2022年7月14日木曜日

江之浦測候所奇譚 杉本博司

色褪せる新たな記憶走馬灯
雲の峰白旗揚げんスリランカ
新興国崩壊間近夏の潮
夏のニューヨーク山羊の仕事は食べること
鮮やかに紫極む茄子(なすび)かな

杉本博司 江之浦測候所奇譚(きたん)
夢の世界に生きて毎晩夢を見る
夢が作品になる
古代の記憶
古代人と現代人が同じ風景を見ることができるか
五千年後に遺跡としていかに美しく残るか
古代人の精神が発想の源泉
古代の自分が目覚めていく
個性が消えて崇高な作品になる

杉本博司氏の言葉
悠久の昔、
古代人が意識を持ってまずした事は、
天空のうちのある
自身の場を確認する作業であった。
そしてそれがアートの起源でもあった。

私は石に取り憑かれている。
または私が石に
取り憑いているのだろうか。

私にとって、
本当に美しいと思えるものは、
時間に耐えてあるものである。
時間、
その容赦なく押し寄せてくる腐食の力、
すべてを土に返そうとする意志。
それに耐えて生き残った形と色。

私はこの杜に神霊を
招請しなければならないと思った。
神社を作らなければならないのだ。

2022年7月13日水曜日

悶悶スペシャル

油照(あぶらでり)止むに止まれずのめり込み
夏の雨無垢なる石の佇まい
そびえ立つ波打つ石よ夏の空
菊芋にしがみつく蝉力尽く
夏の虫日に日に若芽食べて肥ゆ

言葉にできない、そんな夜。
今夜のテーマは悶悶スペシャル

学生時代を振りかえったときの気持ち
「キャーッ」と叫んで
ひっくり返りたくなるような
恥ずかしいこと、というのは
どんな人にもある。
私など女学生時代の
想い出と言えば、
思いだすだけで
ひっくり返りたくなるような
事で満ちている。
佐藤愛子「キャッと叫んでひっくり返る話」

若いということは、とっても
恥ずかしいことである。
十年もたってから
その時のことを思い出すと
うひいーッと叫んで
死にたくなるようなことを、
平気でしてしまう。
原田宗典「生まれて初めてのデート」

主人公が
一方的に別れた女性の様子を
友人から聞かされた時の気持ち
友人を鳥にたとえて描いている

忘れかけると、
怪鳥(けちょう)が羽ばたいてやって来て、
記憶の傷口を
その嘴(くちばし)で破ります。
たちまち過去の恥と罪の記憶が、
ありありと眼前に展開せられ、
わあっと叫びたいほどの恐怖で
座っておられなくなるのです。
太宰治「人間失格」

今さらどれだけ悔やんでも、
時は巻き戻せない。
あんなにも彼女を傷つけた奴を、
二度と立てないくらい
殴りつけてやりたいのに、
それが自分だというのが
いっそ笑える。
息をするたび、
血の中を無数の針が流れる。
心臓が、ゆっくりと
する潰されてゆく。
村山由佳

もうなにをやってもあかんわ
もうなにをやってもな
もう実際問題あかんと思った時点で
もうあかんわ
もうなにをやってもあかんわ
もうなにをやってもな
もう一体全体なんなんだ
もういっそ一生寝たろかな
岡崎体育「なにをやってもあかんわ」

突然、身も心も萎えるような、
暗い、みじめな虚脱感におそわれ、
俯向けに寝返ると、
両手で敷き寝具を掴み、
呻(うめ)き声を抑えるために、
顔を寝具へ押し付けた。
山本周五郎「ながい坂」

快速の窓に映る不甲斐ない顔、
お決まりのシーン。
SF映画の主人公みたいに
よれたバンT、
イヤファンからギターソロ、
チューニングは狂ってる。
でもさ、そんな時ほど、
夜空ってやつは
異常に綺麗なんだ。
俺らは出来損ないの宇宙人、
ダメなら星に帰ればいい。
石崎ひゅーい

2022年7月12日火曜日

テーマ「肉料理」

夏の空甌穴(おうけつ)に見る昔日よ
喜雨到る向上心を刺激せん
雲辺寺揺れる紫陽花3万株
紫陽花や夏の陽射しと客迎え
陽のシャワー浴びてきらきら七変化

□NHK短歌 テーマ「肉料理」
選者 笹公彦 ゲスト 井戸田潤 
レギュラー出演 カン・ハンナ 司会 星野真里

■冒頭の短歌
憧れは999(スリーナイン)の食堂で銀河を見つつ食べるビフテキ
笹公彦

■入選九首 テーマ「肉料理」
この朝にわれを突きし雄(おん)鶏は夕餉(げ)の膳に客をもてなす
市川登美栄
手品師のようにナイフを操れるステーキショップのシェフの恍惚
片山一行
ステーキの焼き加減にはうるさくてじっと聴いている音の変化を
栗本悦子
肉汁の焦げ付く網を取り換えて祝勝会の第二ラウンド
三浦豊司
大男のわらじのようなステーキがドンと出てきたカナダの食堂
浦上紀子
とんかつ屋の看板くぐる食べられてゐるのに機嫌よく笑う豚
村田一広
胸を病む母のためにと飼い慣れし鶏殺めた十歳の夏
山森幸夫
正直に全部話せと父さんが机の上にカツ丼を置く
嶋村純
もう少し太れば売られる子牛を連れて草を食みおり
大竹幾久子

■選者の話「歌人のグルメ」
ハンバーグあらぬ店より子どもらが降り來て赤き地獄へゆけり
水原紫苑

■短歌ボナペティ
乾杯と後輩よりも声張った紙のコップは決して割れない
カン・ハンナ
ベーコンに巻かれメイン〈maindish〉と胸をはるレタスのような若手芸人
星野真里
酩酊前太マジックで名前書き紙コップで飲むスパーリング
井戸田潤

■短歌武者修行 元髙克樹 矢花黎
カン・ハンナのアドバイス
生き物に自分を投影する

2022年7月11日月曜日

兼題「夜店」

次々と記憶辿りて夏夕焼け
夏の雨山低ければ谷浅し
時超えて開く一輪大賀ハス
夏の三野新居探さんこうのとり
菊芋や今年も花は咲きもせず

□NHK俳句 兼題「夜店」
選者 井上弘美 ゲスト 桃沢健輔 司会 武井壮

■冒頭の俳句
カチューシャの桃色とほき日の夜店
井上弘美

■俳句ナビ 兼題「夜店」
闇に浮かび上がる色
夏の季語
夜店・かき氷・ニッキ水・甘酒・
夏帽子・サングラス・サンダル・うちわ・浴衣

透明の雨よけくすむ夜店かな   桃沢健輔
添削
透明な雨よけの中夜店の灯

■入選九句 兼題「夜店」
銃身の歪む夜店の射的かな   中島紀生
少年ら夜店の裏へ零れゆく   山海和紀
すくうたび少年になる夜店かな   中川浩
干見世(ほしみせ)に探る若き日ソノシート   徳照代
(干見世とは夜店の傍題)
夜店の灯硬貨を握る手の記憶   村井野草
ヨーヨーの渦の重心夜店の灯   岸来夢
裸灯(はだかび)へひよこ片寄る夜店かな   池田桐人
夜店立つ紅き鶏冠(とさか)の飴細工   吉村喜子
君がいた綿飴射的夜店の灯   湊正気

■俳句ナビ 添削コーナー
ナビゲーションポイント 対句

ヨーヨーを見る子狙う子夜店の灯
添削
ヨーヨーを釣る子触る子夜店の灯

影丸に月光仮面夜店かな
添削
影丸月光仮面夜店の灯

夜店灯や昭和はひばり裕次郎
添削
裕次郎ひばり昭和の夜店かな

りんご飴赤い宝石煌々と
添削
煌々と並ぶ夜店のりんご飴

2022年7月10日日曜日

山頭火の言葉と名言

甌穴(おうけつ)へ流るる時間夏の庭 
スナゴケへ呟きかけん朝涼し
雨だれに打たれた時間夏の夜
虹の帯山低ければ谷浅し
夏の灯や言葉捕まえ遊ぶ夜

種田山頭火の言葉
「無理をするな、素直であれ。
 すべてがこの語句に尽きる、
 この心構えさえ失わなければ、
 人は人として十分に生きてゆける。」

「捨てきれない荷物のおもさまへうしろ。」

「おこるな しゃべるな むさぼるな
 ゆっくりあるけ しっかりあるけ。」

「また見ることもない山が遠ざかる。」

「大正十五年四月、
 解くすべもない惑ひを背負うて、
 行乞流転の旅に出た。」

「ああ酒、酒、酒、酒ゆえに生きても来たが、
 こんなものになった。
 酒は悪魔か仏か、毒か薬か。」

「どうしようもない私が歩いている。」

「人生は奇跡ではない、軌跡である。」

■名言
山下清 曰く
「おにぎりが
 もらえるまで歩くから、
 もらえないってことはないんだな。」

2022年7月9日土曜日

Requiem 七夕で一句

夏の庭誘ふ飛び石ぴょんぴょんと
景石に見る色と形と夏の雲
(清澄庭園)弥太郎の愛の結晶夏の石
夏の庭滴るみどり磯わたり
苔茂る健気に生きて見守りて

プレバト纏め 2022年7月7日
七夕で一句
名人10段を目指すお試験

特待生昇格試験
森口瑤子
屑かごにある七夕竹の死骸 
添削(比喩のバランスの問題。大か❓小か❓技術的な問題。)
屑かごにある七夕かざり乾きをり

中田喜子
またござれ七夕さんの人の和よ
添削(「またござれ」は仙台の方言。
   「和」が読み手の楽しみを取ってしまっている。)
またござれ七夕さんのこの町へ
またござれ七夕さんのみちのくへ

千原ジュニア
病室の七夕竹に一礼す
(言葉の選択が素晴らしい。書かない勇気を持った一句。)

次回のお題は「アイス売り場」

2022年安倍晋三元首相が亡くなられました。
心から信頼していた政治家の死は言葉では言い表せません。
「いのたに」から出てこられた笑顔が忘れられません。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
今頃やしきたかじん氏、勝谷誠彦氏とお話しされているのでしょうか❓

2022年7月8日金曜日

山頭火の俳句と「祇園会」

門くぐる庭屋一如(ていおくいちにょ)夏風と
淡々と流るる水やいと涼し
円安の幅を広げて草茂る
荒々し伊豆磯石や夏の空
夏風や伊豆磯石のお出迎え

■一分季語ウンチク 祇園会

祇園祭というと聞き覚えのある方も
多いのではないでしょうか?
日本三大祭りの一つです。
平安時代初期の疫病退散のために
行ったものが起源とされています。
京都市八坂神社の祭りです。
この「祇園会」は7月1日から7月31日までが
会期となっていて非常に長期間に渡って
開催される祭りです。
歳時記に収録されている傍題を見ると
この「祇園会」の中で行われる様々な場面を
細かく切り取って傍題としても成立しているという
非常に愛されている季語だなぁ
ということが見えてきます。
「祇園囃子」「鉾の稚児」とかそれぞれの
表情を細かく描写している傍題も
味わい深いものです。

■種田山頭火の俳句
「けふもいちにち誰も来なかつたほうたる。」
「あるがまま雑草として芽をふく。」
「一杯やりたい夕焼けの空。」