣の季節の清々しさを表している
感覚的にも優れた名句 小川
「更衣済ませての妻の逝きにけり 益成栗人」
「更衣」に切なさがある
作者の妻は急に亡くなった
(妻の葬式が終わって)ふと箪笥を開けたら
夏物がきれいに畳んでしまわれていた 引き出しを開けたその瞬間の
作者の驚き そのシーンまで見えるような句
「サラリーマンあと十年か更衣 小川軽舟
更衣は一年の生活の節目になる
人生を顧みるそういう気分になるところがある
そういう雰囲気に誘うところがこの季語「更衣」にはある
・暮らしの中に俳句のタネを見つけよう!
和紙染めて干す工房や風薫る 小川軽舟
「風薫る」は夏の緑の木々を渡る薫るような風という綺麗な季語
・特選句 兼題「更衣(ころもがえ)」
教室の眩しき更衣初日 加藤カキコ
ワイパーに合はすハミング更衣 三輪美奈子
年々に脛(はぎ)の細さや更衣 冨田裕明
更衣昼はオムライス一択 石浜西夏(せいか)
更衣ポニーテールは肩を跳ね 相内あみ
娘なき母の一生更衣 加藤且行
・特選三席 兼題「更衣」
一席 窓開けて渡る鉄橋更衣 荒井東(あずま)
二席 更衣東京遠くなりにけり 小畑昌司
三席 暑がりと寒がりが住み更衣 竹内美代子
・はみだせ!教室俳句
滋賀県 長浜市立びわ中学校 岡崎隆祥(たかよし)先生
交流 俳句というのは表現活動ですので伝えたいことが
相手に伝わらないと勿体ない 交流してもらって「これわかる?」
って聞いたりしながらじゃあどうしたらいいかなって一緒に
確認してもらえたらいいかな?
春の宵あの子と同じ帰り道⇩添削
春の宵あの子と話す帰り道
秋麗ホールに響く友の声⇩添削
秋麗ホールに響くハーモニー
・染色家 吉岡更紗の一句
藍染に黄色重ねて更衣 吉岡更紗
自然界には植物で緑がたくさんあるけれど 緑の色素を持っていない
いったん藍染をしてから「きはだ」という黄色の色素を持っている樹木
それを使って(藍色)に黄色を染め重ねて緑にする
(食物の緑は)葉緑素で形成されている 生命を断つと緑は消えてしまう 吉岡
生きているだけの色なんですね 小川
「黄色重ねて」というところが気になる 小川
日本の色の名前はたくさんある その中で「黄蘗」を使っている
分かりやすくするため「黄色」にしたと思う
染色家らしく表現にしては?
添削
藍染に黄蘗(きはだ)かさねて更衣
「黄蘗」は色辞典に出ている 色の名前
「藍染に黄蘗かさねて」と遠慮しなくていい
来週のゲストに徳島県立城東高等学校の先輩である大高翔さまです。
俄然楽しみです。徳島県立文学書道館で講演を拝聴して以来です。
■NHK短歌 題「表」
選者:大辻隆弘 ゲスト:永井沙耶子 司会:尾崎世界観
年間テーマ「伝統的なことばを生かして」
今月のポイント「文語の小気味よさ」
しゃべり言葉はダラダラしている
文語 今朝雨降りぬ歩みが困った
短歌は31文字なので長々かけない
文語の小気味よさは短歌を作る時に武器になる
あの夏数かぎりなきそしてまたたつた一つの表情をせよ
小野茂樹「羊雲離散」
あの夏の数かぎりないそしてまたたつた一つの表情をしろ
祈りみたいなものがストレートに胸に入ってくる
奥深くの芯の強さみたいなものが文語から出てくる
・入選九首 題「表」
五段下に君を探した中華屋の廊下に貼ってあるシフト表
大津穂波
うつくしいスイカざくざく切りながら表現の自由とは何者か
青木日向子
二席 表には樫の木裏には花梨の木でも豊かではなかったわが家
笠原誠
私 座礁したクジラの横で夜の海を見るようだったピアノ発表会
麻倉遥
三席 私 夕方の光を浴びた本棚がある日わたしの年表になる
塚柊那(しゅうな)
一席 耳切りて包帯姿の自画像にゴッホは何を表したか
白浜尚子
表札のあなたはとうに色褪せていたのだ これで黄昏になる
赤城条治
煮出されし繭のにおいは家内(やぬち)から沁み出し表へほそく流るる
関口京子
涙湖(るいこ)より溢るる父の無念さを指の表でそっと拭きやる
山口範子
・短歌魔改造ラボ
背表紙が色褪せていゆくようにして母が言葉を忘れる夕べ
住吉和歌子
背表紙が色褪せていゆく少しづつ母が言葉を失ふ夕べ
(公式文書やビジネス文書、学術論文などでは「少しずつ」を使用することが推奨。
ただし、「少しづつ」が完全な誤りというわけではない。)
原作でと比喩の歌になっている「背表紙が色褪せてゆく」
という時間の経過を表す情景があるので実景にしてみてはどうか?
2句切れの歌にする
「少しづつ」がいいなと思った 尾崎
「色褪せていゆく少しづつ」「少しづつ母が言葉を失ふ」
二つを結びつける役割を果たしている
「忘れる」という言葉が強い 永井沙耶子
「少しづつ失ふ」とすることで柔らかさが出る
消えていない 少しずつ失われているけど消えていない
・永井さんが歴史時代小説を書く時に言葉遣いで気をつけている点は?
永井
感情を乗せて読んでほしい部分は今と同じ言葉を使う
注目してほしい部分はわざと文語っぽい言葉にする
大辻
程よい形で文語が入っていることで心に響く
「木挽町のあだ討ち」語りの豊かさに惹きつけられた
最初のフレーズでその人物像が立ち上がってくる
「はたらけど はたらけど猶わが生活(くらし)楽にならざりぢつと手を見る
石川啄木」
その人がポツリとつぶやいた独り言が短歌
永井
(短歌は)言葉をカッティングしていく
大辻
短歌は逆に強みもあって凄く余白が多い
(情景を)想像する それを自分の体験と照らし合わせる
永井
短歌は共感してもらえる幅が広い
・いちご摘み
ゆるめれば観覧車めく花束よ見ようとすると窓はあらわる
霧島あきら
⇩
夕闇に木々は果実をゆるめゆきその音楽に翼はふるふ
金田光世(好きな歌人 永井陽子)
現在スリランカでお住まいになられています
第69回現代歌人協会賞を受賞
根をなくした。そして歩けるやうになり、何時となく人知れずたなびく
「遠浅の空」青磁社
もし短歌に出会っていなければ 見ることができなかったり感じたり
表現することができなかったようなものを 詰め込むことが
できたんじゃないかと思っています
スリランカには鳥が物凄くたくさんいる島なんですけれども
動物が果物や木々を思う気持ちということを表現したいなと思って
果物が出している匂いとかエネルギーとか得体の知れないもの
っていうのが 人間が捉えているもので何か表現するとすれば
音楽に近いかもしれない
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