2025年6月30日月曜日

100分de名著❝侍女の物語❞❝誓願❞④

夏の風歴史刻んだ石段を

夏の山可憐な色を寄せあいて

降り積もる歴史の中の暑き日よ

禅寺や谷(やつ)に佇み育まん(無季句)

青き峰鳥水風の反響よ

 

100de名著 アトウッド❝侍女の物語❞❝誓願❞④闘う女たち

鴻巣友季子 伊集院光 阿部みちこ

 

それからまた彼女の声がした あの上を見て 明かりがあそこに見えるでしょう

 

カナダの高校生デイジー登場!

両親(メラニーとニール)の営む古着屋には店員以外の人間が出入りする

パールガールズ 真珠女子 

ギレアデが組織した外国で伝道・スパイ・誘拐を行なう女性たち

幼子ニコール

逃亡した侍女がカナダに連れ出した娘

 

わたしは本当の年はともかく、十六歳の誕生日をむかえるところだった。

運転免許をとるのを楽しみにしていた。

 

「爆発があった。自動車爆弾で。メラニーの車だった。

 彼女とニール、ふたりとも車の中にいた」

反ギレアデの地下組織 メーデー イライジャ

 

「きみの母親と〈メーデー〉がきみを逃亡させたんだ。命かえでね。

きみは〈メーデー〉にかくまわれた。捜査には多くの人がかかわり、

メディアも大々的なキャンペーンを展開した」

「まるで〈幼子ニコール〉だね」わたしは言った。

イライジャはまた視線を床に落とした。

それから、わたしをまっすぐ見据えて言った。

「きみが〈幼子ニコール〉なんだ」

その“情報源”とやらが 唯一認める人間がわたしだって言うなら、

やるしかない。

「アルドゥア・ホールへようこそ、ジェイド。

あなたがくだした決断に神の祝福がありますように。

〈主の目〉のもとに。ペル・アルドゥナ・クム・エストルス」

みんなが一斉に唱えた。「〈高価な真珠〉のもとへようこそ。

ペル・アルドゥナ・クム・エストルス、アーメン」

わたし、こんなところで なにしてるんだろう?心のなかでそう思った。

不気味すぎるよ、ここ。

 

「不気味すぎる」ギレアデ潜入!

ギレアデのばかばかしさ 欺瞞が暴かれていく

外からの視点でディストピアを笑い虚飾(きょしょく)を暴く

「誓願」は「見えてくる」物語

 

真珠を獲りこんで 真珠を獲りこんで

そうして歓びが訪れましょう 真珠を獲りこんで

「旧約聖書」の「詩編」に由来するゴシペルソングのもじり

 

模造真珠のネックレスをして模造パスポートで外国に行き

まがいものの聖書を読んで信仰 何もかもが偽造 

ギレアデが滑稽なまがいものであることが

徐々に暴かれるのが「誓願」のスリル

 

その誕生日の当日に、自分がにせものだったと知ったんです。

にせものっていうか、なんちゃってマジシャンっていうか。

見せかけのアンティーク品みたいに、見せかけの存在。

 

欺瞞に満ちたギレアデ 「偽物」という言葉が多数登場

Fake(にせもの) imitation(模倣) 

repleca(複製品) forgery(偽造) fraud(詐欺)

作者からのメタメッセージ

 

小母見習い アグネスとベッカ

 

わたしたちのいた棟にはCの字と、アルドゥア・ホールのモットーが

記されていた。ペル・アルドゥナ・クム・エストルス。

「これはね、“女性の生殖周期によるお産の苦しみを経て”みたいな意味」

ベッカが言った。

「それだけ?」「ラテン語なんだよ。ラテン語の方が意味がありそうだよね」

私は尋ねた。「らてんごってなに?」すごく古い言語で、いまはだれも

話していないんだけど、モットーはラテン語で書くんだと、ベッカは答えた。

たとえば、むかし〈壁〉の内部では、

「ヴェリタス」が万象のモットーだったという。

 

ヴェリタス(ラテン語で真理の意味)

 

わたしだけの本棚には、下位の小母には手が出せない

禁書の私的セレクションが並べられている。

シャーロット・ブロンテ「ジェイン・エア」

レフ・トルストイ「アンナ・カレーニナ」

トマス・ハーディ「ダーバヴィル家のテス」

ジョン・ミルトン「失楽園」

アリス・マンロー「娘たちと女たちの生活」

〈誓願者〉たちの間に流出したら、どんな道徳的パニックが起きるだろう!

 

「フランケンシュタイン」や「ピノキオ」の作中にも実存する書名が登場する

 

ギレアデで恋愛小説が禁書

 

アリス・マンロー(19312024)「娘たちと女たちの生活」

カナダの小説家 2013年ノーベル文学賞を受賞

 

ヴェリタス(真理)を隠すギレアデ

真理が我々を自由にする 日本の国立国会図書館の理念

かつてのモットー「ヴェリタス」は削れ取られ上からペンキが塗られえいる

ギレアデが真理を隠蔽していることを言語の面からも象徴的に表現

 

3人の語り手が一堂に会する

 

未開人流のお祈りのスタイルなんだろうか❓

「ワークアウトだよ」ジェイド

「まんいち男に攻撃されたときのため。目玉に親指突っこむとか、

タマに膝蹴り食らわすとか、あと、心臓止めるパンチのやり方とか、

知っとく必要があるよ」

「女性は男性を殴りません」ベッカは言った。

「だれも殴りません。〈集団処置〉など、法で定められた場合を除いて」

「はっ、それは都合がいいね!」ジェイドが言った。

「じゃ、男には好き法大やらせろってこと?」

「そもそも男性をその気にさせてはいけないのです」ベッカは言った。

「その結果何が起きても、半分は女性の責任です」

ジェイドはわたしとベッカの顔を交互に見た。

「それ、被害者非難ってやつじゃない?まじで?」と、」彼女は言った。

 

被害者加害 二次加害

被害者が被害を訴えた際に周囲の言動や対応によって傷つけられること

 

新しい視点が異国育ちのデイジーから持ち込まれたことが重要

 

アトウッドがカナダ人だから描けたアメリカ

機密文書の内容

リディア小母が記録してきたギレアデの司令官たちの汚職や性加害

 

リディアの上司 ジャド司令官

幼い妻を迎えては殺して新たな妻を迎えることを繰り返していた

重要な役割を果たすのがベッカというアグネスの親友

 

ベッカ名義のパスポートでデイジーはカナダへ出国

 

大きな岩をいくつもよじ登り、こけたり滑ったりしながら、

岩間の海水の溜まりをじゃぶじゃぶ歩いて渡った。

ようやくここまでたどり着いたっていうのに、このままばったり

倒れて頭をかち割るなんて。そのとき、ベッカの声が聞こえた。

そんなに遠くないから。ベッカはゴムボートには乗っていなかった

はずだけど、なぜか海岸ではわたしたちと一緒にいた。暗すぎて

姿までは見えなかったけど、それからまた彼女の声がした。

あの上を見て。明かりがあそこに見えるでしょう。

 

サードマン現象

登山や災害などで窮地に陥った人が実際にはいない

第三者に助けられたと感じる心理現象

 

シスターフッド

聖書を書き換える物語

何に似てるかというと西洋の中世の教会

教会の理不尽な支配から脱するために自分たちの言葉に聖書を翻訳

自らの力で原典(テクスト)を読んで

考えるところから中世の宗教改革は始まった

「読む・書く」事が支配への闘いの糧になる

 

「誓願」巻末の議事録
2197
年に行われた国際歴史学会のシンポジウムの記録

公開された機密文書によりギレアデが滅亡した経緯が明かされる

 

アトウッドはこのスタイルをジュージ・オーウェルの「一九八四年」から継承

継承されるディストピア小説の形式

 

ナオミ・オルダーマン「パワー」(2016)

女性が体内から強力な電流を発して男性を操る男女逆転社会を描く

 

ありがとうございます、クレスント・ムーン教授。

いや、学長殿(マダム・プレジデント)とお呼びしなければなりませんね。

ご就任おめでとうございます。

ギレアデだったら起りえないことでした。(拍手)

女性陣が恐るべく勢いで支配的立場を簒奪(さんだつ)するこのご時世ですから、

お手柔らかにお願いいたしますよ。

ギレアデ研究の第十三回シンポジウムの議事録

 

女性を立てるかに見せていじる

設定は2197年「そんなころになっても地位のある女性をいじってるんですか?」

アトウッドの風刺であり警告

 

アメリカの一部の公共図書館に対して「侍女の物語」などを

禁書(閲覧不可)にする運動が起きている

寓話が寓話のうちに詠むべき

思考の力を諦めない 手放さないということ

 

私感

講師の声がひっくり返ってものすごく聞き取りづらかったです。

普通に喋って欲しかった。 

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