猿飼(さるかい)集落転げ落ちそな傾きの
傾度四十度天空の郷の秋
世界農業遺産を生きる二人の秋
秋空やサラエですくい土あげん
秋畑へコエグロ敷いて砂防せり
■NHK俳句 兼題「風」
選者:岸本尚毅 レギュラー:内田紅甘(ぐあま) 司会:柴田英嗣
年間テーマ「描写の工夫」
・俳句のタネを育てましょう!
風吹いて蝉の翅(はね)だけ飛び去って 紅甘
蝉:夏の季語
添削
秋の風蝉の翅だけ飛び去って
秋風にころがる翅は蝉の翅
秋風やころがる翅は蝉の翅
描写のポイント
目に見えない風を「蝉の翅」を使い表現
季語「秋の風」と取り合わせ句全体に秋の趣を出す
秋風や袂(たもと)の玉はナフタリン 川端茅舎
ナフタリン:防虫剤の原料 独特の匂いがある
「た」リズムが面白い 風を嗅覚で表現した名句
降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男
第一主役 第二主役
・今週の特選句 兼題「風」
日の丸に風を見てゐる原爆忌 寺田秋悦
(作者の存在感がよく出ている)
蘭鋳(らんちゅう)の鰭(ひれ)が風ある如く揺れ 中田昇
(一物仕立て 「ある」の使い方が巧い)
秋風に閉めし障子のふるへかな 宮本幸子
崩るるは雲の鞍部(あんぶ)や秋の風 東沖和季(ひがしおきわき)
秋風に「御飯炊いて」と母の声 湯浅さち
(解釈の幅が広い句 無限の自由度を与えている)
人形として人をみて風の盆 曽根新五郎
(風の盆:富山県八尾町で毎年行われる盆踊り)
「見どころあり!」の一句
海の家ありしところに秋の風 野分のわ
推敲(動きを出すには「を」にした方が良い)
海の家ありしところを秋の風
春の月ありしところに梅雨の月 高野素十
野分のわさま!おめでとうございます!
NHK俳句と短歌に選ばれるだなんて…。
素晴らしい!拍手喝采!
特選三席発表!
一席 よもすがら秋風を聞く妻の留守 山河重弥
(秋夜(よもすがら)秋風聞くや裏の山 曾良
元禄時代の俳句 奥の細道を途中まで歩いた人 河合曾良 松尾芭蕉の弟子
弟子と師匠の関係を夫と妻の関係に置き換えた句)
二席 トンネルの打音検査や秋の風 天野ひろ子
三席 水始めて氷る痛風をさまらず 秋元哲(さとし)
(水始めて氷る:七十二侯 1年72の期間に分け季節の移ろいを表す方式)
・はみだせ!教室俳句
和歌山県智辯学園和歌山高校 浅野剛史先生
ポイント
季語として捉え直すことでイメージが広がる
下敷きの真ん中折れる若緑 橋本尚子
理科も俳句も好きになる!
・紅甘のつぶやき
一文字でまったく違う句になる!
■NHK短歌 テーマ「家事」
選者:荻原裕幸 ゲスト:コジヤジコ 司会:ヒコロヒー
年間のテーマ「短歌は時代の波に乗って」
今月のテーマ「ことば遊びをしてみよう」
「やる気ない」言われ閉じいる短歌の書あんたに見せよかわしの本棚
ヒコロヒー
コジヤジコ
中身、海かな。
抱きつくなり、すすり泣く月だ。
なら軽くがんばるか、光る番が来るからな。
牛乳パックしろきくらがりきりひらく耳はさびしき音に悦ぶ
荻原裕幸
・入選九首 テーマ「家事」
味噌汁を一人分だけ作るのは難しいから結婚しましょう
殿内佳丸
一席 私 蕗の薹の土の苦みを揚げてゆく油が春の音を呼ぶまで
古関聰(あきら)
父さんの作るカレーは丁寧でワールドカップくらいの頻度
富尾大地
柿の木を育てるやうにアイロンのありかを何気に夫(つま)に伝へる
青木鈴子
三席 アレクサ、ねぇ?今日の天気は?ニュースある?ラッキーカラーは?好きって言って?
成見薫
もし今日が地球最後の日としても作っていたい我が家の夕餉(ゆうげ)を
角谷陽子
二席 パンパンと悪夢追い出しお日様を乗せた布団をふんわりと敷く
西村真千子
生きている限り家事から逃れられぬ峰不二子でも洗濯をする
立田渓(けい)
朝刊の見出しを犬に語りかける無駄よと笑われつつ十五年
野分のわ
・荻原流 詠み方指南 ことばあそびをしてみよう
理屈で説明しようと思っても 意味のある繋がりで表現しようと思っても
難しい時がある オノマトペとか「ことばあそび」を入れて
表現の中で生かしてみる
んんんんん何もかもんんんんんんんもうなんもかもんんんんんんん
荻原裕幸
意味を引っ張ってこない「ん」が並んでいても何も引っ張ってこない
何も出てこない絶望感が出せる
短歌づくりのコツ
伝えたい思いを表す
音や響きを自分ならではの「ことば」にして詠んでみよう
コジヤジコさんの家事短歌
食洗器のラストピースが足りなくてこんな時間にお茶しませんか
コジヤジコ
回文の作り方
ひっくりかえして くっつけて ひともじたして できあがり
イカ カイ 真ん中に一文字入れて文章にならないか
一文字入れてそれがどういう世界なのか想像することで
回文の基本的な部分はできる
イカあカイ⇨イカあ あカイ この間に何を入れるか?
しを入れると イカ足赤い げを入れると イカ揚げ赤い
その一文字で世界がガラッと変わっていく
イカすカイ? 初めに作ろうとしたものからだんだん変わっていく
自分なりの着地点までいった時にこれで作品にしようと決めている
短歌で嘘はついてもいいのか?
自分が感じたり思ったりしていないことを書くという
意味での嘘だと噓っぽさが作品に滲みでてきてしまう
嘘はつかない方が表現としては良くなる
・ことばのバトン
夏の夜にブロッコリーを蒸し上げて
上坂あゆ美(歌人)
⇩
フェスの熱気は醒めないままで
福岡県立八女高校 文芸部
熊谷涼那
アルバムのばあちゃん見つめるじいちゃんの目は初恋のあの日のように
紫村菜々子
冷静な我の理性はオムライス恋に落とせるものなら落とせ
谷田礼 橋村美南
アーティストの音楽に酔いしれて熱気を感じるような
フェスにもこのあつさと同じ雰囲気を感じとって
行ったことはないんですけどいつかは行きたい
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