2025年12月15日月曜日

兼題「石」&テーマ「電話」

日向ぼこ型には全部心あり

無き型に型破りなし冬星座

伝統に革新のある晩三吉(おくさんきち)

型に心を持ち後世へ雪見

冬を舞う勘三郎の型と切れ

 

NHK俳句 兼題「石」

選者:岸本尚毅 レギュラー:紅甘(ぐあま) 司会:柴田英嗣

年間テーマ「描写の工夫」

 

地味な石をどういうふうに主役をはらせるか脇役で使うか

 

・俳句の種を育てましょう!

石のやうな月と思う山眠る   紅甘

山眠る:冬の季語 山笑ふ:春の季語 山滴る:夏の季語 山粧ふ:秋の午後

歴史的仮名遣い現代仮名遣いどちらかにそろえる

 

石のやうな月が出てをり山眠る

浮く石のやうなる月や山眠る

ルネ・マグリット「現実の感覚」(1963)

 

描写のポイント浮かぶ石を月に見立てる

身近な存在の「石」によって突飛な発想が受け入れやすくなる

 

描写の工夫「石を描写する」

冬ざれ石に腰かけ孤独

⇩見事な遂行

冬ざれや石に腰かけ我孤独   高浜虚子

(冬ざれ:冬の季語)

 

・今週の特選句 兼題「石」

()つる夜の石像前の待合せ   鈴木秀行

石割れば蟹の化石や秋の風   白浜尚子

木の長椅子石の丸椅子秋の暮   小栗しずゑ

石炭で栄えし町のくじら鍋   奥田誠

石段を引っ掻()く箒(ほうき)寒雀   加藤幸龍

いつも石出す子に負けて炬燵の間   村野真澄

 

・特選三席

一席 五ユーロの焼栗パリの石畳   佐藤ひろみ

二席 大根を頼みましたよ石を置く   仲谷克巳()

三席 胆嚢に石ころ三つ草の花   草夕(そうゆう)感じ

 

・はみだせ!教室俳句

愛媛県宇和島市立明倫小学校 芳谷あゆみ先生

秋高し空中ブランコ握る汗

ジェットコースターの感覚残る秋薊(あざみ)

乗り物対決はジェットコースターの勝ち!

 

・「見どころあり!」の一句

花冷えのなゐに崩るる城の石   角谷厳(すみやいわお)

なゐ:地震⇩推敲

花冷なゐに崩れし城の石

(上五は切字を用い、中七は過去を示すために過去の助動詞連体形の「し」をつける)

 

・紅甘のつぶやき

今と過去と石

 

NHK短歌 テーマ「電話」

選者:荻原裕幸 ゲスト:ikoma 司会:ヒコロヒー

年間テーマ「短歌は時代の波に乗って」

 

死ぬことも生きていくことも選べなかったただ来年の手帳を選ぶ十二月

ヒコロヒー

 

・今月のテーマ「電話」

妻に電話をしたはずなのに海鳴りの響くどこかの街に繋がる

荻原裕幸

 

・入選九首 テーマ「電話」

ママごめん悪い娘しますアパートの受話器外してお出かけします

芋田智恵子

「あいさんをお願いします」「わたしよ♡」とお母さんが出たときがある

木村英樹

いちめんのなのはないちめんのなのはなたちおうじょうのでんわぼっくす

佐藤研哉(山村慕鳥(1884-1924)詩人の本歌取り 

有名な作品の語句や趣向の一部を自分の歌に取り入れて作ること)

二席 私 君からの「牛乳無い」の留守電を消せないままですぎる10

冨尾大地

傍らの天使に語り終えたあとブルートゥースのイヤホンを置く

野村真也

私 兄なりにグレてたらしい母からの着メロがダーク・ベイダーのテーマ

いずみはる

三席 クレームの電話専用左耳今Amazonで半額セール

竹内一二(かつじ)

一席 私 すぐそこにいると気づかず電話する恋人たちに挟まれて冬

成見薫

 天国の人とお話しできる機種あれば即座に乗り換えたいが

本那榮子

 

・荻原流 読み方指南

今月の詠み方指南 本歌取りをしてみよう

本歌取り:有名な作品の言葉や情景などを自分の作品に取り入れて作ること

 

咳をしてもしなくてもリビングに人がゐて二人なのだと思ふ

荻原裕幸

咳をしても一人 尾崎放哉 

自由律俳句の本歌取り 放哉にマウントを取っている荻原先生

尾崎放哉(1885-1926)俳人 

波乱に富んだ生活の中で独自の自由律の句境をを確立した

 

ヒップホップではサンプリングという文化があって曲の一部を切り取って

ループさせたり 誰かのラップとか言葉を用いて新しく作ることがある

元々の作品がいいからこそハードルが上がってしまう ikoma

その作品が好きかどうかが大事 荻原

短歌づくりのコツ

本歌取りは元の作品を心から大切にして深く理解してこそ新たな表現につながる

 

Ikomaさんの電話短歌

信号に姿を変えて訪れた画面に残る君の足跡   ikoma

(これは着信履歴)

 

ジャンルの垣根はどうやったら超えられる? 荻原

お互いのジャンルにリスペクトを持つ 

人を好きになればその人のやっていることも好きになる

 

胎動短歌にご投稿を…。 Ikoma

新聞の短歌欄(特に「読売新聞」の「読売文芸」など)、

歌誌(「短歌」「角川短歌」「短歌研究」など)の一般投稿コーナー、

SNSTwitter/X)のハッシュタグ(#胎動短歌、#短歌投稿など)、

そして特定の公募短歌会やウェブサイトが主な選択肢。

 

・ことばのバトン

赦すほかないほどの星、星、星、

挿元おみそ(SNSクリエーター)

甘く焦げてく凍ったはずの血

ハイパーミサヲ(プロレスラー)

 

ペガサスは私にはきっと優しくてあなたのことは殺してくれる 

冬野きりん

穂村弘著「短歌ください」の帯にもなっている

私にとって痛みを表現する方法が短歌 プロレス 

なんか似ているなという

2025年12月14日日曜日

スイッチインタビュー 佐野史郎&桜木紫乃

景変われども流るる水は冬野

吾を持たず群れ成す人よ寒気

表向きなど知りたくもなく凍る

虚像など見たくもないわ寒夜かな

笑われる人生目指す冬の月

 

■スイッチインタビュー

佐野史郎 桜木紫乃(直木賞作家)

家じまいとは家族とは

廃品遺品の整理 処分したのは20トン余り

買う時より手放す時のほうが大変

実母は施設に入所していた 20242月艶子92歳で他界

160年の歴史 医家の歴史に幕を閉じることになりましたと

守ることができず申し訳ございませんが

5代目として告げなかったことを詫びて守れなかったことが

じくちたる思いがある 佐野

長男が継いでいた医業を継いだのは次男の和也さんだった ナレーション

ずっと長男でつながって 桜木

継げというふうに枕元で 曾祖父に言われたので 

どうしても継がなければいけないと思ったと

父は言っていました 代々佐野家は長男が継ぐものだと

父もそのバトンを自分の責務として子どもに渡すのが

自分の役割だと 佐野

呪縛ですね 桜木

悪く言えば不幸の手紙 佐野

プレッシャー 重たくはなかったですか 桜木

そこは僕は相当ずるいですよね 長男であることを 親の愛情とか

ずいぶん受けて育ったから 受けるだけ受けて 

裏切ったみたいなところが 佐野

家を継がなかったことを裏切ったって思う気持ち

嫁に出たあと今もそうなんですけど 

かすかな罪悪感と共に生きているんです 

親が思うように生きなかった自分 桜木

一緒ですかね 佐野

佐野さんの罪悪感と私の罪悪感は何となく似てるんじゃないかと

 

父が経営していたラブホテル HOTELローヤル

私が15歳のときにラブホテルを父がいきなり始めたんですけど

ある日突然1億の借金をしてくるわけです

父の手形というんですかね ハンコを押すのが私の役目で

2人で流れ作業 桜木

重い 加担していたわけですね 佐野

全部お前のものになるんだからと言われてそだつわけですよ 桜木

その時は本当に信じて 佐野

家を継ぐというのをずっと小さいときから言われ続けていたので 桜木

そこは一緒ですね 佐野

床屋って言われていたら継ぎます頑張りますみたいな

そういうと親は喜ぶんです 桜木

正反対のところもあるけど環境として 家というものを継ぐ

家業を継ぐとか 医者であろうが 佐野

床屋ラブホテルであろうが 桜木

重くかかっていたという意味では 男女問わず 佐野

周りに育てられたようなところも いつの他人が出入りしていて 

お弟子さんが何人もいたので 桜木

祖母と母が厳しく看護師さんたちに当たると そのはね返り

ツケが陰で「おまえの母親は」ってゴリゴリ 佐野

同じ同じ よくストーブの上で北海道ですから 火あぶりの刑ってされて 桜木

 

継ぐ家を出たい 俳優になりたいって思ったきっかけは 桜木

医者にはなれないっていうのもあるし 弟は医者の道を進んでいるし

当然弟が…継いで欲しい お兄ちゃんの勝手ですよね 

 

マザコンの話だったけど お父さんがいないっていう話で いきなり

過保護に育てられてきた冬彦君に 親の代祖父の代曾祖父の代のツケが

彼に突きつけられた というふうな解釈で 佐野

重たい荷物ですよね 桜木

男って何という 佐野

 

食べられるようになって知られるようになってから

父も家族も親族も初めて認めてくれた

そのときには子どもが生まれて 医者にしたいという物語では

なかったでしょうね 父はバイオリンをたしなんでいたり

趣味の写真があったり音楽好きで 母は文学少女だったので

ゲーテ「若きウェルテルの悩み」とか好きだった

だから根っこではそういう僕の気持ちが 分からなくは

なかったと思います 父も でも父は長男としての物語を

生きたかったんだろうと思いますよ

この医者の物語の4代目ということを みずから望んで飛び込んだ 佐野

お父様を支えていたお母さまが医者を継ぐことは同で見良いじゃないか

と言えない立場から 医者を継ぐことはどうでもいいじゃないかと

言えない立場から お母さまの壮大にたくらみではと 

佐野さんをお医者さんにしなかったのは 桜木

だから子どもが生まれてきたときに 

そういう思いがなくはなかったようですよ 

写真が残っているけど 胎教で音楽を聞かせたり 佐野

1人で住みやすいようにしたら」と母に言っても

「私は家を守るために生きてきた」とその思いを佐野家の長男として

父は亡くなったけれども母の思いは そんなのはやめてくれとは

言えなかった 

 

母親は晩年 幻聴幻覚が激しく盗聴されているとか 1人になってから

そういうものを見るようになったことは事実 この家を

どうしたらいいんだろう 守り続けなきゃ 後ろめたく思っているのに

孤独にさせてしまったこと やっぱり大きいですよね

申し訳なさはあるけど 

 

20214月 多発整骨随腫に罹患 5年生存率は約40

過酷な入生活を経て復帰

 

ご病気されて大変なときとかぶっているんですよね 桜木

かぶってるけど母はよく分かってなかった それは責められないですけど 

特に敗血症のときは本当に危なかった時期があったので

そういう時期 母が亡くなっていく 死に対する感覚が近いですよね

だから家の物語を自分が生きている間に どう落とし前をつけるか 佐野

 

ここはすごく浄化された場所なんだと すごくいい家だったんだなって 

誰かが守って 傷つけないように傷つけないように 

大切にされた家だったんだなって そうじゃない所に行くと

体調が悪くなるんですよ 桜木

1番の家じまいのご褒美 しまう 供養のような気がします 

家じまいの廃品遺品の整理をした直後に 佐野家の歴史を振り返ると

それぞれの代のことも考えながら 供養 祖先に対して 

なかったことにするのではなく この人たちがこの家の物語を

続けようとしたから 自分もその家の物語の末端に 存在することが

できたんだという感謝 今までやったことのない 大きな供養の儀式 佐野

 

全員ビバ人生 みんなよく生きた よく生きたって好きな言葉なので 

だからよく自分も生きていこう 現在進行形だったり過去形だったり 

1人1人しまって よい形でしまっていけたら 

家じまいはよく生きること 桜木

そこに立ち会っている 生きている子孫が行うのが 家じまい

供養なんじゃないかと 祖先に対して失礼のないように感謝を込めて

ありがとうございました これからもお守りください 佐野

家 家族とか もう一度考えてみる必要があるんだなと

こんなに家をしまうご両親のこと 

家の歴史をこんなに考えている人がいるんだ

ここを舞台にして自由に使えるセットなので 桜木 

2025年12月13日土曜日

兼題「人生ゲーム」

てくてくと冬の遍路や道しるべ

太龍寺今亡き住職冬の空

冬の風仲間と歩くいわや道

冬陽射し目指す古道や平等寺

冬の晴古道余裕のしたり顔

 

■プレバト纏め 20251211日 

俳句タイトル戦「冬麗戦2025」兼題「人生ゲーム」

 

1位 矢柴俊博

人生ゲーム一味足らぬ関東炊き

(関東炊き:冬の季語 人生ゲームで始まるが己の人生を語っている

 だんだん美味しくなるそれが人生ではなかろうか?と読めていく

 一句の奥に込めてくる 「これは巧いものでしたね」といつき先生)

 

2位 村上健志

点滴の赤子の眠りコート脱ぐ

(「コート脱ぐ」という季語をよくぞ使った 見事な配慮)

 

3位 的場浩司

寒灯(かんとう)や仏花三束(ぶっかみたば)の残る桶

(映像だけの句なのに色んな人生が見えて来る 見ている人は?想像が膨らむ

 自分の思いをいっぱい書きたい人だったのに思いを全て季語に託した

 覚悟ができてきた 「俳人になられましたね」といつき先生)

 

4位 犬山紙子

納豆混ぜる母の病名を知る

(納豆:冬の季語 日常の象徴 取り合わせの判断が成功 

「る」淡々とした感じ表現がさらに胸に刺さってくる 涙が零れ落ちてきた)

 

5位 こがけん

吹雪く夜の空港に飲む蕎麦湯かな

(吹雪く:冬の季語 蕎麦湯の味・温もり 「かな」という詠嘆で支えられている)

 

6位 阿見果凛

赤本に貰ふ寄せ書き冬夕焼

(「貰ふ」の位置が良かった 冬夕焼:冬の季語 いつもの帰路を思い出させる

 「明日は晴れるかもね」「寒くてしんどいかも」複雑な感情を季語で表現)

 

7位 清春

冬の虹濃し休止という解散

(冬の虹は本来薄いもの 決断を「良し」決断の晴々とした感じが伝わる)

 

8位 二階堂高嗣

今日からアイドル小春の風呂掃除

(季語:小春 エピソード自体がオリジナリティーとリアリティーがある)

 

9位 千原ジュニア

梅雨入前(ついりまえ)老犬に告ぐ若き離郷

(梅雨入前:夏の季語 老と若イメージの対比 告ぐ若いニヒル

 季語がベストかどうか 離郷の魅力が削がれる)

老犬に告ぐ六月の若き離郷

 

10位 梅沢富美男

新品のこはぜ頑な初芝居

(初芝居:新年の季語 初芝居を見に行く人か演じる人なのかが不明

 新品のこはぜは固いもの 誰が用意してくれたか入れると良い)

新品のこはぜ母亡き初芝居

 

かたせ梨乃 蓮見翔 大友花恋 阿見果凛 森口瑤子 横尾渉 藤本敏史

はランク外となりました。

 

・伊藤園お~いお茶新俳句大賞 文部科学大臣賞受賞

凍星や歴史に残らない仕事   阿見果凛

 

・清水チャレンジ

初笑コマの足りない人生ゲーム

2025年12月12日金曜日

あの本、読みました?伊坂幸太郎スペシャル

美しく老いを重ねる帰雁かな

切り型や主の手癖覚えけり

冬の景荒れ狂いをり海の音

冬が来し年を重ねん誕生日

紅葉踏む青空仰ぎ誕生日

 

■あの本、読みました?伊坂幸太郎デビュー25周年記念スペシャル

鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

斉藤和義 朝井リョウ 中村義洋

新井久幸 藤吉亮平 小串環奈 君和田麻子 河合健介

 

「楽園の楽園」の帯

「人はどんなものにも 物語があると思い込む。きっとあなたもそのひとり。」

 

「楽園の楽園」の一文 伊坂幸太郎著/中央公論新社

「だから人間は、どんなものにも理由があって、どんなものにも

ストーリーがあると思い込んでいるわけ」

「ストーリー?」

「ストーリーは因果関係の宝庫だから。ウケるよね」

「別にウケない」

「『あんなことやったから、バチがあたった』

『人に親切にしたら、思わぬ幸せを手に入れることができた』

『強い魔法を手に入れたから、恐ろしい敵を撃退した』とか、

ストーリーにはそういう話がたくさん詰まっている。

『あの人とあの人が対立するのは、遠い昔からの因縁のせいだよ』とか、

そういった因果関係を脳は喜ぶの。

人間の頭は、動く記号を見ているだけで、ストーリーをでっちあげる、

という話を知ってる?

三角形や逆三角形が動いていれば、それにストーリーを重ね合わせちゃうんだって。

ウケるよね」

「別にウケない」

「人間の脳は、どんなものにも意味があると思い込んでいる。

だからこそ、脳が発達したんだと思うよ。とりわけ、

理不尽な目に遭った時に、理由を欲しがって、勝手にストーリーを

でっちあげることまでやっちゃうんだから。

結果には理由があるはずだ、ストーリーがあるはずだ、って信じてる。

アダムとイブの原罪も同じだよ」

 

「重力ピエロ」の一文 伊坂幸太郎著/新潮文庫

「どんな事柄にも意味があると思うのは、人間の悪い癖だよ。

原因を探そうとするんだ。」

 

作家・朝井リョウが気付いた魅力

伊坂さんはその場で一番弱きものの見方をする

 

「マイクロスパイ・アンサンブル」の一文 伊坂幸太郎/幻冬舎文庫

そして、だ。僕はとっさに、頭に浮かんだ言葉を口に出していた。

「あの、どこ部屋ですか?」相撲取りと重ねあわせた冗談だ。

おそらく、気の利いたことを言って自分の価値を上げたかったのだろう。

(中略)

「いやあ、稽古がつらくて、逃げ出したんですよ。

って何で相撲取り前提なんですか。どすこい」

と続け、そこでみなが爆笑した。

場は盛り上がったが、その後の僕はつらかった。

どう考えても、僕の発言は良くなかった。

いや、はっきり認めるが最低の部類だった。

一人になるとその時のことが思い出され、自己嫌悪に襲われる。

軽蔑する人間とは付き合わなければいいが、

自分とは疎遠になることはできない。ああ、なかったことにしたい。

 

ミュージシャン・斉藤和義が語る魅力

ベリーベリーストロング~アイネクライネ~

作詞 斉藤和義 伊坂幸太郎

駅前でアンケート調査 なんで俺ばっかこんな目に

バインダーなんか首から下げ 誰からも目をそらされ

見ず知らずの奴になんか 教えるもんかよ個人情報

もう空は薄い藍色 改札超えたら何色?

まるで進まないアンケート 自信喪失へこんじゃうよ

そんなふうにさげないで

ベリーベリーストロング いつか誰かが言ってた

 

「重力ピエロ」の一文 伊坂幸太郎著/新潮文庫

「この演奏しているのが盲目だと聞いて、

僕には納得が行ったよ」父が笑った。

「この楽しさはそういう人間だから出せるんだ」「そういう人間?」

「目に見えるものが一番大事だと思っているやつに、

こういうのは作れない」

父の言わんとすることは、薄(うっす)らとではあったが、分かった。

(中略)

「小賢しさの欠片もない」私は呟く。

「この演奏者はきっと、心底ジャズが好きなんだ。音楽が」

父がうなずく。

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

春は、誰に言うわけでもなさそうで、噛み締めるように言った。

「重いものを背負いながら、タップを踏むように」

それは詩のようにも聞こえ、「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、

みんな重力の事を忘れているんだ」

と続ける彼の言葉はさらに、印象的だった。

 

伊坂さんの言葉「泣けないけども良い小説を書きたい…」

 

映画監督・中村義洋が語る!伊坂幸太郎

 

「パズルと天気」の一文 伊坂幸太郎著/PHP研究所

「雷雅さんなら誰とでもうまくやっていけそうだけど」

「そんなことないよ。もともと僕は神経質で

人に気を使ってばかりだったんだ。

だけど美花さんが、『あなたは、相手の求めるパズルのピースに

ならないといけない、と思っているのでは?』と言ってきたんだよね」

「はあ、パズルですか」ぴったり当てはまることなんて

あるわけないんだから、大体でいいんですよ、大体で。

ちょっとくらい折り曲げたり、はみ出したりするくらいで

付き合っていくのがいい。相手についても同じ。

自分の理想にぴったり合致するような言動をしてくれる人なんて

いないんだから。ぴったりじゃなくても、大雑把にはめこんだら

パズル完成、くらいに思っていたほうがいいかも。

 

最新刊「さよならジャバウォック」の一文 伊坂幸太郎著/双葉社

「プログラムだよ。桂さんが言ってた。ヒトだけじゃなく、

ありとあらゆる生き物、動植物にはプログラムがある。

本能と言ってもいい。競い合って、繫栄するためのプログラムだ」

「敵は倒せ、敵には親切にするな、って書いてあるの?

そのプログラムには」

「俺もね、量子さんと同じようなことを桂さんにぶつけたんだ。

いったいどういうプログラムなんですか、って」

敵をやっつけろ、なんて分かりやすいものではないはずです、と

桂凍朗は言ったという。

フランスの思想家はこう言いました。

人間の最も強い欲望の一つは、

「今より落ちぶれたくないという欲求」だ、と。

人間はお金を無駄にすることはあっても、

地位を捨てることは稀だ、とも。

 

伊坂幸太郎氏より皆さまへ

デビュー作は西暦200012月に出ました。

つまり20世紀の最後です。

担当編集者の新井さんは「20世紀の終わりに

『ミステリーの新世紀を告げる』という

宣伝コメントをつけられてよかったです」と

嬉しそうで、僕もまだ若かったので

「新しい時代を作る作家になるぞ」

「この本が出たら、世界が大変なことに

なるぞ」と勇ましいことを思っていました。

ただ、もちろんそんなに甘くはなく、

本はそれほど売れたわけでもなく、

世界もぜんぜん大変なことにはなりませんでした。

ただ、それでも「面白い」と感じてくれる

読者や編集者、書店員のおかげで

25年やってこられて、

本当にありがたいです。

年を重ねて、勇ましさはほぼないですが、

まだアイディアはあるので

がんばりたいです! 

2025年12月11日木曜日

100分de名著 「死ぬ瞬間」

寒竹の子光と水に育まれ

冬空をドクターヘリの急ぎ行く

冬の陽を背に受け点てるお薄かな

炉開きや茶筅前後に迅速に

武者小路千家の炭手前

 

100de名著 キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」

1終末期患者への向き合い方

死の専門家

エリザベス・キューブラー・ロス

伊集院光 阿部みちこ 島薗進

 

死に向き合うプロセス 患者自身の経験に即して述べている

200人に及ぶ終末期患者のインタビューを基に

死に瀕した人間の心を明らかにした本

 

キューブラー・ロスは10代でボランティア活動を開始

30歳を過ぎてから医師になった

医師だけど医師からはみ出している

 

この本はたんに、患者を一人の人間として見直し、

彼らを会話へと誘い、病院における患者管理の長所と欠点を

彼らから学ぶという、刺激にみちた新奇な経験の記録に過ぎない。

鈴木晶・訳

 

ペスト 結核 天然痘などの感染症がほぼ克服された

 

シカゴ大学ビリングス病院 勤務

 

科学が発達すればするほど、私たちはますます死の現実を恐れ、

認めようとしなくなる。(中略)

もっとも重要な事実は、今日、死の過程がいろいろな意味で

以前よりつらいものになったということである。

死の過程はより孤独に、より機械的に、より非人間的になった。

 

患者は少しずつ、だが確実に、物のように扱われはじめる。

彼はもはや一人の人間ではない。

あらゆることが彼の意見を聞かずに決まっていく。

反抗しようとすれば鎮静剤を打たれ、何時間も待たされ、

体がもつかどうか気をもまされたあげく、

手術室か集中治療室に運ばれる。(中略)

十人以上の人がベッドの回りにいながら、全員の関心は彼の心拍数、

脈搏、心電図、あるいは肺機能、分泌物、排泄物だけに向けられ、

人間としての彼には誰も目を向けようとしない。

それに異議を唱えたとしても、すぐに黙らされることだろうー

これはすべて患者の命を救うための処置なのだ。(中略)

患者をまず人間として考えたりしていては救命の好機を失ってしまう!

 

死は敗北である 死を避けざるを得なかったのです

死を忌避する人々

尊厳はどこにあるんだ 本人の意思はどこにあるんだ 伊集院

 

エビデンスに基づいた治療をしなければいけない

エビデンスは数字で出てくるのでそこに頭がいってしまう

死の避妊 死に目隠しをしている キューブラー・ロス

 

医者の判断だけで動かされている もう侵略されている

人としての部分は破壊されている 伊集院

 

アウトサイダー的な医師だからこそできた 島薗

 

私たちは死に対して「婉(えん)曲法」を用いる。

たとえば眠っているかのように 死に化粧をほどこす。

(中略)病院で親が死に瀕していても、

子どもたちを見舞いに行かせない。 キューブラー・ロス

 

死を見つめないというのは 人類そのものの長い習性

死という向き合いたくないものへの心の準備が

できていないので 自己防衛のために否認する キューブラー・ロス

 

科学文明の影響が及ぶ前の時代は死の否認は強くなかった キューブラー・ロス

 

スイス チューリッヒ 1926年 三つ子の長女として誕生する

父・エルンスト 

 

その農夫は木から落ち、助かりそうもなかった。

彼は家で死なせてくれと言い、

その願いはだれからも反対されずにかなえられた。

彼は寝室に娘たちを呼び、それぞれと

二人きりで数分間ずつ話し合った。(中略)

彼は死んだ。でも自分が建てた愛する家にそのまま安置され、

彼の死に顔を最後に一目見ようと友人や近隣の人々が集まってきた。

もし患者が、慣れ親しんだ最愛の家で最期を迎えられるならば、

患者のための特別なことをあれこれ考える必要はない。

家族は彼のことをよく知っているから、

鎮静剤の代わりに好きなワインを一杯与えるだろう。

 

安らかな死 宗教

 

死の向こう側には神様や先祖の領域があり

死ぬというのはそこへ移っていくこと

自然に死は受容できる 

それ(宗教)がないと死は怖いだけ

恐れるばかりで受容できないものになってしまった

かなり分厚い人のつながりの中で死んでいく

宗教と人とのつながりがセットになっていた 島薗

 

過去

🔸死を迎える人の痛みを取り除く役目⇨宗教

近代以降

🔸科学技術が進歩

…医療は患者の治療を目指す⇔病床の人は死に向き合おうとする

🔸宗教への親しみが薄れる

…死の不安や悲嘆にくれる人を支えるものがない

 

死を克服したと医学は思い込むが大本の「死は古代から怖い」

ということに関してのケアはなかった 伊集院

 

シカゴ大学 1965年 キューブラー・ロスは迎えられる

「死とその過程」の授業を行う

講師に迎えたのは重い病を抱えた患者

 

セミナー中のやり取り

キューブラー・ロス「死ぬときのイメージは何かしていますか❓」

男性患者「いえ ただ惨めな終わりでなければと」

キューブラー・ロス「何かあなたの助けになれそうなことはありますか❓

例えば一杯のウイスキーとか独りにならないように友達になることとか」

 

このインタビューの目的

私たちがしようとしているのは患者さんから学ぶということなんです。

(中略)どうやったら、患者さんのことを本当に知り、その人が

どんな請求を持っているかを見つけ出せるのか。

そういうことを学ぼうとしているんです。

 

苦しむ患者を研究材料にしている と大きな批判を浴びますが

自分も語りたいという患者も後を断ちませんでした。

その数およそ200人にも上りました

 

「死ぬ瞬間」はキューブラー・ロスと患者たちの記録なのです。

終末患者へのインタビュー

 

お医者さんが死の玄人なのかどうか

患者の孤独が聞いて欲しいと思ったのでは…❓

人との交わりの中に自分は居続けたい そのことに気付けなかった医療界

生き甲斐になったのでは❓ 伊集院

教えて欲しい 自分たちが分からないことを

あなたたちこそ知らせてくれるんだ そこの姿勢が明確に出ている

 

キューブラー・ロスの意図は❓

医療者側が当たり前と思っていたことがそうではない

自分自身を省みる 自分たちがヒントを貰って変わっていく

かつては死ぬ人と周りの人たちが

気持ちを交換しながら死を迎える場があった

人間同士の場を作るという試み 

2025年12月10日水曜日

私の愛する印象派&伊勢物語&絵の絵画史

本質と今向き合わん初時雨

冬の月虚飾を生きる人のをり

手仕事に込めた時間や冬暖(ぬく)

冬の蚊や羽音元気に耳元を

冬の鹿闘争心は失わず

 

■日曜美術館 私の愛する印象派

私とGauguin 大岡信(詩人)

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)

私とルノワール 池波正太郎

ダンウェルス嬢の肖像

「熱烈!傑作ダンギ ルノワール」佐藤可士和 高階秀爾 大宮エリー

ルノワールの描く女性は年齢を考えないとフレイルでは…❓

 

クロード・モネ(1840-1926)

私とモネ 古井由吉(芥川賞作家)

モネ 自然を見つめるまなざし 野見山暁治

夢のモネ 傑作10選 原田マハ

 

エドガー・ドガ(1834-1917)

私とドガ 桑原甲子雄(きねお)

私とドガ 佐藤忠良

 

エドゥアール・マネ(1832-1883)

オランピア 草上の昼食(水浴)

マネ 近代市民絵画の旗手 赤瀬川原平

 

マネは見た都市生活者の秘密 イッセー尾形

フォリー・ベルジェールのバー 自分を売るバーメイド

 

ポスト印象派

ポール・セザンヌ(1839-1906)

近代絵画の父 

セザンヌはなぜ❝水浴画❞を描いたか 吉田秀和

夢のセザンヌ傑作10選 山口晃

 

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)

ゴッホ 魂の造型 髙山辰雄

ゴッホ 天才の挑戦 なかにし礼

夜のカフェテラス 

 

ポール・ゴーギャン(1848-1903)

かぐわしき大地

私とゴーギャン 大岡信

ブルターニュ 不思議の大地~ゴーギャンたちの飛躍~ 小野正嗣

ポン=タヴァン トレマロ礼拝堂 黄色いキリスト

 

■日曜美術館

・「伊勢物語 美術が映す王朝の恋とうた」

藤原業平

ちはやぶる神代もきかず立田河からくれなゐに水くゝるとは

(不思議なことが多かった神代にも聞いたことがありません

 龍田川の流れを深紅に絞り染めにするなんて)

 

伊勢物語は業平自身がモデルではと言われている

 

紫式部の「源氏物語」絵合わせの巻きの中に

絵の優劣を競い合う遊びが行われている 

その中で源氏方の女御が出したのが「伊勢物語」の絵巻だった

「源氏物語」が書かれた11世紀初頭には

「伊勢物語」が絵に描かれ貴族の中で好まれていたと言う事がわかります

 

古今和歌集

行く水に数かくよりもはかなきは思はぬひとを思ふなりけり

(流れゆく水に数を書いても跡も残らずはかないけれど

 それよりもっとはかないのは私を思ってくれない人を思ふことなのですね)

 

伊勢物語 岩瀬又兵衛の屏風

あらたまの年の三年を待ちわびてただ今宵こそ新枕すれ

(三年もの間あなたを待ちわびてちょうど今夜別の方と結婚します)

 

合貝(伊勢物語)18世紀

 

・猫の絵画史

エドゥアール・マネ オランピア

マネが裸婦の横に描いた黒猫も官能性を象徴する役割があった

日本の動物の絵には役割は必要なかった

菱田春草「黒猫」中原實「猫の子」

藤田嗣治「五人の裸婦」「猫の教室」

藤田は官能性の象徴として猫を描いている

西洋的な伝統の上に猫を描いている

描き方は西洋の伝統も日本の伝統もわかっている

藤田だからこそ描けた猫