聞き上手今日も和顔施夏の朝
いつもの如く切に生き抜く五月
忘己利他(もうこりた)慈悲の極みや夏きざす
薫風や見返りなしに突き進む
今日は今日未来に期待雲の峰
■あの人に会いたい 吉行和子2025(令和7)年 90歳没
面白そうっていうのがないと やる気がしないっていうのかしら
役の大きさ 小ささじゃないんです
「なんかこの役やりたいな」っていうのが見つかったらやっていた
父 エイスケ 母 あぐり 兄 淳之介 妹 理恵
体が弱かったから 本ばかりいつも読んでいたんですよ
本の中に出てくる人物と友達になって遊んでいたんですけど
本の中の人たちが舞台で動いて喋って 本をめくるみたいに
話が進んでいくっていうのを見て こういう世界があるんだって
初めて思った
劇団民藝付属水品演劇研究所へ 衣装係りとして
22歳で「アンネの日記」主演に抜擢
アンネ役の方が(公演開始後)1週間か10日ぐらいに
声が出なくなっちゃったの 風邪で 朝 電話がかかってきて
「ちょっと劇団にすぐ来なさい」って お芝居の稽古には
ずっと勉強で行っていて 私も時々 代わりにやらされたり
してたんですけど 突然 舞台に出てしまったんです
これを機に舞台に立つようになった吉行和子さん 落ち込んだ時には
宇野重吉の言葉が支えになったそうです。
「思えば出る」っておっしゃったんですね。
「役について人の何倍も100倍も200倍も思いなさい」って
なんかやっぱり思っていると役がだんだん自分の中に入ってきて
ひとりでに動けるようになる あっちへ行こう こっちへ行こう
っていうのが 振付でやるんじゃなくて 自分の中から
出てくるっていうのは 確かにありましたね
唐十郎からの出演依頼
唐十郎さんが自筆で書いたよ横書きのペラペラの「少女仮面」
っていう台本で 読みづらいどころか なんだかよく分からない
把握できない物語だったんですけれども なんか新しい風が
吹いてきたような気がしてしまって 「やります」って言って
しまったんですよ
劇団民藝を退団
1969年「少女仮面」に出演 その後、未知の分野への挑戦が続く
「愛の亡霊」(1978年)原作 中村糸子 脚本・監督 大島渚
なんか40歳を過ぎていると だんだん女優っておもしろい役が
なくなるんですよ「もう女じゃない」みたいな感じの役が多くて
つまらないなと思っていた時だったものですから ちょうど恋もする
うんと年下の男の人に恋をしてしまう おかみさんの役がとても
面白いような気がしてやりたかった
この映画で日本アカデミー賞優秀主演女優賞を受賞
テレビドラマでも「3年B組金八先生」で家庭科の教師を演じる
連続テレビ小説「ごちそうさん」(2013年)では見る人を驚かせた
死んだあとはゆか床となり主人公の孫を見守ることに
最初は朝ドラのナレーションって(スタッフが)おっしゃったものですから
「私のこのガラガラ声で朝っぱらから皆さん 嫌な気持ちに
なってしまうから無理ですよ」って申し上げたら 「いや実は」
ちょっと言いにくそうにね 「ぬかみそがしゃべっているんですよ」
っておっしゃった じゃあ私の声はとても ぬかみそっぽくて
いいんじゃないかなと思って 喜んでやらせていただきました
凄い自由でね だって誰もいないんだから ぬかみその人なんてこの世に
勝手にできるでしょ だからすごく楽しかったです
クッキングとかしたくなくて 冷蔵庫から出したらそのまま食べるって
いうのをモットーとしていたんです 本当に働き者の役が多いんですよ
私 お茶も茶筒で急須やかんジャーとか(家には)何もないから
お茶入れながらしゃべるっていうのが もう大の苦手で
「どうするんだ」とか思って もうセリフも間違えちゃったりして
一つ一つ本当に大変なんですよ
作家の父を持ち 兄と妹が芥川賞作家という吉行さんは文筆活動でも活躍
「どこまで演(や)れば気がすむの」で日本SFクラブ賞を受賞
俳句好きとしても知られています
「遊べやと黄泉に誘う昼の月」吉行和子
妹と4歳違いなんですけど 先に逝かれてしまいまして
お墓に行ってなんかちょっとこう昼間の青い空に
白い月がぽ~んと出ていたので妹が「遊ぼう」って
言ってるみたいな気がして作りました
もうちょっとうまくなったらいいと思うんですけど
あまりそういうことを考えず句会に行って
みんなで楽しくっていうのが好きなんです
50台後半 さらに挑戦をし続けます 一人芝居
「MITSUKO ミツコ~世紀末の伯爵夫人」作・演出 大間知靖子
実在した日本人初の国際結婚女性、
クーデンホーフ光子の生涯を描いた舞台作品。
明治期にオーストリア伯爵と結婚し、
欧州へ渡った光子の数奇な運命を描いている。
吉行和子の一人芝居が1993年初演以降、
ヨーロッパツアーも行われるなど大きな反響を呼んだ。
13年間上演した。
お客様が何百人の方が全部そこしか見る所がないでしょ
何が客席で起きても びくともしないっていうぐらいの気持ちで
出て行くわけですよ 大変なのと同時に終わった時の「やったぞ」
っていう気持ちっていうのは これはちょっと1人じゃなきゃ
独り占めって感じね
若くて元気がいい時だけではなくて 今の私を必要としてくれる
役があるっていうことは すごい喜びでなにしろ創作劇が好きな
もんですから 今この世にないものが生み出されなきゃいけない
それを待っています