秋の声明日は我が身ぞ独り言
見えてくる指折りてこそ秋の色
雨あがるツリフネソウへ秋茜
秋の空老いと抗いまた負けん
鈴なりの銀杏ずしり青き空
■あの本、読みました?
「国宝」「同志少女よ、敵を撃て」「汝、星のごとく」
文庫本ランキング
逢坂冬馬 松下龍ノ介 池谷真吾 鈴木保奈美 山本倖千恵 林祐輔P
「同志少女よ、敵を撃て」の一文 逢坂冬馬著/早川書房
セラフィマは走って行ってその銃を拾った。
男の兵士たちがやめろ、と叫ぶなか、ボルトを引いた。
そして女性兵士に向けようとした瞬間、彼女は足を振り上げ、
ブーツのつま先がセラフィマのみぞおちに入った。
「ぐ、う…」「それでは軍用犬にもならんな敗北者め!
ドイツに負け、私にも負けて死ね!」
銃を拾い高らかに笑った 女性兵士は、もう一度叫んだ。
「お前は戦うのか、死ぬのか!」「殺す!」這いつくばったまま、
セラフィマは答えた。生れて初めて口から出た言葉だった。
「ドイツ軍も、あんたも殺す!敵を皆殺しにして、敵を討つ!」
静寂が突如として訪れた。床を焦がす炎が壁に移り、
徐々に大きくなっていった。女性兵士は、笑みを消して答えた。
「そればれば、有用だ。今は殺さずにおこう。
ナチに交渉は通じない。これは通常の戦争ではない。
軍隊が瓦解すれば全ての人民は虐殺され奴隷化される。
故に、組織的焦土作戦を用いて撤退する。
局面を除いては、踏みとどまって防戦することが、
唯一ソ連人民が生き残る術なのだ。
逃亡する兵士は、もはや敵であり、ファシストの手先なのだ
松下龍之介 千葉工業大学大学院工学研究科修士課程を修了
現在は電機システム事業を扱う会社で高圧ポンプの設計等に携わる。
仙波佳代子 分子生物学の世界的権威 を記した一文⇩
「一次元の挿し木」の一文 松下龍之介/宝島社文庫
研究者となったあとも、佳代子は変わらず
自らの欲望に忠実に突き進んだ。
たくさんの人間とさまざまなプロジェクトに携わった。
時には倫理に反することもあった。
引き換えに、その分の成果は科学の進歩に還元した。
その結果、世間から多くの賞や賞賛を受けたが、
それらは彼女自身が自らの欲を満たしたあとの排泄物でしかなかった。
(中略)
多くの若い学生と出会った。中には優秀と思われる若者もいた。
しかし、彼らが研究者として名を馳せることはないとわかっていた。
彼らの目はとても澄んでいて、
人類への貢献を目指し、野心に燃えていた。
しかし、それではだめなのだ。遺伝子学者に必要なのは、
生命への歪んだ好奇心。そして、神を演じようとする傲慢さ。
科学者を動かす「知りたい」欲求が行動原理になっている人が多い
石見崎は自宅のリビングでテレビを点けた。
(中略)
〈新しい命を前に眠っているぞ〉
テレビに映る男はそう言って、
墓場から掘り起こしたばかりの棺桶を叩いた。
それから助手の男とともに、
人目を忍んでそそくさと棺桶を運び出す。
この映画は観た記憶がある。「フランケンシュタイン」だ。
遺伝子に携わる人間として、この映画は興味深い。
DNAの二重らせん構造を初めて発見したジェームズ・ワトソンも、
こう述べていた。「『フランケンシュタイン』ほど、生命の神秘を
解き明かすという、恐ろしくも胸躍る科学の姿を捉えて
人々の頭に焼き付けた作品は、これ以降出現していないのではないだろうか。
そしてまた、神のごとき力を行使することが社会の及ぼす影響に、
これほど深く向かい合った作品もないだろう」
最新作
「ブレイクショットの軌跡」の一文 逢坂冬馬著/早川書房
意と決したように、翔は突然正面に向き直り、後藤さん、と言った。
「俺が後藤さんみたいになるには、どうしたらいいでしょうか」
急な話だったので、友彦はあっけにとられた。
後藤さんみたい、とはなのことだろう。
「板金一級ってこと?それとも?課長になりたいの?」
「そうじゃなくって…それも、あるんすけど、
あの、後藤さんみたくかっこよく働いて、修理箇所みるだけで
タワーでどこ引っ張るか分かって、ボルトも溶接も完璧で、
そんで、しっかり働いて家族を幸せにしてる感じです。
後藤さんは、かっこいいっす」
(中略)
「翔。俺はそんなに大層な人間じゃないし、職人としても、
特別ってほどの技量を持ってるわけじゃないんだ。課長といっても
他の同い年の連中に比べれば稼ぎも良くない。でも、そんな俺にも、
なくしようがない取り柄はある。それは善良さだと思っている」
「善良…」翔は聞き返した。そう、と友彦はうなずく。
「世の中には、なにがなんかんだか分からないほど
難しい仕事をして一年に何億円も稼ぐ人が
大勢いるし、俺は一生かかってもそっちにはいけないよ。
でも善良さってのは、最大の資産じゃないかな」
ヤングケアラーと毒親について
時勢も国もバラバラ
「オッペンハイマー」
世界初の原子爆弾の開発を指揮したオッペンハイマーの伝記映画
3つの時系列が交錯しながら描かれている
池谷真吾(「国宝」担当編集者)
「国宝」映画にない登場人物の物語がある
映画とは違うエンディングが待っている
主人公の喜久雄を献身的に支える幼なじみの徳治との関係
喜久雄の隠し子である娘の綾乃の物語
本の方が映画より映像的
映像は5時間くらい撮ったが3時間に切り取った
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