2025年12月12日金曜日

あの本、読みました?伊坂幸太郎スペシャル

美しく老いを重ねる帰雁かな

切り型や主の手癖覚えけり

冬の景荒れ狂いをり海の音

冬が来し年を重ねん誕生日

紅葉踏む青空仰ぎ誕生日

 

■あの本、読みました?伊坂幸太郎デビュー25周年記念スペシャル

鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P

斉藤和義 朝井リョウ 中村義洋

新井久幸 藤吉亮平 小串環奈 君和田麻子 河合健介

 

「楽園の楽園」の帯

「人はどんなものにも 物語があると思い込む。きっとあなたもそのひとり。」

 

「楽園の楽園」の一文 伊坂幸太郎著/中央公論新社

「だから人間は、どんなものにも理由があって、どんなものにも

ストーリーがあると思い込んでいるわけ」

「ストーリー?」

「ストーリーは因果関係の宝庫だから。ウケるよね」

「別にウケない」

「『あんなことやったから、バチがあたった』

『人に親切にしたら、思わぬ幸せを手に入れることができた』

『強い魔法を手に入れたから、恐ろしい敵を撃退した』とか、

ストーリーにはそういう話がたくさん詰まっている。

『あの人とあの人が対立するのは、遠い昔からの因縁のせいだよ』とか、

そういった因果関係を脳は喜ぶの。

人間の頭は、動く記号を見ているだけで、ストーリーをでっちあげる、

という話を知ってる?

三角形や逆三角形が動いていれば、それにストーリーを重ね合わせちゃうんだって。

ウケるよね」

「別にウケない」

「人間の脳は、どんなものにも意味があると思い込んでいる。

だからこそ、脳が発達したんだと思うよ。とりわけ、

理不尽な目に遭った時に、理由を欲しがって、勝手にストーリーを

でっちあげることまでやっちゃうんだから。

結果には理由があるはずだ、ストーリーがあるはずだ、って信じてる。

アダムとイブの原罪も同じだよ」

 

「重力ピエロ」の一文 伊坂幸太郎著/新潮文庫

「どんな事柄にも意味があると思うのは、人間の悪い癖だよ。

原因を探そうとするんだ。」

 

作家・朝井リョウが気付いた魅力

伊坂さんはその場で一番弱きものの見方をする

 

「マイクロスパイ・アンサンブル」の一文 伊坂幸太郎/幻冬舎文庫

そして、だ。僕はとっさに、頭に浮かんだ言葉を口に出していた。

「あの、どこ部屋ですか?」相撲取りと重ねあわせた冗談だ。

おそらく、気の利いたことを言って自分の価値を上げたかったのだろう。

(中略)

「いやあ、稽古がつらくて、逃げ出したんですよ。

って何で相撲取り前提なんですか。どすこい」

と続け、そこでみなが爆笑した。

場は盛り上がったが、その後の僕はつらかった。

どう考えても、僕の発言は良くなかった。

いや、はっきり認めるが最低の部類だった。

一人になるとその時のことが思い出され、自己嫌悪に襲われる。

軽蔑する人間とは付き合わなければいいが、

自分とは疎遠になることはできない。ああ、なかったことにしたい。

 

ミュージシャン・斉藤和義が語る魅力

ベリーベリーストロング~アイネクライネ~

作詞 斉藤和義 伊坂幸太郎

駅前でアンケート調査 なんで俺ばっかこんな目に

バインダーなんか首から下げ 誰からも目をそらされ

見ず知らずの奴になんか 教えるもんかよ個人情報

もう空は薄い藍色 改札超えたら何色?

まるで進まないアンケート 自信喪失へこんじゃうよ

そんなふうにさげないで

ベリーベリーストロング いつか誰かが言ってた

 

「重力ピエロ」の一文 伊坂幸太郎著/新潮文庫

「この演奏しているのが盲目だと聞いて、

僕には納得が行ったよ」父が笑った。

「この楽しさはそういう人間だから出せるんだ」「そういう人間?」

「目に見えるものが一番大事だと思っているやつに、

こういうのは作れない」

父の言わんとすることは、薄(うっす)らとではあったが、分かった。

(中略)

「小賢しさの欠片もない」私は呟く。

「この演奏者はきっと、心底ジャズが好きなんだ。音楽が」

父がうなずく。

「本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ」

春は、誰に言うわけでもなさそうで、噛み締めるように言った。

「重いものを背負いながら、タップを踏むように」

それは詩のようにも聞こえ、「ピエロが空中ブランコから飛ぶ時、

みんな重力の事を忘れているんだ」

と続ける彼の言葉はさらに、印象的だった。

 

伊坂さんの言葉「泣けないけども良い小説を書きたい…」

 

映画監督・中村義洋が語る!伊坂幸太郎

 

「パズルと天気」の一文 伊坂幸太郎著/PHP研究所

「雷雅さんなら誰とでもうまくやっていけそうだけど」

「そんなことないよ。もともと僕は神経質で

人に気を使ってばかりだったんだ。

だけど美花さんが、『あなたは、相手の求めるパズルのピースに

ならないといけない、と思っているのでは?』と言ってきたんだよね」

「はあ、パズルですか」ぴったり当てはまることなんて

あるわけないんだから、大体でいいんですよ、大体で。

ちょっとくらい折り曲げたり、はみ出したりするくらいで

付き合っていくのがいい。相手についても同じ。

自分の理想にぴったり合致するような言動をしてくれる人なんて

いないんだから。ぴったりじゃなくても、大雑把にはめこんだら

パズル完成、くらいに思っていたほうがいいかも。

 

最新刊「さよならジャバウォック」の一文 伊坂幸太郎著/双葉社

「プログラムだよ。桂さんが言ってた。ヒトだけじゃなく、

ありとあらゆる生き物、動植物にはプログラムがある。

本能と言ってもいい。競い合って、繫栄するためのプログラムだ」

「敵は倒せ、敵には親切にするな、って書いてあるの?

そのプログラムには」

「俺もね、量子さんと同じようなことを桂さんにぶつけたんだ。

いったいどういうプログラムなんですか、って」

敵をやっつけろ、なんて分かりやすいものではないはずです、と

桂凍朗は言ったという。

フランスの思想家はこう言いました。

人間の最も強い欲望の一つは、

「今より落ちぶれたくないという欲求」だ、と。

人間はお金を無駄にすることはあっても、

地位を捨てることは稀だ、とも。

 

伊坂幸太郎氏より皆さまへ

デビュー作は西暦200012月に出ました。

つまり20世紀の最後です。

担当編集者の新井さんは「20世紀の終わりに

『ミステリーの新世紀を告げる』という

宣伝コメントをつけられてよかったです」と

嬉しそうで、僕もまだ若かったので

「新しい時代を作る作家になるぞ」

「この本が出たら、世界が大変なことに

なるぞ」と勇ましいことを思っていました。

ただ、もちろんそんなに甘くはなく、

本はそれほど売れたわけでもなく、

世界もぜんぜん大変なことにはなりませんでした。

ただ、それでも「面白い」と感じてくれる

読者や編集者、書店員のおかげで

25年やってこられて、

本当にありがたいです。

年を重ねて、勇ましさはほぼないですが、

まだアイディアはあるので

がんばりたいです! 

2025年12月11日木曜日

100分de名著 「死ぬ瞬間」

寒竹の子光と水に育まれ

冬空をドクターヘリの急ぎ行く

冬の陽を背に受け点てるお薄かな

炉開きや茶筅前後に迅速に

武者小路千家の炭手前

 

100de名著 キューブラー・ロス「死ぬ瞬間」

1終末期患者への向き合い方

死の専門家

エリザベス・キューブラー・ロス

伊集院光 阿部みちこ 島薗進

 

死に向き合うプロセス 患者自身の経験に即して述べている

200人に及ぶ終末期患者のインタビューを基に

死に瀕した人間の心を明らかにした本

 

キューブラー・ロスは10代でボランティア活動を開始

30歳を過ぎてから医師になった

医師だけど医師からはみ出している

 

この本はたんに、患者を一人の人間として見直し、

彼らを会話へと誘い、病院における患者管理の長所と欠点を

彼らから学ぶという、刺激にみちた新奇な経験の記録に過ぎない。

鈴木晶・訳

 

ペスト 結核 天然痘などの感染症がほぼ克服された

 

シカゴ大学ビリングス病院 勤務

 

科学が発達すればするほど、私たちはますます死の現実を恐れ、

認めようとしなくなる。(中略)

もっとも重要な事実は、今日、死の過程がいろいろな意味で

以前よりつらいものになったということである。

死の過程はより孤独に、より機械的に、より非人間的になった。

 

患者は少しずつ、だが確実に、物のように扱われはじめる。

彼はもはや一人の人間ではない。

あらゆることが彼の意見を聞かずに決まっていく。

反抗しようとすれば鎮静剤を打たれ、何時間も待たされ、

体がもつかどうか気をもまされたあげく、

手術室か集中治療室に運ばれる。(中略)

十人以上の人がベッドの回りにいながら、全員の関心は彼の心拍数、

脈搏、心電図、あるいは肺機能、分泌物、排泄物だけに向けられ、

人間としての彼には誰も目を向けようとしない。

それに異議を唱えたとしても、すぐに黙らされることだろうー

これはすべて患者の命を救うための処置なのだ。(中略)

患者をまず人間として考えたりしていては救命の好機を失ってしまう!

 

死は敗北である 死を避けざるを得なかったのです

死を忌避する人々

尊厳はどこにあるんだ 本人の意思はどこにあるんだ 伊集院

 

エビデンスに基づいた治療をしなければいけない

エビデンスは数字で出てくるのでそこに頭がいってしまう

死の避妊 死に目隠しをしている キューブラー・ロス

 

医者の判断だけで動かされている もう侵略されている

人としての部分は破壊されている 伊集院

 

アウトサイダー的な医師だからこそできた 島薗

 

私たちは死に対して「婉(えん)曲法」を用いる。

たとえば眠っているかのように 死に化粧をほどこす。

(中略)病院で親が死に瀕していても、

子どもたちを見舞いに行かせない。 キューブラー・ロス

 

死を見つめないというのは 人類そのものの長い習性

死という向き合いたくないものへの心の準備が

できていないので 自己防衛のために否認する キューブラー・ロス

 

科学文明の影響が及ぶ前の時代は死の否認は強くなかった キューブラー・ロス

 

スイス チューリッヒ 1926年 三つ子の長女として誕生する

父・エルンスト 

 

その農夫は木から落ち、助かりそうもなかった。

彼は家で死なせてくれと言い、

その願いはだれからも反対されずにかなえられた。

彼は寝室に娘たちを呼び、それぞれと

二人きりで数分間ずつ話し合った。(中略)

彼は死んだ。でも自分が建てた愛する家にそのまま安置され、

彼の死に顔を最後に一目見ようと友人や近隣の人々が集まってきた。

もし患者が、慣れ親しんだ最愛の家で最期を迎えられるならば、

患者のための特別なことをあれこれ考える必要はない。

家族は彼のことをよく知っているから、

鎮静剤の代わりに好きなワインを一杯与えるだろう。

 

安らかな死 宗教

 

死の向こう側には神様や先祖の領域があり

死ぬというのはそこへ移っていくこと

自然に死は受容できる 

それ(宗教)がないと死は怖いだけ

恐れるばかりで受容できないものになってしまった

かなり分厚い人のつながりの中で死んでいく

宗教と人とのつながりがセットになっていた 島薗

 

過去

🔸死を迎える人の痛みを取り除く役目⇨宗教

近代以降

🔸科学技術が進歩

…医療は患者の治療を目指す⇔病床の人は死に向き合おうとする

🔸宗教への親しみが薄れる

…死の不安や悲嘆にくれる人を支えるものがない

 

死を克服したと医学は思い込むが大本の「死は古代から怖い」

ということに関してのケアはなかった 伊集院

 

シカゴ大学 1965年 キューブラー・ロスは迎えられる

「死とその過程」の授業を行う

講師に迎えたのは重い病を抱えた患者

 

セミナー中のやり取り

キューブラー・ロス「死ぬときのイメージは何かしていますか❓」

男性患者「いえ ただ惨めな終わりでなければと」

キューブラー・ロス「何かあなたの助けになれそうなことはありますか❓

例えば一杯のウイスキーとか独りにならないように友達になることとか」

 

このインタビューの目的

私たちがしようとしているのは患者さんから学ぶということなんです。

(中略)どうやったら、患者さんのことを本当に知り、その人が

どんな請求を持っているかを見つけ出せるのか。

そういうことを学ぼうとしているんです。

 

苦しむ患者を研究材料にしている と大きな批判を浴びますが

自分も語りたいという患者も後を断ちませんでした。

その数およそ200人にも上りました

 

「死ぬ瞬間」はキューブラー・ロスと患者たちの記録なのです。

終末患者へのインタビュー

 

お医者さんが死の玄人なのかどうか

患者の孤独が聞いて欲しいと思ったのでは…❓

人との交わりの中に自分は居続けたい そのことに気付けなかった医療界

生き甲斐になったのでは❓ 伊集院

教えて欲しい 自分たちが分からないことを

あなたたちこそ知らせてくれるんだ そこの姿勢が明確に出ている

 

キューブラー・ロスの意図は❓

医療者側が当たり前と思っていたことがそうではない

自分自身を省みる 自分たちがヒントを貰って変わっていく

かつては死ぬ人と周りの人たちが

気持ちを交換しながら死を迎える場があった

人間同士の場を作るという試み 

2025年12月10日水曜日

私の愛する印象派&伊勢物語&絵の絵画史

本質と今向き合わん初時雨

冬の月虚飾を生きる人のをり

手仕事に込めた時間や冬暖(ぬく)

冬の蚊や羽音元気に耳元を

冬の鹿闘争心は失わず

 

■日曜美術館 私の愛する印象派

私とGauguin 大岡信(詩人)

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール(1841-1919)

私とルノワール 池波正太郎

ダンウェルス嬢の肖像

「熱烈!傑作ダンギ ルノワール」佐藤可士和 高階秀爾 大宮エリー

ルノワールの描く女性は年齢を考えないとフレイルでは…❓

 

クロード・モネ(1840-1926)

私とモネ 古井由吉(芥川賞作家)

モネ 自然を見つめるまなざし 野見山暁治

夢のモネ 傑作10選 原田マハ

 

エドガー・ドガ(1834-1917)

私とドガ 桑原甲子雄(きねお)

私とドガ 佐藤忠良

 

エドゥアール・マネ(1832-1883)

オランピア 草上の昼食(水浴)

マネ 近代市民絵画の旗手 赤瀬川原平

 

マネは見た都市生活者の秘密 イッセー尾形

フォリー・ベルジェールのバー 自分を売るバーメイド

 

ポスト印象派

ポール・セザンヌ(1839-1906)

近代絵画の父 

セザンヌはなぜ❝水浴画❞を描いたか 吉田秀和

夢のセザンヌ傑作10選 山口晃

 

フィンセント・ファン・ゴッホ(1853-1890)

ゴッホ 魂の造型 髙山辰雄

ゴッホ 天才の挑戦 なかにし礼

夜のカフェテラス 

 

ポール・ゴーギャン(1848-1903)

かぐわしき大地

私とゴーギャン 大岡信

ブルターニュ 不思議の大地~ゴーギャンたちの飛躍~ 小野正嗣

ポン=タヴァン トレマロ礼拝堂 黄色いキリスト

 

■日曜美術館

・「伊勢物語 美術が映す王朝の恋とうた」

藤原業平

ちはやぶる神代もきかず立田河からくれなゐに水くゝるとは

(不思議なことが多かった神代にも聞いたことがありません

 龍田川の流れを深紅に絞り染めにするなんて)

 

伊勢物語は業平自身がモデルではと言われている

 

紫式部の「源氏物語」絵合わせの巻きの中に

絵の優劣を競い合う遊びが行われている 

その中で源氏方の女御が出したのが「伊勢物語」の絵巻だった

「源氏物語」が書かれた11世紀初頭には

「伊勢物語」が絵に描かれ貴族の中で好まれていたと言う事がわかります

 

古今和歌集

行く水に数かくよりもはかなきは思はぬひとを思ふなりけり

(流れゆく水に数を書いても跡も残らずはかないけれど

 それよりもっとはかないのは私を思ってくれない人を思ふことなのですね)

 

伊勢物語 岩瀬又兵衛の屏風

あらたまの年の三年を待ちわびてただ今宵こそ新枕すれ

(三年もの間あなたを待ちわびてちょうど今夜別の方と結婚します)

 

合貝(伊勢物語)18世紀

 

・猫の絵画史

エドゥアール・マネ オランピア

マネが裸婦の横に描いた黒猫も官能性を象徴する役割があった

日本の動物の絵には役割は必要なかった

菱田春草「黒猫」中原實「猫の子」

藤田嗣治「五人の裸婦」「猫の教室」

藤田は官能性の象徴として猫を描いている

西洋的な伝統の上に猫を描いている

描き方は西洋の伝統も日本の伝統もわかっている

藤田だからこそ描けた猫

2025年12月9日火曜日

篠田桃紅&山折哲雄

群れ成して草の中からコウヨウチョウ

草の種食べて繁殖コウヨウチョウ

乾季激減雨季に増殖コウヨウチョウ

コウヨウチョウ百年ハウス造りをり

コウヨウチョウへ軋轢持つジンバブエ

 

■墨いろに心を託して 篠田桃紅

抽象表現主義 抽象画家 篠田桃紅

 

篠田桃紅女史の言葉

いつも裏切られているんですよ それは自分自身が自分が裏切るのと同じよ

人間はいつもうぬぼれちゃってるから自分はもうこれでいいと思い込んでいる

「あんたのは まだ この程度だよ」と 私は言いますよ 墨は

裏切るっていうより戒める いい気になるなと

 

老子は「墨は玄の色」「玄とは宇宙や人生の根源」

「墨は100%黒にはならない 明るさを一点残す」篠田桃紅女史の悟り

「人生は未完である」

生き方の自由 自らに由る=自分に頼る

 

篠田桃紅女史の言葉

自分に頼るのが自由です 

自分に頼る人生を選択した 

自由になると捉われがなくなるから

自分に客観的に見る視点が自ずと身に着く

自分を客観視するには自由でないといけない

 

人間は歳月を重ねると老いて

身体の機能が低下する一方だと思っていた

人間は老いるにつれて目の高さが高くなり 

過去と未来を俯瞰するようになる

 

老いると記憶力は弱まります 

しかし思考力は熟成されていきます

 

人生をものにする

 

■こころの時代 こう生きたどう生きる 山折哲雄 現在を問う

あのね もう今 93歳になりました 明け方2時から3時 目が覚める

頭がスーッとして本当の夜明けの静謐の時間が来る

これがいちばん頭が冴えるんですよ 冴える中でやってるのは何か

「妄想」ですよ いろんな「妄想」が出てくる 真か偽かわからない

「妄想」っていうのは

 

専念寺 山折哲雄 実家

11歳年下の弟 時信氏が現在の住職

 

親鸞ノート 服部之総著

服部之総(しそう)1901-1956 歴史学者 哲学者

呪はれたる宗門の子 と記している

 

私にとっては親鸞は信仰の対象にはなりえない 山折

 

山折時信

兄貴っていうよりも親代わりみたいなもんだったですね

学校はいる時だったかな「尊敬している人なんて書いたらいい?」

って言ったら 「そう言われたら 親鸞聖人って書け」って

言われたんですよ 一番危なげねえのは「両親だ」って

書けばいいのに 父親じゃなくて「親鸞聖人って書け」って

いうことを言われた覚えがありました(兄は)大学の時なんか

休みで戻ってくるわけです そうしてサンスクリット語

ここの部屋で勉強してるんですよ 

 

親鸞1173-1262

親鸞筆「教行信証」顕浄土真実教行証文類

和讃 人々と仏の教えを讃嘆しようと親鸞が詠んだ歌

自然法爾 90歳になった親鸞の発見でもあった

宗教とは魔物だ 山折

 

無常

祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 平安物語

宮沢賢治「雨ニモマケズ」手帳

 

Jesusの人生30年 青春の宗教 老が抜けている

仏陀の人生80年 変化する顔 インド人の根幹をなす四住期(しじゅうき)

 

四住期 とは  学生期 家住期 林住期 遊行期

サヌヤーシン遊行者

 

宗教と言う言葉はなかった religion 

空海が遺そうとした言葉は初心 最澄は道心 法然・親鸞は信心・深心

道元は身心脱落 日蓮は観心 

楕円構造 宗教的権威(天皇)と政治的権力

小国寡民「小さな国土に少数の民」老子が理想とした国家像

冊封体制 中国と周辺諸国との主従体制

 

親鸞「愚禿悲歎述懐」山折哲雄筆

浄土真宗に帰すれども 真実の心はありがたし

虚仮不実のわが身にて 清浄の心もさらになし

 

非僧非俗

 

松尾芭蕉 1644-1694

僧に似て塵有 俗ににゝて髪なし

僧侶に似て俗塵があり 俗人に似て剃髪の身

 

良寛 1758-1831

俗にあらず 沙門にあらず

俗人ではなく 僧侶でもない

 

世間虚仮 唯仏是真 

親鸞の一番大切にした言葉 山折哲雄氏も…。

 

旅に病んで夢は枯野をかけ廻る   芭蕉辞世句 

2025年12月8日月曜日

兼題「鷹」&テーマ「オノマトペを入れる」

今冬の利下げ株高?予想せり

今冬の景気悪化の株価下げ?

今冬や誰の予想か?見通しか?

欠片なき責任感よ寒潮よ

北颪(おろし)繰り返される過ちよ

 

NHK俳句 兼題「鷹」

選者:堀田季何 レギュラー:庄司浩平 司会:柴田英嗣

年間テーマ「俳句のコリをほぐします」

 

今月のテーマは「固有名詞」

   コカコーラ持って幽霊見物に   宇多喜代子

(コカコーラ)

   三つ矢サイダーきやうだい毀(こわ)れやすきかな   奥田箪子

三矢の訓(おしえ):毛利元就が子に一族の結束を説いた(矢サイダー)

   コンビニのおでんが好きで星きれい   神野紗希

 

3つのリスク 「個人的」「宣伝的」「限定的」

   帰省してウェッジウッドの皿もらふ   

   ハイネケンの喉ごしよろし一人の夜

   富士銀行聳え立ちをり冬の街

 

ツボポイント

固有名詞は「覚悟」と「必然」で詠む

 

・実践

A紺青(こんじょう)の夜涼(やりょう)の空や高島屋

 紺青(こんじょう)の夜涼(やりょう)の空や百貨店   飯田蛇笏

夜涼:夏の季語

B遠足の列大丸の中とおる   田川飛旅子(ひりょし)

C伊勢丹をめぐる着ぶくれ一家族

 百貨店めぐる着ぶくれ一家族 草間時彦

 

必然性とはイメージがいきるかどうか

特別な名前を使うとき プラスの効果がないと何の意味もない

 

まとめ

固有名詞のイメージや響きを表現にいかす

 

・今週の兼題「鷹(たか)

冬の季語 (孤高な存在 凛としている 目つきが鋭い 

獲物を狙ったら離さない 誉め言葉に使う)

 

特選六句発表

鷹の目や初めて嬰(やや)を抱いた日の   近藤由香子

テノールの愉()悦のごとく鷹よ翔()べ   賀()山亜紀子

(堀田季何先生はバスだったとか…。男性だったのですね…。)

車椅子押し大鷹の視野にゐる   柏原才子

 ひとはひと裁けぬゆゑに鷹の飛ぶ   沼野大統領

鷹の眼に水平線は丸からう   横縞

酋長の眼光その鷹の眼光   赤坂みずか

 

・柴田と庄司の歩み

固有名詞はプラスであれ   柴田英嗣

覚悟を持った   庄司浩平

 

NHK短歌 テーマ「オノマトペを入れる」

歌人:横山未来子 初心者:菊池銀河・横田真子 司会:ヒコロヒー

年間テーマ「三十一音で扉が開く」

 

・三十一音の扉 オノマトペを入れる

オノマトペとは「擬音語」「擬態語」のこと

擬音語:実際の音を真似てあらわしたもの

擬態語:状態や動作をあらわしたもの

 

静けさと呼吸が重くのしかかるどぅとぅんどうとぅんと朝の日比谷線

須田覚(さとし)「デカンの風がやむとき」

 

自分の感覚で捉えた音になっていることで面白い歌になっている

 

けふの疲れに軀(からだ)はしずみざらざらと無数の星に覆はるる夜

横山未来子「水をひらく手」

疲れているから満天の星空も圧迫感を感じる

オノマトペは気持ちも表現することができる

 

すっからかんすっからかんと下りてゆく缶追いかけて冬の石段

梅内美華子「若月祭」

すっからかんは空っぽと言うことを表す言葉

それをオノマトペみたいに使っている

 

・入選六首 テーマ「オノマトペを入れる」

着ぶくれて真夜(まよ)の牛舎に獣医待つ湯気ぼあぼあと仔牛生まれたり

黒澤正行

一席 レタスの葉めりめりと剥ぐ昨日より強い私が生まれるように

秋山楓

さわさわがざわざわとなり君の元へ駆けてゆく道桜のかおり

五十嵐覚子

コンビニの灯りじわりと滲んでは泣くほどじゃない夜を支える

来住瑞貴(きすみみずき)

つやつやの小石みたいな乳歯たちこどもはみんなせせらぎだった

世田夏雪(せたなつゆき)

栗林(くりばやし)書房の前を通るときふらりと長き祖父の影あり

大津穂波

 

・歌人への道

オノマトペを入れた短歌に挑戦!

わんわんと光り輝く星たちが泣いている様でほんのり安堵

菊池銀河 添削⇩

わんわんと光り輝く星たちが泣いている空の下でやすらぐ

ぴっきりとはりつむる頬突き破る猛スピードの冬のビル風

横田真子 Perfect

 

ぬ ぬぬぬ ぬぬぬぬぬぬぬ 蜚蠊(ごきぶり)は少しためらひ過りゆきたり

宮原望子(もちこ)「これやこの」

 

・ことばのバトン

渡せなかった手紙を燃やす 

谷口泰星(コピーライター)

赦すほかないほどの星、星、星、

挿元おみそ(SNSクリエーター)

 

したたかな方だと思うどちらかと言えば加害者側だとも思う

変な歌集を出したいですね! 

2025年12月7日日曜日

藤井厚二「聴竹居」&上野章子(高浜虚子の六女)

不公平満載の給付金冬の朝

大銀杏満月銀杏乳銀杏

おこり炭朽ちゆくものの儚さよ

かの国のせこき精神落葉焚(おちばたき)

寒昴(かんすばる)響き始めたジャポニズム

 

■新美の巨人たち 藤井厚二「聴竹居」

97年 竣工:昭和3(1928)年 建坪約50坪 平屋建 最先端住宅

聴竹居(ちょうちくきょ) 重要文化財 理想の暮らし

藤井厚二 

求めたのは豊かな暮らし 穏やかな暮らし ちょうどいい暮らし

 

其の国の建築を代表するものは住宅建築である

 

松隈晃 聴竹居倶楽部 代表理事

 

藤井厚二は日本の空間 和の中にモダンを

見出した建築家と言えると思います

当時はやっていたモダニズムの材料っていうのは

とうぜん人工の素材ですけれども

それを日本の素材 例えば竹なんかを

用いることによって調和をはかりました

 

藤井は新しいものをどんどん取り入れて

家事労働を軽減し衛生的で快適な日本最先端住宅を

つくったと言えると思います

 

SDGsな家だった

 

理想とした日本の住宅を追求するために…。

大正8(1919)年 私費で欧米諸国を視察

 

当時の建築家と言えば 近代的で西洋的な

公共建築が求められた時代だったんですけれども

藤井は住宅を本気で手掛けた

最初の日本人建築家と言えると思います。

 

9カ月の欧米視察 

 

吾々の建築は他を模倣したものでなくて

我が国の気候・風土・習慣にピッタリと

適合したものでなければならない

 

藤井厚二 40歳 第五住宅「聴竹居」昭和3(1928)年竣工

空気と光をデザインする

クールチューブ(導気口) 桂川 宇治川 木津川

 

夏場にそれを確かめてみると 土管の中で冷やされた空気が

34度下がって入ってくると言うことは私が確かめました

クーラーのない時代に自然の力を如何に使うかという

中で思いついてアイディアだと思います

 

すりガラスはそもそも光を和らげる効果があるんですけれども

藤井が考えていたのはまた別な事で 実は軒を隠すために

「すりガラス」を設けています 閉めるとちょうど座った位置で

隠れる所まで「すりガラス」にしていると

 

一幅の絵画を狙った

 

日本の住宅は壮大で感動的な様子は持たない

ただ見るもの全てに慕われるような魅力がある

 

 昭和6(1931)竣工 下閑室(茶室 しもかんしつ)

竹の音を聴く まさに聴竹居だった

 

藤井厚二 享年49 (18881938)

 

聴竹居 https://chochikukyo.com/

 

Facebook 仮名書研究会 

落ち葉舞う落ちるところの運不運   上野章子(高浜虚子の六女)