2025年12月21日日曜日

スイッチインタビュー 佐野史郎&桜木紫乃

すっぴんにマスク施し冬の朝

息白し口を尖らせ肩すぼめ

冬の夢百まで生きて何とする

石積みて神山校の冬を勝つ

伝統を繋ぎ繋ぎて冬勝利

 

■スイッチインタビュー

佐野史郎 桜木紫乃(直木賞作家)

 

「父の人生劇場」

「長男なんて言う言葉に一生を振り回されて生きてるやつは気の毒なことだなあ」

その一行を書くために800枚を費やすんです もと取れないですね 桜木

正直に自分と向き合ってお父さんに向けて語りかけた言葉ですよね 佐野

 

桜木さんの表現はフィクションの中で“うそですよ”とと言ってるわけですが

そこは自然なわけじゃないですか 佐野

そう見えるように文章の芸ですよね 桜木

僕の仕事は芸でやることではなく 芸を見せてはだめ 

“演じていない”ができない 明後日の現場もカメラの前で

演じなきゃいけないわけですよ どうしたらよいですかね? 佐野

でも佐野さんなんだから その悩みもないと佐野史郎は

出来上がらないのであれば ずっと悩んでくださいという感じ 桜木

自分の中に蓄積したものを使って物語の中の人が私を使って

表現してくれている事なので 桜木

この家族背景ももちろん 家族環境とか家じまいとか前にしていることを

まるごと受け入れたうえで 佐野

自分に起こることは常に面白いような気がしています 自分にもし

強みがあるとしたら 5年6年デビューできなくてもやり続けること 桜木

時間がかかるのは当たり前のこと前だと思ってるから 今日書いたものが

あした評価されるなんてないですから 桜木

父がたぶん私のことを認めてくれるというか小説を書く人間なんだ

コイツは職人なんだと認めてくれた日を覚えていて

直木賞の授賞式だった 桜木

2013年大49回直木賞受賞 「ホテルローヤル」

もう自分の娘じゃないと思ったみたい それは母も同じだったと思います

あの日から一回も向こうから電話がかかってくることはない

親の電話で心が揺れ動いてはいけない 仕事に差し支えるからと 桜木

ものすごく心が通っているということじゃないですか 佐野

()のことをもしかしたら理解したいしできるかもしれない 桜木

 

猛男()は現在87歳 現在ラブホテルのあった場所で桜木の母と

二人で暮らしている ナレーション

 

母が認知症で私のこともよく覚えていないし5分前のことも全然わからない

昔苦労させたからって父がずっと面倒を見ているんです

「お前たちは嫁に行った人間なんだから俺たちのやることに口出さないでくれ」

好きに生きてきた男のセリフだなと 口を出さないで黙って見てるのが

最後の親孝行かなと 責任を取っているつもりなんだと思います

自分の落とし前をつけてる だから嫌いにはならないでね 私も 桜木

いいなあ 娘にそんなことを言われてみたい 佐野

嫌いじゃないですよ そんな人生もあることを教えてくれた1番近い人 桜木

 

「家族じまい」桜木紫乃著

 

「家族じまい」は“お終まい”ではない 最近たどりついたのが

”お片づけ“という言葉で 人それぞれ気持ちのいい形に

持っていくことだと思う 桜木

同感です 佐野

”お片づけ“という言葉に行きついてよかった 

生きやすくする 暮らしやすくするという点で 

”片づける“って身軽になってまた歩いていく

2025年12月20日土曜日

あの本、読みました?和田竜

寝ていたいずっとず~っと冬の朝

煙草手にスピード違反新参者

落ち着きを取り戻さぬか冬の暮

値を下げた甘くとろける白菜よ

冬星座何にもない日おめでとう

 

■あの本、読みました?大ヒット映画の原作・歴史小説特集「のぼうの城」和田竜の新作

和田竜 永井沙耶子 鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

 

和田竜デビュー作 本屋大賞2(2009)「のぼうの城」

12年ぶりの最新作「最後の一色」

その人物をずっと追っていきたくなる

人物を好きなるように書く ということに気をつけている

 

「超高速!参勤交代」土橋章宏

城戸賞(日本映画の未来を担うシナリオライターを発掘・育成する脚本賞)

を受賞した人

 

「木挽町のあだ討ち」永井紗耶子

2026227日 劇場公開 柄本佑 渡辺謙出演

 

吉澤ほたる:芝居小屋の衣装係りで、女形としても舞台に立つ。

幼い頃、浅間山噴火で孤児となり、火葬場の労働者の米吉に救われ育てられる。

 

「木挽町のあだ討ち」の一文 永井紗耶子著/新潮文庫

私はこれまでの人生で、人のことを羨んだり哀れんだりしたことがついぞない。

それは端から手前が何にも持っちゃいなかったから。

欲しがるだけ空しいし、裏切られるのも辛いばかりだ。

でも、もしもっと豊かな家に生まれ落ちていたらって、

思い描いたことがないわけじゃない。

だから手前とまるで違う世界にいる武者や姫君が出てくる芝居を、

面白いって思うわけだからね。

しかしこうして綺麗な若衆の菊之助さんを見ているうちに、ああ、

何処に生まれ落ちたって苦しいことはあるんだなあって当たり前のことに

気づかされた。そういう意味で、人ってのは等しいもんさ。

「私を育てた隠亡の爺さんが言っていたよ。どんな奴でも、

いずれ焼かれて骨になるって。武士だからとか男だからって、

要らない気負いは捨てていい。どうせいずれは骨になるって思うと、

気が楽になることもある」

 

人物像と仇討ちで描く江戸時代の背景

戦国と江戸 武士の違い

儒教:家族や社会の秩序を大切にし礼儀と道徳を説いた古代中国の理念

儒教を学んでない時代と学んだ時代との違いがくっきりと表れている

 

和田竜が鈴木保奈美に伝えたかったこと…。

「畳の上で往生するのは虫がいいというものですよ」

この鈴木保奈美の台詞の表現がこの映画を浮揚させた

 

シナリオと小説の創作論 

映画監督を目指していた過去

 

「最後の一色」()」の一文 和田竜著/小学館刊

「一色五郎が来るぞ」康之が叫んだとき、

一色家の騎馬武者が左右に分かれ、例の魔物が再び姿を現した。

迫りくる一色五郎は、疾駆する馬上で手綱を口にくわえるや、

長い腕を腰の前で交差させた。異風にも太刀を左右に差している。

交差した両の手で左右の柄をつかむなり、頭上で大きく半円を

描きながら、ゆっくりと日本の太刀を抜いた。「二刀か」

(中略)

「えいやあっ」大喝とともに五郎が二刀を切り上げた。

まずは左手の太刀が騎馬武者の伸び切った両腕を断ち、

間髪入れず右手の太刀が鎧ごと胴を断った。この間、一瞬である。

五郎は斬り上げると同時に上体を立て直している。

下半身だけとなった敵の影武者とすれ違ったときには、

巨馬の背に五郎の瘦せた上体が直立していた。「見たか」

五郎は馬も止めずに豪語した。次の瞬間はもう、槍衾(やりぶすま)を敷いた

長岡家の騎馬武者たちの間合いに入らんとしている。

 

執筆のきっかけ 海音寺潮五郎「一色崩れ」

登場人物の魅力

 

長岡(細川)忠興:父である藤孝とともに丹後の支配を目指し、一色五郎と戦う猛将

稲富伊賀:一色家の家臣で鉄砲の名手

 

史実から創作する物語

 

「では何ゆえ」忠興は問いを重ねる。すると藤孝は、

「あの男の持つ、計り知れぬ器量がゆえじゃ」そうぽつりと答えた。

瞬間、忠興は総身にどっと汗をかいた。

それと同時に、何か得体の知れぬ恐怖に襲われている。

「器量―」と、父の答えを繰り返した。「左様、器量じゃ」

藤孝は暗くうなずき、断言する。

「その尋常ならぬ器量の大きさゆえ、長岡家は一色五郎に滅ぼされる」

 

人がもつ「器量」とは…

 

伊也…忠興の妹

 

映画化は?全くないとか…。

 

最新作「秘仏の扉」永井沙耶子著/文藝春秋

200年閉ざされていた法隆寺夢殿・救世観音像の扉が激動の明治開国期に、

フェノロサや岡倉天心によって開かれる。仏罰が下ると言われた秘仏開帳に

関わった者たちの歴史群像劇。

2025年12月19日金曜日

白洲次郎&正子

篠田桃紅を詠む

冬銀河玄(げん)は天地を想像す

偽りなく生きて来ました冬の暮

霜柱まがいものではないつもり

その日まで成し遂げようと冬を咲く

春を待ち百七歳を閉じ行かん

 

■白洲次郎&正子

・旧白洲邸武相荘 

無駄のある家

綿密な計画を立てて設計してみたところで、

住んでみれば何かと不自由なことが出てくる。

さりとてあまり便利にぬけめなく作りすぎても、

人間が建築に左右されることになり、

生まれつきだらしない私は、

そういう窮屈な生活が嫌いなのである。

白洲正子

 

https://www.youtube.com/watch?v=7uYhx99pSF8 より

 

・自分の信念を貫くということ - 白洲次郎|名言|格言|哲学|人生の知恵|

https://www.youtube.com/watch?v=QSZN27KCr1I

 

あなたには、何があっても曲げられない信念がありますか❓

人から嫌われても、損をしても、それでも貫き通したいと思える「何か」が…

現代社会では、空気を読むことが美徳とされ、

波風を立てないことが賢明とされています

でも、それって本当に正しいのでしょうか

今から80年ほど前、戦後の混乱期の日本にまるで風のように現れて、

自分の信念を貫き通した一人の男性がいました。

その人の名前は、白洲次郎

彼はこんな言葉を残しています

「我々は戦争に負けたが、奴隷になったのではない」

占領下の日本で、アメリカ軍に対してこんなことを言える

日本人が、果たして他にいたでしょうか

今日は、白洲次郎の生き方を通して、信念とは何か、そして、

それを貫くということの美しさについて、

一緒に考えていきたいと思います

あなたも、自分だけの信念を見つけたくなっているはずです

1章:プリンシプルという生き方

白洲次郎が最も大切にしていた言葉 それは「プリンシプル」でした

彼はこう言っています 

「プリンシプルとは何と訳したらよいか知らない。原則とでもいうのか」

この言葉に、彼の人となりが表れているように思います

西洋の概念でありながら、日本語では完全には表現しきれていない何か

それほど深い意味を持つ言葉だと、彼は感じていたのでしょう

プリンシプルとは、単なるルールや決まりごとではありません

それは、自分の心の奥底にある、譲れない価値観のこと

どんな状況になっても、それだけは曲げてはいけないと思える

魂の核となる部分なのです

彼にとって、それは何だったのでしょう

彼が生涯をかけて貫いたプリンシプルとは…

それは「人として正しいことをする」という、

とてもシンプルで、でもとても難しいことでした

彼はこのように語っています 「僕は人からアカデミックな、

プリミティブな正義感をふりまわされるのは困る、とよくいわれる。

しかし僕にはそれが尊いものだと思っている。

他人には幼稚なものかもしれんが、これだけは死ぬまで捨てない」

周りの人たちからは「幼稚」「理想論」と言われても、

彼は自分の正義感を手放しませんでした

現代を生きる私たちはどうでしょうか 「大人になる」ということを、

理想を諦めることだと勘違いしていませんか

 

2章:従順ならざる唯一の日本人

1945年、日本は戦争に敗れ、

アメリカを中心とした連合軍に占領されました。

多くの日本人が、占領軍に対して委縮し、言われるがままに従っていた時代

そんな中で、白洲次郎だけは違っていました 彼は占領軍のGHQから、

「従順ならざる唯一の日本人」と呼ばれていたそうです

これは、一種の恐れと敬意が込められた呼び方でした

なぜなら、どんな圧力をかけても、彼だけは決して屈服しなかったからです

ある時、アメリカ軍の高官が彼の英語を褒めて、

「君は日本人なのに英語が上手だね」と言いました

普通なら「ありがとうございます」と答えるところですが、彼は違いました

「あなたの英語も、もっと練習したら上達しますよ」

なんと、逆に相手の英語力を評価してみせたのです

これは、単なる皮肉ではありません 「私はあなたと対等だ」

というメッセージだったのです 戦争に負けた国の国民として

卑屈になること拒否した それが彼の信念でした

「我々は戦争に負けたが、奴隷になったのではない」

この言葉の重みを、私たちは理解できるでしょうか

 

3章:嫌われる勇気

白洲次郎は、こんなことも言っています

「人に好かれようと思って仕事をするな。むしろ、半分の人には

嫌われるように、積極的に努力しないと良い仕事は出来ない」

これは、現代の私たちにとって、とても耳の痛い言葉かもしれません

SNSの評価を気にして、みんなに好かれるような投稿ばかりしていませんか

職場でも、学校でも、誰からも嫌われないように、当たり障りのないことしか

言わなくなっていませんか でも、彼は真逆のことを言っています

「半分の人に嫌われるくらいでちょうどいい」なぜなら、

本当の価値のある仕事、本当に正しいことをしようとすれば、

必ず反対する人が出てくるからです 全員に好かれるということは、

誰の心も動かしていないということ 誰の現状も変えていないと

いうことなのです 彼はこうも言います

「リーダーたるべき人間は好かれたら終わり。

七割の人に煙たがられなければ本物ではない」

これほど明確に「嫌われる勇気」について語った人を、私は知りません

現代社会では、みんなで仲良く、みんなで同じ方向を向くことが

美しいとされています でも、それって本当に正しいのでしょうか

時には誰かが、みんなと違う意見を言わなければ、社会は前に

進まないのではないでしょうか 

 

4章:正義感という名の武器

白洲次郎が持っていたもの それは、彼自身が「幼稚」と言った

正義感でした でも、この正義感こそが、彼の最大の武器だったのです

戦後の混乱期、多くの人が自分の利益ばかりを考えていました

どうすれば得をするか、どうすれば損をしないか 

そんなことばかり考えていた時代 そんな中で、彼だけは違いました

「何が正しいか」を常に考えていたのです 貿易庁長官という要職に

就いた時も、彼は汚職の根絶に力を注ぎました 「白洲三百人力」と

呼ばれるほどの辣腕ぶりで、腐敗した組織を改革していきました

でも、これは決して楽な道ではありません 既得権益を持つ人たちからは、

激しい反発を受けました 陰口を叩かれ、足を引っ張られ、

時には命の危険すら感じることもあったでしょう それでも、

彼は自分の正義感を曲げませんでした 「自分の良心はきれいだと

思っているから、人が何言おうと平気なんだ」この言葉に、彼の強さの

秘密があります 他人の評価ではなく、自分の良心に従って生きる

それが、彼の信念だったのです 現代の私たちはどうでしょうか

自分の良心に、胸を張れるような生き方をしているでしょうか

 

5章:孤独という代償

信念を貫くということは時として孤独を意味します

白洲次郎も、その孤独を味わった一人でした。

彼は晩年、こんなことを語っています

「占領下の日本で、GHQに抵抗らしい抵抗をした日本人がいたとすれば、

ただ二人。一人は吉田茂であり、もう一人はこのぼくだ。吉田さんは、

そのことが国民の人気を得るところとなりずっと表街道を歩いたが、

もう一人のぼくは別に国民から認められることもなく、こうして

安隠な生活を送っている」これは、彼の心の奥底にあった寂しさを

表した言葉かもしれません 正しいことをしているという確信はある

でも、それが周りの人たちに理解されない 評価されない、

感謝されない そんな孤独感を、彼は感じていたのかもしれません

でも、彼は続けてこう言います 「けれども一人くらいはこういう

人間がいてもいいと思い、別にそのことで不平不満を感じた事もないし、

いまさら感ずる年でもないと思っている」これが本当の強さなのでしょう

理解されなくても、評価されなくても、自分が正しいと信じる道を

歩き続ける 現代社会では、承認欲求という言葉がよく使われます

誰かに認められたい、評価されたい そんな気持ちは、人間として

自然なことです でも、それに振り回されてしまっては、本当に

大切なものを見失ってしまいます 白洲次郎のように、他人の評価に

左右されない強い心 それを育てることができれば、どんな困難にも

立ち向かえるのではないでしょうか 

 

6章:死ぬまで捨てないもの

白洲次郎は、83歳でこの世を去りました

彼が残した遺言は、たった二行「葬式無用、戒名不要」

最後の最後まで、自分のスタイルを貫いたのです

形式や習慣に縛られることなく、自分らしく生き、自分らしく逝く

それが彼の美学でした そして彼が生涯をかけて追及したプリンシプル

それは、決して時代遅れのものではありません むしろ今の時代

だからこそ、私たちが学ぶべきものがあるのではないでしょうか

「これだけは死ぬまで捨てない」彼がそういった正義感 それは

どんなに小さなものでも構いません 困っている人がいたら

手を差し伸べる 嘘をつかない 約束は守る 弱い者いじめは許さない

そんな当たり前のことかもしれません でもその当たり前のことを、

どんな状況でも貫き通せるかどうか それが、その人の品格を決めるのです

彼はこんなことも言っています 「長く大事に持っているものは、

人に貰ったものより、自分自身の苦心の結晶に限る」他人から

与えられた価値観ではなく、自分で考え抜いて見つけた信念こそが、

本当に価値のあるものなのです それでは今日の話をまとめていきます

 

エンディング

白洲次郎の生き方を通して、信念を持つことの意味について考えてきました

彼の言葉をもう一度、心に刻んでみてください

「僕の幼稚な正義感にさわるものは、みんなフッとばしてしまう」

何て力強い言葉でしょうか 現代社会は複雑で、矛盾に満ちています

正解のない問題が山積みで、

どう生きればいいのか わからなくなることもあります

でも、そんな時だからこそ、自分だけの信念が必要なのです

それは人生の羅針盤となり、迷った時の道しるべとなってくれます

もしかしたらその信念のために、誰かに嫌われることもあるかもしれません

孤独を感じることもあるかもしれません でも、それでいいのです

いえ、それがいいのです なぜなら、そうやって貫いた信念こそが、

あなたという人間の価値を決めるからです 

白洲次郎が愛した言葉、プリンシプル

プリンシプルを持って生きることは、決して簡単なことではありません

でも、その中にこそ、本当に意味での自由があるのです

あなたはどんなプリンシプルを持って生きていますか?

今日という日を、自分らしく、誇り高く歩んでいけますように…。

2025年12月18日木曜日

100分de名著 「死の瞬間」②

篠田桃紅を詠む

冬陽射しカーテン閉ざし灯をともし

なぞらない他人の人生冬の月

寒菊や凛として立つ佇まい

息白し主を纏う着物かな

冬座敷主役の主包み込む

 

100de名著 キューブラー・ロス「死の瞬間」

死にゆく人の否認と怒り

島薗進 伊集院光 阿部みちこ

 

死の受容過程の5段階

①否認 怒り 取り引き 抑鬱 受容

 

どう向き合ったらよいか 手がかりになる

 

ほとんどの人は不治の病であることを知ったとき、

はじめは「いや、私のことじゃない。

そんなことがあるはずがない」と思ったという。

誰にでも最初の訪れるのがこの否認である。

鈴木晶・訳

 

信仰治療 病院の指示に従わない 

 

彼女は横に座っていた私の手を握り、「あなたはこんなに

温かい手をしているのね。私がだんだん冷たくなって

いくときにはいっしょにいてね」と言った。

そして何かがわかったように微笑んだ。

彼女も私も、この瞬間に彼女が否認をやめたことがわかった。

 

1段階「否認」

自分を守るための心の動き

認められないということは生きたいということ

厚化粧をして容貌を若く見せて自分も錯覚する

孤立・孤独がこの本の隠れたテーマ

孤独から助けたということで死の否認が克服できた

死を迎えていくことを受け入れた

否認していたら絶対でない言葉

 

2段階「怒り」

1段階の否認を維持することができなくなると、

怒り、激情、妬み、憤慨といった感情がそれにとって代わる。(中略)

私たちの患者の一人、G博士はこう語っている。

「私と同じ立場にいる人のほとんどは他人を見て

『どうしてあの人じゃなかったのか』と言うでしょう。

 私の心にも何度かこの言葉がよぎりりました。

 あるとき、子どもの頃から知っている

 老人が道を歩いているのが見えました。八十二歳です。

 どう考えても、世の中の役に立っている人間とは思えません。(中略)

 そのとき、頭がつんとなぐられたように、その考えが浮かびましたー

 どうして私ではなくあのジョーンズじいさんではいけないのか…」

 

このような状況に置かれたときにいちばん惨めなのは、金持ち、

成功をおさめた人、支配欲のつよいVIPだろう。

自分の人生を快適にしてくれていたものを失ってしまったからだ。

私たちは死ぬときにはみな同じなのだが、O氏のような人は

それを認めることができない。最後までそれと戦い、死を人生の

最終結果として謙虚に受け止めるチャンスを逃してしまう。

彼らは拒絶と怒りを爆発させるが、それによってだれよりも

絶望的になってしまうのだ。

 

悪循環

死が近いとそういう顧慮(こりょ)が失われてしまう

 

患者は自分が忘れられていないことを確かめようとする。

声を上げて叫ぶ。要求する。不平を言い、注目を引こうとする。

おそらく究極の叫びはこうだ。

「私は生きている、そのことを忘れないでくれ。

 私の声が聞こえるはずだ。まだ死んでいないのだ」

 

私は孤独のまま世間からいないも同然にされていく 伊集院

注目を引こうとする放っておかないでくれ 忘れないでくれ 

死が近づくと途端にどっと落ちた「あなたは大事な一人の人なんですよ」

そういうメッセージを伝える 島薗

 

患者

「君は嘘をついた」(中略)

「もし私が手すりを下ろしたままにしていたら、

あなたはベッドから落ちて頭が割れていたんですよ」

 

ナースが患者に対して断固とした態度をとるのは

死に対する心の準備がスタッフの側に足りない

死に対する恐れが無意識のうちに出たしまう

ケアする側も自分を振り返る必要がある

自分の中の不安や弱さを自覚しておく 島薗

 

自分の心の奥にある恐怖や不安も直視して向け合わなければならない 阿部

 

シスターI

激痛に襲われてナースコールを押したのですが、

誰も来てくれなくて…。もし、何かがあっても、

これでは間に合わないと思ったら、とても不安になりました。

私への対応がそうなら、他の患者さんにだって同じだろうと思いまして、

それでこの何年か、ここで患者さんを見回っているんです。

孤独感

患者 話し相手は、私が見回っている患者さんやその家族の方たちだけです。

そのお陰で、かなり精神的に支えて貰っています。

気分が落ち込んでいる時や泣きたい時、私は自分の問題に

かまけるのをやめて、少しでも他のことを考えるようにします。(中略)

医師 もし、それができなくなったらどうしますか。

患者 そうしたら、だれか手を貸してくれる人が必要になります。

でも、だれも助けてくれないでしょうね…。(中略)

医師 そんなことはありません。

そういうときこそ、私たちが力になります。

患者 ええ、でも、これまでだれかに助けてもらったことなんて

ありませんでした。(泣く)

医師 これからは大丈夫です。それもこの面談の意義なんですから。

 

シスターIの怒りの原因は死の恐怖ではない。 阿部

怒りの原因になるのものは生涯の中にあった 島薗

対話で解きほぐしていくことが死を受け入れていく準備になる 島薗

信頼感 

 

WHOによる緩和ケアの定義(2002)

緩和ケアとは、生命を脅かす病に関連する問題に直面している患者と

その家族のQOLを、痛みやその他の身体的・心理社会的・

スピリチュアルな問題を早期に見出し的確に評価を行い対応することで、

苦痛を予防し和らげることを通して向上させるアプローチである。

 

スピリチュアルとは魂の次元の痛み

スピリチュアルペイン:

生きがいや生きる意味であったものをすべてを失うという痛み

どうやってスピリチュアルペインをなくしていくことができるか

答えは簡単に出てくるものではない ケアする側も

そういう問いがあることを分かっていることが大事

「その人の心の大事な部分に自分は向き合っているんだ」

こういう意識を持つことを示唆する本 島薗

2025年12月17日水曜日

髙田次郎&桜の和歌&「さんぽろりん」&「寒犬」&写楽

「ばけばけ」を詠む

女、子供を泣かしてなんぼ霜夜

適当第一迷惑第二冴ゆ

健康第一返済第二凍()

跡取りはペルーの子分❓冬の靄

(小日向文世氏)冬の朝我が腹筋は鍛えらる

 

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん

昭和の大先輩とおかしな二人

ゲストは髙田次郎氏でした。

御年93歳のパワーに圧倒されました。

藤山寛美氏、南都雄二氏のエピソードには吃驚。

司会のお二人も右往左往しておられました。

髙田次郎氏の言葉「感謝 松竹新喜劇 髙田次郎」でした。




 






■長等山園城寺(ながちさん)(三井寺)の桜を詠んだ和歌

 

さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな   

平忠度(ただのり) 「愚管抄」より

 

見せばやな志賀の辛崎麓なる長柄の山の春のけしきを   

慈円

 

蜂須賀桜は私が詠みたく存じます…。

 

■【第7回】楽しい日本語【さんぽろりん・前編】

夏井いつき俳句チャンネル

今回の楽しい日本語「さんぽろりん」

しぐるるやさんぽろりんを懐に   ローゼン千津

黒豆のさんぽろりんと煮上がりぬ   家藤正人

狐火を捕へさんぽろりんになる   夏井いつき

 

■夏井いつきのおウチde俳句

一分季語ウンチク「寒犬」

 

文字通り寒い犬 寒さの中で過ごしている犬の姿

これが「寒犬」という季語なのです

元々犬というのは最も人間の身近に

存在する動物の一つでもあります

こういう寒い中で過ごす動物の姿というのは

いろんな季語になっているんですけれど

寒い猿と書いて寒猿(かんえん)と言ったり

寒くて凍えている猫のことを「かじけ猫」というような

言い方もしたりもするんですね

そういう様々な動物の中でも犬は比較的寒さを喜んだり

気にせず駆けまわるというような性質は持っております

有名な動揺の中にも「犬は喜び庭駆けまわり」

何て言いますね

そういうイメージにベタ寄りし過ぎると ちょっと類想には

なっていくんですけれども 走る姿だけじゃなくって

寒い中でも遠吠えを上げている姿 そんな描き方もできる

「寒犬」でございます

 

NHKに物申す…。

「べらぼう」の写楽について

阿波県民としてはどう描かれるのか一年間待ちに待っていました。

あ~それがこのように設定されていたとは…。

写楽は斎藤十郎兵衛でございます。

定説をこのような形に作り替えられるとは残念でなりませぬ。



 

2025年12月16日火曜日

手塚雄二 寛永寺天井絵

寒濤(かんとう)やぶつけてこその根幹ぞ

耳元で羽音うるさき冬の蚊よ

冬の蚊や射止め真っ赤に手の染まる

冬の空力関係逆転す

冬銀河いつの間にやら高齢者

 

■日曜美術館 上野の山に龍が舞い降りた 手塚雄二 寛永寺天井絵に挑む

東叡山 寛永寺 根本中堂 奉納 天井絵「叡獄双龍」2025

阿吽の龍

 

東叡山寛永寺 寛永2(1625)創建

明治12(1879)川越喜多院の本地堂を移転

2020年天井絵の依頼を受ける手塚雄二氏

 

2021126日 寛永寺輪王殿

大下図 

手伝った卒業生 松下雅寿 永井健志 加来万周

 

20211224

依頼主 故 浦井正明

 

2022411日 寛永寺 霊殿

島尾新

天井が持っている時代がそのまま絵に登場してくる 手塚

中国・明時代の名墨 程君房製の墨(400年前の墨)

得應軒(店主 宮内由紀子)に注文

入手困難な墨を使えた喜び あの墨を使えたことが良かった 手塚

1979年東京藝術大学在学中は平山郁夫に指示する学生だった

2023613日 白土を使うという後世に残る手法を用いた

田原白土 300年前の白土を絵具にしたもの 墨は400年前のものを用いた

たとえ白土が剥落しても下から(墨絵の)龍が出てくる 墨は剥落しない

修正に欠かせない存在だったのは弟子たちだった

数時間前の龍に比べると全く違った龍になっていたことが

細かな陰影がつけられていた

202355

時間を加えてあげている

塗ったり剥いだりといった地道な作業で龍は数百年生きることとなる

隅の金や銀は伝統的な日本の美が強く意識されている

伊勢集断簡(石山切)「きく人も」伝 藤原公任筆 平安時代12世紀

↑から発想を得た そして金を蒔いた

オリジナルというのは日本の伝統的な古典的な

良いところをすくい上げて現代にそしゃくしたもの

水墨画の上に日本画がのっている 日本絵画の歴史が詰まっている 島尾

2023915

直すところがなくなったときが完成 

2025424

筆翰点睛式(ひっかんてんせいしき)

完成を待たず亡くなられた浦井正明氏の梵字をなぞる

202565

板の裏には手塚雄二の名と助手の名が入れられた

2025912

龍に最後の一筆が入れられた 目に

点睛開眼式

 

東叡山寛永寺根本中堂奉納天井絵

「叡獄双龍」2025

 

5年かけて書いた龍がこの日から生き始めました

この龍を見て何かを感じていただけたらありがたい事だと思うし

この龍が皆さまを見守っててくださってれば良いなぁと思ってます

これはご本尊に向かっての天井ですからご本尊に向かって

お参りする時に天井絵が見守ってていてくれる そう思えるような

根本中堂の天井絵であって欲しいなあと思っています 手塚

2025年12月15日月曜日

兼題「石」&テーマ「電話」

日向ぼこ型には全部心あり

無き型に型破りなし冬星座

伝統に革新のある晩三吉(おくさんきち)

型に心を持ち後世へ雪見

冬を舞う勘三郎の型と切れ

 

NHK俳句 兼題「石」

選者:岸本尚毅 レギュラー:紅甘(ぐあま) 司会:柴田英嗣

年間テーマ「描写の工夫」

 

地味な石をどういうふうに主役をはらせるか脇役で使うか

 

・俳句の種を育てましょう!

石のやうな月と思う山眠る   紅甘

山眠る:冬の季語 山笑ふ:春の季語 山滴る:夏の季語 山粧ふ:秋の午後

歴史的仮名遣い現代仮名遣いどちらかにそろえる

 

石のやうな月が出てをり山眠る

浮く石のやうなる月や山眠る

ルネ・マグリット「現実の感覚」(1963)

 

描写のポイント浮かぶ石を月に見立てる

身近な存在の「石」によって突飛な発想が受け入れやすくなる

 

描写の工夫「石を描写する」

冬ざれ石に腰かけ孤独

⇩見事な遂行

冬ざれや石に腰かけ我孤独   高浜虚子

(冬ざれ:冬の季語)

 

・今週の特選句 兼題「石」

()つる夜の石像前の待合せ   鈴木秀行

石割れば蟹の化石や秋の風   白浜尚子

木の長椅子石の丸椅子秋の暮   小栗しずゑ

石炭で栄えし町のくじら鍋   奥田誠

石段を引っ掻()く箒(ほうき)寒雀   加藤幸龍

いつも石出す子に負けて炬燵の間   村野真澄

 

・特選三席

一席 五ユーロの焼栗パリの石畳   佐藤ひろみ

二席 大根を頼みましたよ石を置く   仲谷克巳()

三席 胆嚢に石ころ三つ草の花   草夕(そうゆう)感じ

 

・はみだせ!教室俳句

愛媛県宇和島市立明倫小学校 芳谷あゆみ先生

秋高し空中ブランコ握る汗

ジェットコースターの感覚残る秋薊(あざみ)

乗り物対決はジェットコースターの勝ち!

 

・「見どころあり!」の一句

花冷えのなゐに崩るる城の石   角谷厳(すみやいわお)

なゐ:地震⇩推敲

花冷なゐに崩れし城の石

(上五は切字を用い、中七は過去を示すために過去の助動詞連体形の「し」をつける)

 

・紅甘のつぶやき

今と過去と石

 

NHK短歌 テーマ「電話」

選者:荻原裕幸 ゲスト:ikoma 司会:ヒコロヒー

年間テーマ「短歌は時代の波に乗って」

 

死ぬことも生きていくことも選べなかったただ来年の手帳を選ぶ十二月

ヒコロヒー

 

・今月のテーマ「電話」

妻に電話をしたはずなのに海鳴りの響くどこかの街に繋がる

荻原裕幸

 

・入選九首 テーマ「電話」

ママごめん悪い娘しますアパートの受話器外してお出かけします

芋田智恵子

「あいさんをお願いします」「わたしよ♡」とお母さんが出たときがある

木村英樹

いちめんのなのはないちめんのなのはなたちおうじょうのでんわぼっくす

佐藤研哉(山村慕鳥(1884-1924)詩人の本歌取り 

有名な作品の語句や趣向の一部を自分の歌に取り入れて作ること)

二席 私 君からの「牛乳無い」の留守電を消せないままですぎる10

冨尾大地

傍らの天使に語り終えたあとブルートゥースのイヤホンを置く

野村真也

私 兄なりにグレてたらしい母からの着メロがダーク・ベイダーのテーマ

いずみはる

三席 クレームの電話専用左耳今Amazonで半額セール

竹内一二(かつじ)

一席 私 すぐそこにいると気づかず電話する恋人たちに挟まれて冬

成見薫

 天国の人とお話しできる機種あれば即座に乗り換えたいが

本那榮子

 

・荻原流 読み方指南

今月の詠み方指南 本歌取りをしてみよう

本歌取り:有名な作品の言葉や情景などを自分の作品に取り入れて作ること

 

咳をしてもしなくてもリビングに人がゐて二人なのだと思ふ

荻原裕幸

咳をしても一人 尾崎放哉 

自由律俳句の本歌取り 放哉にマウントを取っている荻原先生

尾崎放哉(1885-1926)俳人 

波乱に富んだ生活の中で独自の自由律の句境をを確立した

 

ヒップホップではサンプリングという文化があって曲の一部を切り取って

ループさせたり 誰かのラップとか言葉を用いて新しく作ることがある

元々の作品がいいからこそハードルが上がってしまう ikoma

その作品が好きかどうかが大事 荻原

短歌づくりのコツ

本歌取りは元の作品を心から大切にして深く理解してこそ新たな表現につながる

 

Ikomaさんの電話短歌

信号に姿を変えて訪れた画面に残る君の足跡   ikoma

(これは着信履歴)

 

ジャンルの垣根はどうやったら超えられる? 荻原

お互いのジャンルにリスペクトを持つ 

人を好きになればその人のやっていることも好きになる

 

胎動短歌にご投稿を…。 Ikoma

新聞の短歌欄(特に「読売新聞」の「読売文芸」など)、

歌誌(「短歌」「角川短歌」「短歌研究」など)の一般投稿コーナー、

SNSTwitter/X)のハッシュタグ(#胎動短歌、#短歌投稿など)、

そして特定の公募短歌会やウェブサイトが主な選択肢。

 

・ことばのバトン

赦すほかないほどの星、星、星、

挿元おみそ(SNSクリエーター)

甘く焦げてく凍ったはずの血

ハイパーミサヲ(プロレスラー)

 

ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる 

冬野きりん

穂村弘著「短歌ください」の帯にもなっている

私にとって痛みを表現する方法が短歌 プロレス 

なんか似ているなという