2024年11月29日金曜日

武蔵野(国木田独歩)&撮影の現場で一句

冬銀河闇に身を置き安堵せり
雪は死を闇は命を育まん
寒き夜や光と闇と風の音
皮膚で感じる不安と歓喜夜長
瞬間を感じた気配冬日没(い)る

■10min.ボックス現代文 武蔵野(国木田独歩)
半ば黄ろく半ば緑な 林の中に歩いて居ると、
澄みわたった大空が 梢々の隙間からのぞかれて
日の光は風に動く 葉末〱に砕け、その美しさ言ふつくされず。
日光とか碓氷とか、天下の名所は兎も角、
武蔵野の様な広い平原の林が隈なく染まって、
日の西に傾くと共に 一面の火花を放つ
というも特異の美観では あるまいか。

「武蔵野」1898年(明治31)に発表
国木田独歩(1871―1908)
新しい見方を新しい文体で表現しました
新しい自然美の発見

楢(なら)の類だから黄葉する。黄葉するから落葉する。
時雨が私語(ささや)く。凩が叫ぶ。一陣の風小高い丘を襲へば、
幾千万の木の葉 高く大空に舞ふて 小鳥の群れかの如く
遠く飛び去る。木の葉落ち盡(つく)せば、幾千里の方域に亘(わた)る。
林が一時に裸になって、蒼ずんだ冬の空が
高く此上に垂れ、武蔵野一面が一種の沈黙に入る。
空気が一段澄みわたる。

此茶屋の婆さんが 自分に向て、「今時分、何にしに来たゞア」
と問うた事があった。自分は友と顔見合わせて笑て、
「散歩に来たのよ、たゞ遊びに来たのだ」と答えると
婆さんも笑って、それも馬鹿にしたような笑ひかたで、
「桜は春咲くこと知ねえだね」と言った。

小金井は桜の名所、それで夏の盛に其堤をのこ〱歩くも余所目には
愚かに見へるだろう、しかし其れは未だ 
今の武蔵野の夏の日の光を 知らぬ人の話である。

をり〱落葉の音が 聞こえる計り、四辺(あたり)はしんとして如何にも淋しい。
落葉を踏む 自分の足音ばかり高く、時に一羽の山鳩 あわたゞしく飛び去る
羽音に驚かされる計り。
日が落ちる、野は風が強く吹く、林は鳴る、武蔵野は暮れむとする、
寒さが身に沁む、其時は路をいそぎ玉へ、顧みて思はず新月が
枯林の梢の横に寒い光を放てゐるのを見る。

海外文学の影響
ツルゲーネフ 著 二葉四迷 訳 「あいびき」
この中には今まで描かれたことのない自然美が描かれていた

樺(かば)の木立ちも、降り積ッた儘で また日の眼に逢はぬ雪のやうに、
白くおぼろに霞むーと小雨が 忍びやかに、怪しげに、
私語するように バラバラと降ッて通ッた。

自分がかゝる落葉林の 趣を解するに至ったのは奇妙な叙景の筆の力が多い。
これは露西亜の景で而(しか)も林は樺の木で、武蔵野の林は楢の木、
植物帯からいふと 甚だ異て居るが落葉林の趣は同じことである。

武蔵野に散歩する人は、道に迷ふことを苦にしてはならない。
(中略)
武蔵野の美はたゞ其 縦横に通ずる数千条の路を当もなく歩くこと
に由って始めて獲られる。春、夏、秋、冬、朝、昼、夕、夜、
月にも、雪にも、風にも、霧にも、霜にも、雨にも、時雨にも、
ただ此路をぶら〲歩て思ひつき次第に右し左すれば随所に
吾等を満足さするものがある。

■プレバト纏め 2024年11月28日
撮影の休憩で一句 

永世名人 千原ジュニアのお手本 俳句史に残る句集作り
冬の暮子役がくれるガム硬し
(子役を入れるだけで撮影現場であることがわかる 
硬しという描写が季語を補強している 永世名人らしい一句)

昇格試験 的場浩司
冴ゆる夜や野の石拾う老殺陣師
(冬の季語:冴ゆ 寒さが一層極まった様子 かなりの情報量
 17音に入れ込む 説明はできないできない説明を
 老殺陣師という下五を置くことで読者に全部想像させている
 演者が怪我をしないよう思いを持ってやっている)

1位 野村麻純
缶コーヒー壷装束(つぼしょうぞく)の日向ぼこ
(冬の季語:日向ぼこ 壷装束:平安時代の公家や武家夫人の外出姿
 缶コーヒーと壷装束の距離がめちゃくちゃ良い 季語に全てを託している)

2位 松下由樹
足袋重ね自製みそ汁暖を取る
添削(冬の季語:足袋 防寒用の履物 素材がリアル 不要な言葉が1つ
   暖を取る状況にある 「撮影の現場」とわかる言葉を入れると良い
   上五を字余りにしたので中七下五でリズムを取り直す 俳句の定石の1つ)
ジャーにみそ汁足袋重ね履くロケ現場

3位 西村真二
敵役と輪になりすする粕汁や
添削(冬の季語:粕汁 「すする」無くていい 理由をほのめかす 心遣いの粕汁)
敵役と輪になり晴れ待ちの粕汁

4位 純名里紗
チャルメラの湯気立つ夜空降る笑顔
添削(冬の季語:湯気 ストーブに乗っているやかんから立っているのが湯気。
   ラーメンの湯気ではない。)
ラーメン振舞い極寒のロケ地

5位 石井正則
江戸を出て髷(まげ)で珈琲時雨傘
添削(冬の季語:時雨傘 俳句は文字が全て 「で」は散文的な助詞)
のまま珈琲飲みに出て時雨

次回のお題は「銭湯」

2024年11月28日木曜日

スベトラーナ・アレクシエービッチ&モネ&「饅頭」&「奇妙」&松本隆氏の言葉

ストーブと扇風機置く十一月
寒北斗俊敏力の衰えん
冬ざるる個々の価値観垣間見ん
北吹くやおかきに負けて歯科医院
俳句にも好き嫌いあり冴ゆる夜

■こころの時代
2015年ノーベル文学賞受賞作家 
スベトラーナ・アレクシエービッチ女史の言葉
私が耳を澄ますのは 心の歴史 暮らしの中にある魂です
「大きな物語」が見下し 素通りする声です
私はこの演壇に 一人で立っているのではありません
私の周りには声 たくさんの声があるのです

■新美の巨人たち【モネ「睡蓮の庭」】
私は水と反映の風景に取りつかれてしまいました
老いた身には荷が重すぎますが
どうにか感じたまま描きたいと願っています
~1908年 モネの手紙より~

その日46人の男女が訪れたが そのうち44人までもが
人気のない場所を求めるカップルだった
ジョルジュ・クレマンソー元首相(モネの部屋を訪れた時)

フランスの天才の最高傑作のひとつ
これは印象派のシスティーナ礼拝堂だ
アンドレ・マッソン

■漢字ふむふむ 饅頭(まんじゅう)にはなぜ頭があるの?
饅頭はもともと中国の食べ物
日本に伝わった時は肉が中に入っていた
日本に伝わってから中に入れるものが小豆に変わった
「饅頭」の文字に「頭」という漢字が使われているのは
三国志・諸葛亮。残酷な風習をなげき、うまれた知恵がこの漢字を生んだという。

■漢字ふむふむ 信長が息子に“奇妙丸”と名付けたわけ
奇妙は中国では並外れて優れているという意味
聖徳大使が活躍した飛鳥時代お経の中の言葉として日本へ来た
「容顔甚奇妙」とは「仏様のお姿・お顔は大変すばらしい」という意味
日本に入ってきたときの奇妙の意味はすばらしいだった
別のニュアンスが含まれてきた
鎌倉時代 仏教が庶民に広まった 仏教は”新たな役割“を持つこととなった
”人知を超えた力“を強く信じることとなった
奇妙に1並外れて素晴らしい 2不思議なこと 
織田信長は息子に「奇妙丸」と名付けた
すばらしい息子との願いを込めて付けたのでは
なのに3不気味なニュアンスまで加わった
珍寳珍品奇妙奇てれつ(像・ラクダ)⇨不気味で怖い
江戸川乱歩が作った「奇妙な味」が大きな契機となった
「奇妙な味」とは不思議な後味を残す小説のこと
言葉の意義決定には著名な作家の役割が想像以上に大きい

■夏井いつきのおウチde俳句
一分季語ウンチク「星の入東風(いりごち)」

7音というちょっと長めで 使いにくい季語かもしれませんが
非常に綺麗な季語ですね
東から吹く風「東風」という言葉が 春の季語としても
存在するんですが この「星の入東風」は 
初冬の季語になります
元々漁師さんたちの使う舟言葉でありまして
江戸中期の方言辞書「分類称呼」に この記述があるそうです
畿内および中国地方の船人の言葉として 陰暦10月の風を
「星の入東風」というとあります まだ冬の冷たさと
この星という文字 そして夜空に輝いている星の存在 
そんなものがイメージの中で重なってくる 
ただ東から吹いてくる風というだけではなくて
俳人の連想力を刺激してくれる
そんな季語になっていますね

■鶴瓶ちゃんとサワコちゃん~昭和の大先輩とおかしな 2人
【松本隆登場!50年以上にもなる作詞家人生について語る】

昭和の大先輩 松本隆の言葉
「風をあつめて   松本隆」

ミュージシャンであり天才作詞家。日本語ロックの先駆けとなった
伝説的バンド「はっぴぃえんど」のメンバーとして活躍。
作詞家として2,000以上の作品数。前身バンド「エイプリルフール」結成から
「はっぴーえんど」解散後の作詞活動が本格化した頃のお話。
代表曲「風をあつめて」の知られざるエピソードなど、50年以上にもなる
作詞家人生を語ってくださいました。



2024年11月27日水曜日

あの本、読みました?本郷和人&池井戸潤&道尾秀介

冬茜家事のできない女(ひと)でした
冬ぬくしコンマ一秒助けられ
冬の草我が人生を回顧せり
満たしてもまた満たしても冬日没る(いる)
冬の月茶道華道を極めても

■あの本、読みました?
東野圭吾&池井戸潤&村上春樹…どれから読む?読む順特集!
本郷和人 三宅香帆 道尾秀介 鈴木保奈美 角谷暁子 林祐輔プロデューサー

・あの人気作家の本 どれから読む?
東野圭吾(秋月透馬)
容疑者Xの献身⇨クスノキの番人⇨天空の蜂

池井戸潤(内藤淳)
下町ロケット⇨俺たちの箱根駅伝⇨オレたちバブル入行組

角田光代(東條律子)
八日目の蝉⇨源氏物語⇨方舟(はこぶね)を燃やす

青山美智子(光英麻季)
お探しの物は図書室まで⇨リカバリー・カバヒコ⇨鎌倉うずまき案内所

村上春樹(林祐輔P)
海辺のカフカ⇨ノルウェーの森⇨IQ84

村上龍(林祐輔P)
半島を出よ⇨希望の国のエクソダス⇨コインロッカー・ベイビーズ

・「源氏物語」現代語訳の前にどれを読む?
この2年間で約200冊が発刊
本郷和人 三宅香帆
「源氏物語」紫式部著
平安時代中期 紫式部によって書かれた日本最古とも言われる長編小説
主人公・光源氏の生涯と恋模様 
息子・薫の成長を綴った70年に及ぶ全54帖(巻)からなる3部作の物語
795首の和歌が詠まれており多くの歌人に影響を与えた

本郷和人氏お薦め本
「紫式部と男たち」木村朗子著
源氏物語はセレブの話 日本の人口は1100万人 そのうち貴族は500人

BSテレ東社長 加増良弘お薦め本
解説本は『平安人の心で「源氏物語」を読む』山本淳子著/朝日新聞出版
『いま読む「源氏物語」』角田光代・山本淳子/河出出新書

・三宅香帆女史のお薦め本
「愛する源氏物語」俵万智著/文春文庫
和歌を俵万智が名訳 「愛する源氏物語」

袖ぬるるこひぢと かつは知りながら 下り立つ田子のみづからぞうき
六条御息所
(俵万智訳)
泥沼の恋と知りつつ自分から踏み込んでゆくことの悲しさ
(返歌)
浅みにや人は下り立つわが方は 身もそぼつまで深きこひぢを
光源氏
「愛する源氏物語」の一文 俵万智著/文春文庫
(俵万智訳)
踏み込めるほどの浅さよわたくしは全身泥に使っています

和歌の中には古い和歌を使って遊んでいる

・「源氏物語」って現代語訳 何からオススメですか?
個人的には現代語訳の前に「入門書」を読んでからの方が
絶対楽しめる

現代語訳の前に入門書を読むべき!
「30日de源氏物語」三宅香帆著/亜紀書房
1日10分から始める「源氏物語」入門書
巧みな伏線の読み解き方から実際あったゴシップネタまで
あらすじはもちろん物語りを深く味わうコツが満載

オススメの読み方 推しキャラを見つける
「六条御息所 源氏がたり」林真理子著
六条御息所ひとり語りを林真理子がアレンジし再構築

角田光代が現代的で歯切れがよく生き生きとした会話文に訳した全8巻
「源氏物語」角田光代訳/河出文庫

「新源氏物語」田辺聖子著/新潮文庫
著者の言葉
「原文の中で日本語としてきれいな言葉好きな言葉、わかりやすい言葉は
そのまま残しましたけれど出来るかぎり新しい現代の言葉を使いました。」

「源氏物語」瀬戸内寂聴訳/講談社文庫
天台宗の尼僧で小説家の瀬戸内寂聴が気品あふれる現代語に訳した
たおやかに書かれていて、女性として読んでさらに深く入り込めた。(角谷暁子)

・大垣書店麻布台ヒルズ店月間総合ランキング
「わたしは、海」の一文 カツセマサヒコ著/光文社 5位
あまり投稿してなくてすみません。本当にSNSが苦手です。
みんな、何をそんなに書くことあるの❓
三年もの間、何をしたかというと、基本的にずっと、
闘病生活を送っていました。癌です。
(中略)
結構しんどくて、ここまでかなり頑張ったと思うので、
あとは自宅で緩和ケアを受けながらゆっくり過ごすことにしました。
(中略)
不意に、潮田の言葉を思い出した。
(中略)
―海も涙も、しょっぱいじゃん。だからさ、実は海は、
たくさんの生き物や、人間や、もしかするとこの星自体が流した涙が、
流れ着いて集まった場所なのかもしれない。
この星は涙でできていて、海は乾くことはない。
だからみんな、海に泣きに行くのかもしれないな。

・「N」道尾秀介著/集英社
コピーは「読む順番で世界が変わる」その読み方は720通り
「一冊の本」の概念を変える物語
全6章 読者が読む順番を決めていい
本書は六つの章で構成されていますが、読む順番は自由です。
どの章から読み始めるのか。次にどの章を読み進めるのか。
最後はどの章で終わらせるのか。このページをめくると、
それぞれの章の冒頭部分だけが書かれています。
読みたいと思う章を選び、そのページに移動してください。
読んだあとは、また冒頭部分の一覧から、次の章を選んでいただきま。
慎重に選んでいただいても、ランダムに選んでいただいても構いません。

① 名のない毒液と花
② 落ちない魔球と鳥
③ 笑わない少女の死
④ 飛べない雄蜂の噓
⑤ 消えないガラスの星
⑥ 眠らない刑事と犬

順番が変わることである生き物が全く違う姿に見える
この仕掛けを考えたキッカケ 
小説を盛り上げ今一度読者を取り戻したかった
体験型小説
どの順番で書いた❓3から書き始めた
今後も体験型小説を書く❓暫く続けたい
体験型小説「I」を執筆中
読み方次第で亡くなる人の数が変わる

2024年11月26日火曜日

兼題「眼」&テーマ「ごめんね/すみません」&投句募集!

紫式部を詠む
吾と会えた跳ねのけられた紫の時
夫の死苛めに耐えた紫記
娘(こ)の成長を旨とした実紫
創造と嘘との違い玉紫
嘘ついて地獄に落ちた紫式部

■NHK俳句 兼題「眼(め)」
年間のテーマ「語ろう!俳句」
選者 高野ムツオ ゲスト俳人 生駒大祐 高田正子
ゲスト 小坂大魔王 レギュラー 中西アルノ

眼は顔にあるパーツの中で一番持っている本人の感情を引き出すところ
眼が輝く 眼が暗い 眼が一番多様で深いものを表現する題材

一 流星を数ふ眼の青むまで   高田正子
(「眼の青むまで」とは時間経過を表現している 時間と色と季節全てを内包している)
二 秋彼岸目をぎゅっとつむって「もういいかい」   中西アルノ
(彼岸は昼と夜の長さが同じになる 陽が真東から上り真西に沈む 
一番あの世と近くなる時 なのでお墓参りや供養をする 作者に呼び掛けてくれた瞬間
「もういいかい」の後に あの世から「まあだだよ」と
いう声を聞いた作者という物語が見えると小坂大魔王氏)
三 ぬと頭ぎろと眼玉やセーターより   高野ムツオ
(セーターより布団・どてらのほうが良かったかな❓とは高野ムツオ氏)
四 夜長しやスマホゴロゴロ眼ショボショボ   小坂大魔王
(語順を変えると良かった)
五 天体いま眼を渡りゆく冬の街   生駒大祐
(天体とそれを見ている人を詠った句だった)

眼は見るものなのに 思える所に眼のすごさを感じた 小坂大魔王氏

・特選三席発表 兼題「眼」
一席 まず眼から近づいて来るいぼむしり   樫の木
いぼむしり:カマキリの別名
二席 ガザの子のカメラ射る眼よ秋探し   大内菅子(すがこ)
三席 ドナーより賜りし眼や初明り(はつあかり)   梅田康恵

特選
龍淵に潜む電車に眼の数多   夏風かをる
冬夕焼(ふゆゆやけ)歳を重ねて変わらぬ眼   石橋正比古
無言館出で秋天が眼に痛い   邑松美智子
眼に映る冬銀河とてひと握り   野田茂樹
みどり児とまだ眼は合はぬ冬銀河   千葉水路
スカジャンの龍の目ん玉大枯野   丹下京子

参照:https://www.nhk.jp/p/ts/6Q6J1ZGX37/blog/bl/pLvva3ZRZL/bp/pzN12gYg0q/

■NHK短歌 テーマ「ごめんね/すみません」
年間テーマ「あなたへの手紙 かなたへの手紙」
選者 枡野浩一 ゲスト BASE 司会 尾崎世界観

「じゃあまたって言いかけてから切れたからまたかけちゃったゴメンじゃあまた」
枡野浩一

・31音の手紙
入選九首 テーマ「ごめんね/すみません」
「すみません」たとえあなたが許しても私が私を許せないので
峯瀬品子(みねせかずこ)
払いのけた夜をあなたは忘れてもわたしはずっと悔やんでおくね
へそごま
三席 私 生きていてごめんなさいと言いながらおやつを食べてお昼寝もする
五月雨薊(あざみ)
気づかないふりをしておくごめんねとやっぱり思えなくてごめんね
星川郁乃
一席 ごめんねの代わりに夫(つま)がくれた薔薇これっぽっちじゃ足りないってば
スワロフ好き代
二席 荒された花野へあわてて駆けてきてごめんと言うからゆるさなければ
中村杏(あん)
私 たぶんもう渡せないけど十九から冷凍保存してるごめんね
和田直樹
ごめんなさい今朝もあなたを覚えてた私も早く忘れたいのに
れいこ
部屋の隅に誇りが積もる毎日の汚れみたいな君のごめんね
渡邉理紗

・改悪添削
ごめんねの代わりに夫(つま)がくれた薔薇これっぽっちじゃ足りないってば

ごめんねの代わりに夫(つま)がくれた薔薇これっぽっちじゃ足りないわたし
短歌は意味が面白いだけじゃダメ
口に出した時に気持ちがいいとか覚えてしまうとか
音・響きがとても大事

歌の歌詞の場合はその人の本当のことだなと感じるような部分があるとグッとくる

・Boseさんの短歌「ごめんね/すみません」
その頃の僕らと言ったらこの調子言うとりますけどまだまだ若手
Bose
ご自身の歌詞の本歌取り

「彼方からの手紙」(1993年)スチャダラパー
地平線の意味 ありとあらゆる単位 空気の密度 火そのもの 
しあわせの構造 音 うわの天 石のドラマ 正気の沙汰 
記憶の彼方 諸悪の根源 点と線 原点 じゃんけん 人間
それらすべてがついさっきつながった ぼくはすべてを把握した
ここにこなけりゃぼくは一生 わからずじまいで過ごしていたよ
あんがい桃源郷なんてのは ここのことかなってちょっと思った
君もはやく来たらと思う それだけ書いて 筆をおく

最初に手紙というのが1つのテーマで 手紙の書き出しで
「お元気ですか いかがお過ごしでしょうか」みたいな感じで
始まるラップはないから おもしろそうだなと思って…。
意味が何個も重なってくるようにできていたんだなと思って
一緒に年を取れる曲とそうでない曲がある

・言葉のバトン
母さんがここにいるからここは故郷で
気仙沼高校・文芸部 昆野永遠(部長) 

真っ白な帆が風に広がる
杜崎ひらく 歌人
ひたすらに海はまだかというように歩き続けるこの日常を
(けっこう無理して働いていたんですよ それで体を壊したり
そこにコロナが重なって 歌集「自転車修理屋」杜崎ひらく を作った)
自転車を直す仕事に就きました人の翼を直せるように
自分が忘れたくないことを短歌にして残している気がします

■夏井いつき俳句チャンネル
【投句募集!】かがわの大名庭園俳句コンテスト

「かがわの大名庭園俳句コンテスト」詳細はこちら♪↓

【募集期間】 令和6年7月1日(月)~令和7年 1 月5日(日) ※郵送の場合は当日必着
【内容】 各庭園をテーマにした俳句 ○栗林公園部門 ○中津万象園部門
【応募対象】 ○小学生以上でご来園いただいた方
【応募上の注意】 ○応募作品は自作・未発表のものに限ります。
○応募は1人1庭園につき3句までとします。
【応募方法】 ○両庭園の受付で応募用紙をお配りします。
お帰りの際に、受付に設置した投句箱に投函してください。
○来園時に句が詠めなかった方は、応募用紙に必要事項を記入していただき、
下記の 応募先まで、郵送、FAX、E-mail のいずれかの方法で応募してください。
[応募先]かがわの大名庭園俳句コンテスト事務局
〒763-0054 丸亀市中津町 25-1 中津万象園内
FAX:0877-23-6379
E-mail:haikucontest01@gmail.com
【問合せ先】 ○上記事務局 TEL:0877-85-8860(9:30~17:00)

【結果発表】 ○令和 7 年 1 月(予定) ※入賞・入選作品は作者本人にご連絡します。

2024年11月25日月曜日

10min.ボックス 現代文 短歌&ギュッと!四国 俳句道場「案山子」

冬景色米の選挙を騒ぐ過疎
閑静な過疎も賑わう冬の米
冬の朝いのしし闊歩小松島
チョコレート食べる時期あり冬銀河
独り身に寄り添う毛布夜明け前

■10min.ボックス 現代文 短歌
三十一音で表現する詩「短歌」
五七五七七。
わずか三十一音の短い言葉で表現する短歌は、日本の伝統的な詩の形です。
四季折々の美しさや、恋心、そして喜びや悲しみなどがつづられてきました。
かつて、日本の伝統的な歌は、「漢詩」に対し、「和歌」と呼ばれていました。
わが国で初めて作られた勅撰(ちょくせん)和歌集である『古今和歌集』。
ここに収められている歌のほとんどは短歌でした。
和歌は大切な教養の一つ
当時の歌の作り手のほとんどは貴族たちです。
彼らにとって、和歌は日々の暮らしや行事、恋愛などに欠かせない大切な教養の一つでした。
「月見れば ちぢに物こそかなしけれ わが身ひとつの秋にはあらねど/大江千里」
―秋の月を見ていると、心は複雑に乱れ、ものがなしさに包まれます。
秋は私だけの季節ではないのに。
さまざまな言葉の技巧
貴族のたしなみとしての和歌ではさまざまな技巧を凝らし、
間接的に想いを伝えることが好まれました。
「つれづれの ながめにまさる涙川 袖のみぬれて逢ふよしもなし/藤原敏行」
―あなたに逢えない寂しさで私の涙川も、長雨であふれる川のようになりました。
その涙で袖がぬれるばかりですが、お逢いする手立てもありません。
一つの言葉にいくつもの意味を重ねることで、募る気持ちを表現しています。
新しい短歌の幕明け
社会の仕組みや人々の考え方が一変した明治時代、短歌の世界にも大きな変化が起こります。
明治30年ごろ、古い慣習にとらわれず、
自分自身の心情や感動をありのままに表現しようとする歌人が登場したのです。
そうした変化を象徴する歌集が明治34年に発表されました。
『みだれ髪』です。若さや美しさ、そして性を大胆に取り上げ、注目を集めました。
「若さ」を誇らしく詠む
若い女性の美しさを誇らしく詠んだ歌です。
「その子二十 櫛にながるる黒髪の おごりの春のうつくしきかな」
―その子は今、娘盛りの二十歳。櫛通りのよい豊かな黒髪は、
ほこらしいほど青春の美しさにあふれている。
「春みじかし 何に不滅の命ぞと ちからある乳(ち)を手にさぐらせぬ」。
あっという間に過ぎていく青春を情熱的に生きる若い女性の姿が詠まれています。
古い価値観にとらわれない与謝野晶子
『みだれ髪』の作者は、与謝野晶子です。
彼女が目指したのは女性の自立。
「女性は男性に従い、つつましくあるべき」という古い価値観と戦い続けました。
『みだれ髪』に収められた大胆かつ率直な短歌の数々は大きな反響を呼びました。
のちに夫となる男性への恋心を詠んだ歌です。
「やは肌の あつき血汐にふれも見で さびしからずや道を説く君」
―恋する私の若い肌にもふれずに、ただ理想ばかりを言うあなた、それでさびしくはないのですか。
新しい短歌、新しい歌人の登場
明治から大正、そして昭和にかけて、新しい短歌や歌人が次々と登場します。
作者自身の貧しい暮らしぶりを詠んだ歌です。
「はたらけど はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり ぢつと手を見る/石川啄木」。
日常生活の些細な出来事をスケッチするように詠んだ歌です。
「ただひとつ 惜しみて置きし白桃(しろもも)の ゆたけきを吾(われ)は食ひをはりけり/斉藤茂吉」。
一つだけ大事にとって置いた大好物の桃。
それを食べ終えたときの満足感が伝わってきます。
思いを伝えるさまざまな試行
「自分の思い」を伝える。そのための挑戦がいろいろな歌人によって行われてきました。
作者が長野県を訪ねたときに詠んだ歌です。
「あの光るのは千曲川ですと、指差した、山高帽の野菜くさい手。/北原白秋」。
案内してくれた人が地元の名所を誇らしげに指差して言った言葉を、そのまま歌に取り入れています。
五七五七七の形式にさえとらわれない自由な短歌も登場します。自由律短歌です。
「自然がずんずん体のなかを通過する――山、山、山/前田夕暮」。
作者が初めて飛行機に乗ったときの驚きを大胆に表現しています。
三十一音に込められた「伝えたい思い」
最近では、携帯電話やパソコンを使って短歌を作り、
ラジオやインターネット上で発表する若い人たちも増えています。
10代の若者がNHKのラジオ番組に寄せた短歌には、
身のまわりの出来事や日々感じたことが表現されています。
短歌は時代を表す鏡でもあるのです。
「本当の 自分の心見つけたい 仮面ばかりでうんざりだから」。
「しゅわしゅわと とけるブルーのシャーベット そういうふうにあなたは消えた」。
「あの上で きみが待ってることにして 上着を脱いでペダルを踏むよ」。
三十一音に込められた「伝えたい思い」。それが短歌です。

参照:https://www2.nhk.or.jp/school/watch/bangumi/?das_id=D0005150045_00000

■ギュッと!四国 家藤正人の俳句道場
第11回かがわ「里海」づくりシンポジウム
家藤正人の句会ライブ In かがわ国際会議場
小島まで泳ぐ洗礼夏休み   太田牧子

「案山子」にまつわるお話。
徳島県三好市は“かかしの里”として知られ、
300体以上が地区に点在し、多くの観光客が訪れている。とか…。
知らなかった…。

ギュッと!特選
海風や案山子の襤褸(ぼろ)に帆の記憶   沼野大統領
背景が伝わる。言葉の経済効率に優れていた。奥行きのある俳句。
襤褸は以前は帆に使われていたことが巧く表現されていた。
季語「案山子」のもつ、希望のある哀れともいうべき独特のニュアンスが活きている。

兼題「案山子(かかし)」秋の季語
霊山をおりて不思議な案山子村   みやこ
田を守る案山子の衣装ハイセンス   如月弥生
児童らの手作り案山子誇らしげ   小手川とし
佳作 公民館案山子作りの105人   小物打楽器
佳作 三十度傾(かし)ぐ案山子とツーショット   井上きうい
今ちょっとリアクション無理案山子かな   田頭京花
秀作 豪農に生まれ案山子の子沢山   西田月旦
佳作 親知らず抜かれ目のあう案山子かな   辻和音 取り合わせの句
AIでしゃべる案山子や休耕田   どいつ薔芭
秀作 大谷が投げ大谷が打つ案山子   佐藤志祐
案山子にも手を振りゆくは選挙カー   もちのくも
秀作 神降りてこぬやうに描く案山子かな   ギル

正人のもったいない
荒田護る朽ちし案山子や斜め十五度   空郷阿房人
17音の小さな器には入りきらない情報量。季語に任せる。
最後「に」でリズムを整える。
推敲
荒田護る案山子や斜め十五度に

2024年11月24日日曜日

没後10年 高倉健にあいたい

モノクローズの果てた鶏頭寒茜
奄美大島異彩を放つノスリかな
モノクローズの枇榔樹(びろうじゅ)の森冬の空
冬陽没る輝き放つアダンの実
一村にとっての宇宙山眠る

■没後10年 高倉健にあいたい
武田鉄矢
高倉健は俳優の絵姿とか映画とかではなく「風景としての日本」を持っている

第一章 迷う
1931年福岡県中間市で生まれる

俳優という仕事がとても嫌な仕事だと思って 
生きていくためにはこれしかないと
ほれた女の子と一緒になるには一緒に暮らすには
俳優しかないと思ってなったのですが

生まれて初めて顔にドーランを塗られた日 ポローッと涙が出ました
身を落としたという想いが 胸を衝いたんでしょうか

28歳で人気歌手の江利チエミさんと結婚

姓は横尾で名は忠則 冥土帰りの無宿者「♪横尾忠則賛歌」

「死んでもらいます」とかって 言葉がとても流行ったりして
どの作品やっても毎回ラストには「死んでもらいます」と言う
どうせ嘘のことをやっているんですけど 自分で何か非常に申し訳ないような
お客さんに対してですよ 心がやっていることに乗っかってないと
申し訳ないというような気が すごくしていたんですね 

第二章 腹をくくる
武田鉄矢
テーマは「おかえり」なんだよ 人間が生きていく中で
家に帰って「おかえり」と 聞こえることの幸せ

健さんはファーストポジションに立ったっきり じっと立ってるんですよ
4日も5日もですよ 今、暖かい所に行っちゃうと 
作った気持ちがきれそうだから 俺やっぱりここで待ってるわ
ファーストポジションにじっと待ってるんですよ

出会う方も初めての方ですし スタッフもみんな初めての人ですし
それは新鮮ですよね 

元妻 江利チエミ(享年45)の訃報が届く
その時の住職からの言葉
「往く道は精進にして 忍びて終わり 悔いなし」

この言葉を旨として 高倉健として生きる

佐藤浩市
普段から高倉さんなんですよ 自分がどう思われているのか
それを裏切ってはいけない 唯一無二のスターだった

第三章 人を想う
鳥肌の立つような感動をしたとき ああよかったなって自分で
1本1本やらせていただく作品が とても重くなっている
これから50本60本も絶対できるわけがない もしかすると
今回の作品が最後かもしれない 思いながらやっている
寿命ですか 待ち時間みたいなものを 感じる時期に
なってきているのかもしれないですね

小田貴月(おだたか)さんと出会う
高倉さんが亡くなるまで17年間に渡り私生活を支える

僕は健さんと一緒に仕事ができたことを
一生の誇りとして畑仕事をします
その手紙を嬉しそうに直筆の手紙を読んでいるのを見て
高倉健という人はいろんな人に勇気を与えながら仕事を続けてたんだ

この辺で一度仕事をしておかないと みんな定年でいなくなると聞いて
心を揺り動かされた
「高倉健インタヴューズ」(プレジデント社 刊)

およそ20年ぶりに東映作品に復帰

人生の喜びわ なにかを得る事でわない。
得てから大事にしていく事。「めぐり逢ひ」

一つの約束 
「人の心に残る映画を一緒に作りましょう」 チャン・イモウ
真心 思いやり 絆 言葉や国を超えて大切なものを映画で訴えたい
「千里走単騎(単騎、千里を走る。)」
73歳で単身中国へ 日本人出演者はただ一人
中国人は全て素人

お芝居じゃない何かを感じる 非常に新鮮ですね 
「お芝居ってなにだったのか」って思う 今頃になって遅いけど
心の栄養をいっぱいもらったね 人を感動させるのはお金ではない
力ではない ものではない 違うものがあるはずなんだよね
何十年経っても「人を想う」」ということが 
いかに美しいかってことでしょう 「人間が人間を想う」」
これ以上に美しいものはないよね 

人を想い 人の想いに応える ために感性を磨き続けました

2011年3月11日東日本大震災
俳優に何ができるというのだろう?
日経電子版 2021年3月16日

少年が絶対に負けないと全身で訴えてくるようでした
背中に蹴りを入れられた感じ 強烈でした
毎日新聞 2012年7月18日

小田貴月さん
この子の表情を見ていると 自分が何もできないことを
悩んでいることが恥ずかしいと「やればいいじゃないか」って
言われているようの思うと…。

映画「あなたへ」台本の裏表紙にこの少年の写真を貼り撮影に

佐藤浩市
撮影中であれ カメラが回っていないときであれ 
やっぱり高倉健さんなんですよ 生き方、佇まいが
「夕飯ご一緒してもいいですか?」お願いをしまして
「佐藤 飲み過ぎだろ」注意されたことを今でも覚えています

「自分は今日、鳩になりました」「あなたへ」ラストシーン
佐藤浩市さんは高倉健さんと共演した最後の俳優になりました

高倉さんとご一緒させていただいて「佐藤とはまたすぐ会いそうな気がするな」
と言われたので 次の作品も声をかけて下さるんだと思って すごくうれしくて
自分に対する期待みたいなものを持たせていただいた 

未完の一作「風に吹かれて」東宝が企画し脚本を完成 撮影を始めていた作品
台本に赤鉛筆で印をつけたセリフがあります
人の生き方を少年に伝えるシーン
「分とは自分が持っている器のことだ。大きければいい訳でも、
でも、小さければダメな訳でもない。」
「大事なのは、自分の器がどんなものかを知ることだ。」

体調不良で病院で検査をすると悪性リンパ腫と判明。
闘病中もトレーニングに励み映画出演への想いを持ち続けました。

小田貴月さん
ずっと映画の話をしていたので担当の先生に「次の映画はね…」と
ストーリー全部話しちゃうんですよ 「先生、今度はあそこに行ってね…」
すごく楽しみにしていた 「この映画に出たいので治して下さい」
このお伝えの仕方を繰り返していましたから

しかし高倉さんの願いは叶いませんでした。
2014年11月10日 高倉健(享年83)

「高倉健、最後の手記」(文藝春秋 刊)
亡くなる4日前に綴った最後の手記
最期の言葉は…。
「往く道は精進にして、忍びて終わり、悔いない」
酒井雄哉大阿闍梨が浮かべる満面の笑みとともに、僕に一つ…。
(ここまでしかTV画面には映っていませんでした…。無念…。)
一つの言葉を貫き通した高倉健さんの人生でした。

2024年11月23日土曜日

100分de名著❝百人一首❞(2)古典文学への入り口

冬茜心の突起棘のごと
顎上げて視線落として冬を舞う
豊かさを脅(おど)す貧しさ冬の景
冬の空チャリと人生下り坂
冬銀河写生の腕に磨きかけ

■100分de名著❝百人一首❞(2) 古典文学への入り口
七九 藤原顕輔(あきすけ)
秋風にたなびく雲の たえまより もれいづる月の 影のさやけさ

ピーター・マクミラン 伊集院静 阿部みちこ
今回は技法と書くためのルール
技法がわかればわかるほど和歌もより楽しめる
日本独自の美意識「はかなさ」

枕詞
三 柿本人麻呂
あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝ん
(山鳥の垂れ下がった尾のような、長い長い夜を、
 私は寂しくひとりで寝ることになるのだろうか。)
あしびきのは山・峰にかかる枕詞 この句では山鳥にかかる

十七 在原業平
ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 から紅(くれなゐ)に 水くくるとは
(神代にも聞いたことがない。龍田川の水面に真っ赤な色に紅葉が散り敷き、
 その紅葉がつくり出す模様に、川面がくくり染めされたようだ。)
枕詞はちはやぶる。神に対応している。意味は荒々しい様。その意味は
人間の世よりもスケールの大きいい 神々の世ですら聞いたことがない。

掛詞と縁語
掛詞(かけことば)は同音異義語を利用 ひとつの言葉に2つ以上の意味を持たせる
縁語(えんご)は歌の中にある言葉から連想される意味上のつながりのある言葉

八八 皇嘉門院別当(こうかもんいんのべつとう)
難波江(なにはえ)の 葦のかりねの 一(ひと)よゆゑ 身をつくしてや 恋ひわたるべき
(難波江の葦の刈り根の一節(ひとよ)のような、短い旅の仮寝の一夜の契りのために、
 我が身を捧げ尽くして、ずっと恋い慕い続けるのでしょうか。)
掛詞はかりね かりねとは「刈り根」「仮寝」
一夜(ひとよ)とは「一節」「一夜」の意味
身をつくしとは「澪標」「身を尽くし」
ここでの縁語は「かりね」「一よ」は葦の縁語
「みをつくし」「わたる」は難波江の縁語

ちはやぶるを使うことで 神々しい世界観に一気に引き込むことができる
連想させる以上に枕詞の力でどっぷり世界観に入ってしまう

他の枕詞
いにしえの⇨奈良
ねばたまの⇨黒・夜 檜扇(ひおうぎ)の黒い実
白妙の⇨真っ白な布・衣
久方の⇨光・空・月・雲・雨

言霊的な時代には相当意味があって「いにしえ」でタイムスリップ
言霊的な言葉の力 魂が持っている強さで
世界観の扉 違う次元の扉が開いてる
日本語という言語の素晴らしさ 

同音異義語があるからこそ初めてできる遊び
関連している言葉をつなげる連想ゲーム
枕詞はロケットが発射しているイメージ
世界観が変わった 新しい次元の扉が開く

縁語はバームクーヘン 何層にもなっている 連想の広がりが深まる
縁語は連想ゲーム
リズムとして面白いものを聞きながら自然と風景の中にいる

三分の一以上の歌に使われている技法がある「歌枕」
「名所」を指します 沖の石 鹽竈(しおがま)神社 松島

四二 清原元輔(きよはらのもとすけ)
契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは
(固く約束したことでしたね。お互いに幾たびも涙で濡れた袖を絞りながら、
 あの末の松山を波が越すことのないように、私たちの関係も、ずっと続くと。
 それなのにあなたは…。)
ここでの歌枕は「末の松山」あり得ないことのたとえ
逢坂(あふさか)もよく使われる歌枕 

一〇 蝉丸
これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂(あふさか)の関
(これがあの有名な、行く人も帰ってくる人もここで別れては、
知っている人も知らない人も ここで会うという、逢坂の関なんだだなあ。)
時代によって置き換えられるのも楽しい

もう一つの技法 見立て
二九 凡河内躬恒(おおしこうちのみつね)
心あてに 折らばや折らん 初霜の 置きまどはせる 白菊の花
(注意深く、折れるなら折ろうか。真っ白な初霜と見分けがつかない白菊の花を。)
白をどうやって美しく表現するか 正岡子規は異議を唱えたらしい
見分けがつかないほど美しい白の重なり

六九 能因法師
あらし吹く 三室(みむろ)の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり
(嵐が吹き散らす三室の山の紅葉の葉は、龍田川に流れてゆき、
 あたかも龍田川に浮かぶ錦のように美しことよ。)
視覚的に非常に美しいイメージを引き立てている
スピード感の違い場所の違い共通している紅

日本的な美意識「はかなさ」が反映された最も印象的な和歌と言えば桜を詠んだ歌です。
三三 紀友則(きのとものり)
ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらん
(日の光がのどかに差している 春の日に、桜の花は落ち着いた心もなく
 散ることよ。どうして静かな落ち着いた心もなく、あわただしく散るのだろうか。)
ひさかたのは光にかかる枕詞 悠久のや不偏のという文脈で使われる)
日本人は儚いものの中に美しさを感じる
西洋では「美は永遠である ウィリアム・シェイクスピア」
永遠であることに価値を見いだしています。

人が呼吸し、目が見える限り、この詩は生き続け、君に命を与え続ける
西洋では人間には死がやってくるが、神と芸術は永遠に生き続けると考えられている。

はかないからこそ愛でましょう 美しく思いましょうという概念
神は永遠 人間が死ぬ 芸術と美術は永遠に生きる 神に近い存在

日本では桜を擬人化している よびかけている
どうして散っていかなくてはいけないのか❓
擬人化していることは自然と一体化していること
日本独自の美学と美意識が感じ取れる

紀貫之の和歌は映画で言うとフェードインみたいなゆっくり見せている
日本の美は不完全さが好き 詫びの世界とか…。
西洋の美は完全さを求める 完璧さがあるからこそ永遠に生きる